《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》【スピンオフ・修善寺の過去】小學生編「トラウマノキッカケ」

――父の事件が発覚してから約半年後。

私を取り巻く環境は良くも悪くも変わらない狀態が続いていた。クラスメイトの連中は私に近寄ろうとしないし、私も彼達に近付こうとしない。見えない壁によって孤立しているのは明らかだが、先生は彼らを注意することもなければ私を気遣うこともしなかった。恐らく厄介事に巻き込まれるのは免だから見て見ぬフリをしているのだろう。教師とはいえ所詮は人間。自分を犠牲にしてまで他人を守るというデメリットしかない行為をするはずが無い。

一方、瑛は相変わらず私への扱いについて気に食わない様子でブツブツと文句を言う事も多かったが、私は既に彼達クラスメイトを見切っていた。

私を嫌がるような連中にわざわざを売る必要は無いし、加害者の家族という関係だけで人を貶おとしめる様な低脳共に付き合う程、私はの大きな人間じゃないから。それよりも私には思い悩む點があったのだ。

それは母。あの人が何を考えているのか當時の私にはまるで分からなかった。

父の異変が始まった時も、事件が判明したあの日も、捕まった日の事も……。母は私に笑顔を向けるだけで本心を隠しているように思えた。

――何故本當の事を言ってくれないの? 私がまだいからにしているの?

私の大人びた思考は卓越ながらも、親としてのプライドまでは汲み取る事は出來ていなかった。

寒さでが引き締まる、厳しい冬の朝。

目覚まし時計の音でを起こしリビングへ足を運んでいると、偶然にも玄関先で誰かと話をしている母を目撃してしまった。

「その、困ります……」

必死に何かを訴えているようだが冷たくじる母の聲。

私は見つからないように壁を盾にしてそっと聞き耳を立てる事にした。

「それはこっちのセリフなんだよなあ。俺達もビジネスってのがあるからよ」

「借りたら返すのは常識ですよねぇ?」

恐る恐る覗くと、母と會話していたのはスーツ姿の男二人。片方はガタイがよくてスキンヘッドが特徴的。もう片方の男は痩せ型だが長だ。

二人とも服裝だけは私と話した警察と似ていたが、襟足やワイシャツ等、所々著崩れておりフォーマルな印象はじられない。その上、彼らの表はとても怖いと思った。目が合うだけで命の危険をじるような、食猛獣の瞳をしている。

「言われたお金は全部返しましたよね? それなのにまだあるって……聞いてないんですが」

「おいおい、三百萬が全部だなんていつ言ったんだよ。あんたの旦那に殘っているカシはまだ五千萬あるんだぜ?」

「取り立てても本人はサツに捕まってますから、こうして奧さんにお願いしてるんですよ。約束はちゃんと守っていただかないと」

取り立て、カシ……? セレブの娘にとって無縁の言葉が次々と聞こえてくる。父が犯した罪はひき逃げだけでは無いというのだろうか。

「だから私は何も知らないって言ってるじゃないですか。もし借金があったとしても証拠が無いと払えませんよ」

「あぁ? 払えないだと? 修善寺グローバルサービスの元社長書様のセリフとは思えねぇなぁおい」

聲を荒らげるスキンヘッド男の脅迫。に隠れている私だが、背筋が凍ってしまい震いが止まらなくなってしまっている。それに対し、母は怖じせず――きっと心の中では恐怖で一杯なのだろうけど、自分を守る為に必死に戦っている。

「で、ですけれど……払うべきお金はきちんと払いますから、まずは証拠を……」

「うっせーな。だから五千萬払えっつってんだろ!」

怖い。どうしよう。このままじゃ母のも危ないかもしれない。

警察に通報するべきなのかな。でもが思うようにかない。怖くて一歩も踏み出せないよ……。

「まあまあマサトラさん、暴れるのはまだ早いですよ。……奧さん、どうやら貴方は証拠がしいと仰っておりますが、我々には法的に通用する立派な借用書があるのですよ。こちらです――」

すると長の男が落ち著いた表で一枚の紙を取り出し、母に見せつけた。私は遠くから様子を伺っているため、彼が手にしている紙の容までは確認できない。

「ご主人のサインと捺印もこの通りきっちり有ります。筆跡を見れば奧さんも偽造でないことが分かるのではないでしょうか」

「え、えぇ……」

確固たる証拠を見せられたのだろうか。必死に抵抗していた母も押され気味になっている。私は一どうすれば……。

「ということで奧さん。この借用書には三千萬の貸付が明記されてますので、取り敢えずそれだけ返していただきましょうか。利子と合わせた四千五百萬円を……明後日までに」

「あ、明後日!?」

なんという無茶振りだろうか。い私でも分かる。この男達は――貸した金を必要以上に迫って取り立てるヤクザだ。

「払えねぇとは言わせないぞ。貯金を引き出せば余裕だろ?」

「いえ、そんな大金は無いんです。主人が全部使ってしまったので……」

「ガッハッハッ! 企業の社長一族がまさかの一文無しか。笑わせてくれるなぁ!」

高らかに笑うスキンヘッドの男は余裕の表。社會的地位が高く富豪だった私達がドン底に転落した事実が面白くてたまらないのだろう。他人の不幸はの味なのだ。

「……そういえばこの家には娘が一人いるよなぁ? 確か小學生の」

ズキュッと抜かれたような覚に陥る。何故私が彼らの話に登場するの……?

「……! まさか娘を――」

「現金で払えないって言うなら人間でも構わないって話さ。お金持ちのお嬢様なら躾も立派にできてるだろうしなぁ!」

再び全が凍りつく。やだ……私まだ生きたいよ……。

「マサトラさん、小學生をしがるって……まさかロリコンなんですか?」

「馬鹿野郎、俺にそんな趣味はねぇよ。違うんだ、若過ぎる娘は育てればいいんだよ。十年もすれば……良いオンナになるだろ」

「なるほど……。流石マサトラさん、目の付け所が違いますねぇ」

「ふはははは! だろ?」

悪魔だ……。この人達は普通の人とは違う考えを持っているんだ……。

でもどうしよう。もしお金が用意できなかったのなら私は本當に連れ去られてしまうのだろうか。

「たさない……わ」

上機嫌なヤクザに対し、母は聲を震わせながらも何かを口にした。

「あぁ? 聞こえねーよ」

「渡さないって言ってるのよ。何があろうとあの子だけは手出しさせない……」

和な格の母はいつも私に優しくて常に笑顔を浮かべているような人だ。しかし今の母は違った。男達を睨む視線はとても鋭く、今までに見た事が無い程真剣な表をしている。

つまり――母は本気で私を守ろうとしているのだ。真実を隠していたのも、きっと私がショックをけない為の配慮だったのだろう。自分が犠牲になるかもしれないのに、デメリットしかないはずなのに必死で私を守ってくれている。それなのに私は母を疑ってしまった。見捨てられ、どこか遠くへ行ってしまうかもと思ってしまった。

「何言ってんだ? 手を出すかどうかはテメェじゃなくて俺が決めるんだよ」

「そうだとしても……。例え死んでも守るのが親の務めなのよ!」

「親の務め、ねぇ。まあ細けぇ所は知らないけど、子供を守りたけりゃ金を払いな。明後日までにな」

「ふっふっふ。では我々はそろそろ失禮いたします。お金の件、お待ちしておりますよ」

男達は最後にニヤリと口角を上げると、その場から去っていった。

そして玄関の扉が閉じる音と共に母は全ての力が抜け切ったように崩れ落ちた。

私が男――特にヤクザや不良を極度に嫌悪するようになったのはこの日からだった。

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