《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》5-4 「それでも怖くて……」

午前六時四十分。俺は今JR鎌倉駅のホームで上り列車を待っている。

このまま行けば七時半には學校に著くだろう。今日は普段より一時間も早く家を出ていた。

別に用事があるわけではないし、時計を見間違えたわけでもない。

堂庭と言い爭ってから一夜明け、俺は居ても立っても居られなくなり家を飛び出したのだ。理由は良く分からないが。

『まもなく二番線に普通、千葉行きが參ります。危ないですから黃い線の側に……』

ホームにり込んだ列車に乗り、俺は大きな欠をこぼした。

にいる生徒はまばらで、教室には數人のクラスメイトが攜帯を弄ったり、談笑したりと各々の作業に取り掛かっていた。

もちろん堂庭はいなかった。あいつは今頃保育園のフェンスに張り付いて「マキたその太ももktkr!」とかんでいるのだろう。ああ気持ち悪い。

自席に著き、頭をぽりぽりと掻く。どうしよう、する事が無い。

「…………寢るか」

手提げバッグを枕にして顔を伏せる。

昨日、家に帰ってからよく考えてみた。

堂庭を無視し続けるなんて無理だ。面倒な奴から解放されて清々するとも思ったけど心が苦しいのも事実。そして堂庭も同じように思ってるはず。

平日も休日も顔を合わせる馴染みが突然別れるなんてできない。家族だってそうだろう。どんなに喧嘩してもいずれ和解するものだ……と俺は思っている。

しかし、どう仲直りに持ち込むかだよな。

謝っても効果は無いし土下座なんてしたら頭を踏まれて逆効果になってしまいそうだ。

きっかけが有ればいいのだが……。

を巡らすも、良い案が浮かぶどころか睡魔が俺を襲ってくる。

すると頭の上に何やら重みがのしかかった。

何事かと思い、手で確認してみるとごわごわしたや質から學校指定の手提げバッグだろうと推測できた。

「宮ヶ谷殿、起きるのじゃ」

聞き覚えのある聲。口調から察するに思い付くのはただ一人。

「修……善寺?」

「あぁ。お主はいつもこんなに早く學校に來るのか?」

顔を上げると目を丸くした修善寺さんがこちらを見ていた。ドスンとバッグが床に落ちた。

の大事な鞄を落とすでない」

「いや……なら乗せるなよ」

起きろと言われたから起きたのに理不盡である。

「ちょっとお主に相談したい事があってな。人がいない場所へ案しておくれ」

「お、おぅ……」

立ち上がり、教室から出る。

隣を歩く修善寺さん。やはり彼には違和があった。

東羽高の制服を著ているという見慣れない點もあるが、喋り方がいつもと違う気がしたのだ。

育館裏でいいか? あそこなら人はいないはずだし」

「あぁ構わない。……人目が無いからって、朝っぱらから私を襲うのは駄目じゃぞ」

「おい俺が年中丸出ししているかのような発言はするな」

クックックと可笑しそうに笑う修善寺さん。

は平常運転だな。し安堵した俺は階段を降り、下駄箱経由で育館裏まで歩いていった。

「でっかい蟲とか出ないか? 大丈夫なのじゃな?」

「……それは保証できんな」

敷地を囲むフェンスと育館に囲まれたこの空間は両手をばせるかどうかの幅しかなく、雑草がびと生い茂っていた。

足下に絡まる草を気にしながら歩く修善寺さん。なるほど、スカートに生腳だから直にが伝わるわけか。俺ももうし配慮をすべきだったかな。

「ここら辺でいいだろう。余り奧に行くとドブ川があって臭いし」

「うん、ここで良いのじゃ」

立ち止まり、俺はフェンスに背中を預ける。

「それで……お主に相談したい事があってな……」

「そっか……」

まあそうなるだろうな。修善寺さんに呼び出される理由なんて他に無いだろう。

人気の無い場所を指定したのも人混みが苦手な彼格と周りに聞かれたくない容なのだからだろう。

となると問題はその容だが……。

修善寺さんは咳払いを一つした後、話を切り出した。

「友達ってどうやったらできる……かな?」

友達……だと?

この人は何が言いたいんだよ?

「悪いが凡人の俺に聞いてもロクな答えは出ないと思うぞ」

「いやまあそうかも知れないが、お主しか頼れる人がいないのじゃよ?」

しくらい否定してくれ。

「それに友達だったら修善寺さんの方が圧倒的に多いだろ。俺に頼らずともその経験で」

「違う! だから聞いておるのじゃ!」

聲を荒げた修善寺さんに俺は思わず背筋がびた。

「わしの言っている友達とは、相手の顔を伺いながら関係が壊れないように自分を犠牲にするって意味じゃなくて、お主と瑛殿のような本音でぶつかり合える関係……って意味で……」

「本音、か」

修善寺さんの言葉は果たして正しいのだろうか。堂庭はきっと本心を曬け出しているのだろう。もののエロゲーを眺めながら涎を垂らす姿なんて俺以外には絶対に見せないだろうし。

でも俺はどうなんだ? 堂庭に言いたい事言えているのだろうか。ただ頷いてれているだけなのではないだろうか。

本音って……何なのだろうか。

「わしは今すごく怖いのじゃ。自分で決斷した事だけれど、それでも怖くて……」

「…………」

「一から始めるなんて生まれて初めてだったから……。お主達と違って、稚園からずっと同じ學園で育ってきたから、見知らぬ人なんて誰も居なかったのじゃ」

「つまり他人と仲良くする方法を教えてくれと?」

「端的に言えばそうじゃな。あと……」

修善寺さんはブレザーの裾を摘みながらどこかもどかしそうに

「肩書きで付き合わない、本當の友達が……しい」

消えりそうな聲だったが一番力強い聲だった。きっと彼は上っ面の関係だけで生きてきたのだろう。だから俺と堂庭のような馬鹿げた関係が憧れだったのかもしれない。自分には無いを持っている人に魅せられた、だから東羽高に転校した。

それが彼の本音、なのだろうか。

なら俺は……どうする? このけ止めたボールをどう返す?

フェンスにを預けるのをやめ、俺は修善寺さんと向き合った。正々堂々と、噓偽りの無い言葉で。

「できる限りは盡くすさ。友・達・の頼みならな」

返事も確認しないで俺は教室のある方角へそそくさと歩き出す。その後ろを修善寺さんがついてくる。

無言だけどそれでいい。話す必要なんて他にないのだから。

堂庭とも向き合わなくちゃいけないな。

澄んだ青空を見ながら、そんな當たり前を考えていた。

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