《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》【スピンオフ・修善寺の過去】小學生編「大好きな人の為に」

――小學三年生。

この頃の私はかなり瑛に依存していた。そして瑛も私に依存していたと思う。

他に友達がいなかった訳では無いが、一番仲の良い友達がダントツで瑛だったので共に過ごす時間が必然的に増えてしまったのだ。

更に鶴岡學園は初等部から原則として寮生活を送ることになっている。そのため瑛と顔を合わさない日は無に等しい。

そして放課後となった今も瑛と一緒。今日は彼の部屋で遊んでいる。

「じゃあ……花をプレゼントするのはどう?」

「うむ……。いくらなんでもベタ過ぎると思うのじゃが……」

豪華な部屋の隅に置かれた革張りのソファーに座りながら瑛の熱弁を聞く。

「でもお花って貰うと嬉しいじゃん? だから喜んでくれると思うけど……」

「貰って喜ぶのは子くらいじゃよ。男の好みは全然違うとわしは聞いておるが」

が必死に考えているのはある人に渡すモノ。彼は二つ隣の家に住んでいるハルという馴染みが好きらしく、彼にプレゼントを贈るべくい・つ・も・悩んでいるのだ。

因みに以前瑛が執拗に語尾に付けていた「ですわっ!」という言葉もハルという人が自分を好きになってもらうための策略だったそうだ。しかし余りにも不自然でおかしな言葉遣いだったので、私が指摘を続けた結果止めてくれた。自分の事を棚に上げるが、やはり自然が一番である。

「じゃあアクセサリーとかかな。ルビー辺りが無難で良いかもね」

「それなら花の方がマシじゃ。というより何でもいいから一度渡してみてはどうかえ?」

「ぐっ……。それができたら苦労しないわよ……」

正論を言われてブツブツと本音をらす瑛

どうやら彼はハルに中々自分の想いを伝えることができないらしい。児だった頃は一緒に遊ぶ機會も多かったそうだが、寮生活となった今ではほとんど顔を會わせなくなったため気まずい関係になってしまったのだとか。

「ハルという殿方はお主を嫌ってはいないのじゃろう? なら自信を持って告白したらどうじゃ?」

「それもそうなんだけど……。告白したら絶対にフラれるもん!」

「……何故じゃ?」

「だってほら……」

すると瑛は顔を俯かせながらボソボソと呟き始めた。

「あたしってチビだしもぺったんこだしスレンダーじゃないし……」

「いやいや、ならわしも無いぞ? まだ小三だし気にするのは早いと思うが」

「まだあるわよ。喋り方がお嬢様っぽくないって言われるし無駄に力あるし、ピアノとかバイオリンは全然弾けないし歌うのも下手だし……。あたしっての子っぽくないからハルと付き合うなんて絶対に無理だもん……」

後半は涙聲になってしまった瑛。間違いなく學園で五本の指にるであろう可さを持つ彼だが、自分に自信は持っていないようだ。

「それでお主はどうするのじゃ?」

「どうするって、何が?」

「今のお主じゃハルと付き合えないのじゃろう。ならどうする? まさかこのまま何もしない訳じゃないじゃろう?」

「あたしは……」

弱音を吐いても事は進展しない。私は知っているのだ。何も行しないで月日が流れた時の恐怖を。大切な人が未來永劫傍そばにいるとは限らないから。

「告白してフラれるなら、フラれないように自分を変えるのじゃ。自分を好きになってもらうように自分を磨き続けるのじゃ!」

「うん、そうだよね……。あたしが頑張らないで誰が頑張るのって話だもんね!」

困っていたら助ける。落ち込んでいたら勵ます。道を踏み外してしまったら元に戻してあげる。それが友達としての使命だと思っているから私は思い悩む瑛に寄り添ってあげるのだ。

「よし、ならまずは髪型を変えてイメチェンするのじゃ。左右で結ってある派手なリボンは子供っぽいから外した方が良さげじゃのう」

「いや、これは外したくない! だって前にハルが似合ってるって言ってくれた事があったし……」

「ほほう。なら外す訳にはいかないのう。そのリボンを生かすのなら……敢えて子供らしく売り込んでいくべきか……」

「子供らしく……?」

自分の経験もあってか、瑛の意見を尊重した私が思い付いた考えではあったが、まさか數年後に彼のアイデンティティになるとは當然ながら知る由よしもなかった訳で。

「雫ちゃんはここに居るかしら?」

部屋の出口から寮母さんの聲が聞こえてきた。呼ばれた私はそそくさと玄関に向かう。

「何か用でしょうか?」

「ええ。貴方のお母様が迎えに來られてますの。荷をまとめて駐車場まで行ってもらえます?」

「荷を……?」

ただ顔を合わせるだけなら分かるが何故荷をまとめる必要があるのだろうか。

私は理解できなかったが寮母さんの指示に従い、自分の部屋を空っぽにして寮を後にした。

「他に持って帰るは無いわよね? じゃあ行きましょうか」

「待ってお母さん! 運転は家政婦さんじゃないの?」

高級セダンの運転席に乗り込もうとする母を呼び止める。いつも迎えに來てくれるはずの家政婦が今日は何故か居なかったのだ。

「ごめんね雫。家政婦さんはちょっと調を崩しちゃったみたいでしばらく休んでるの。家のお仕事はお母さんが全部やるから雫は安心していいからね」

「うん、そっか……」

今まで家政婦が休んだことなんて一度も無かったのに。

母は優しく微笑みかけてくれたが、私は素直に喜ぶことができなかった。

――何かがおかしい。

四年前に蒼琉君が亡くなった時と同じ。また私の知らない所で何かが起きていると私の尖った覚が訴えていた。

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