《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》【番外】聖夜の彼であっても癖は直せないのか 中編
本編最終話から一年経過したクリスマス編の続きです。
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通勤列車のロングシートに俺と堂庭、二人並んで座る。
俺達は自宅がある鎌倉からとある場所に向かっていた。
「やっぱ今日は混んでるのかしら……」
「多分激混みだろうな。定番のデートスポットな訳だし」
場所はみなとみらい。橫浜市の港灣部に位置しており、區畫化された道路や建ち並ぶ高層ビルが印象的な近未來漂う街だ。
鎌倉から約二十キロ離れている為、移に々時間がかかるが、堂庭が「夜景とイルミネーションを見たい」と言って聞かないので重い腰を上げた次第である。
「もしかして晴流がみなとみらいへ行くのって前回のデート以來?」
「前回……? お前とは行ってないはずだが」
「そうよ、あたしじゃないわ。でもあの口が達者なお姫様と行ったでしょ?」
「……あぁ、修善寺さんか」
そういえばそんな事もあったっけ。
今思えば懐かしいが、一年前の夏に俺は修善寺さんとデートしていた。だがデートと言っても「好きだから」という理由では無くて男嫌いな修善寺さんに罰を與える名目であり、戦略的に行われた出來事なのである。
しかし結果は失敗で、修善寺さんが罰に怯えるどころか、可らしいの子と二人っきりになるという狀況で俺が張の余りが震えた顛末だった。
けない俺であるが、あの一件があったおでデートプランの設計や子へのエスコートを學ぶことができたので結果オーライだと思っている。それに、あれから修善寺さんと話せる仲になり、俺の知らない堂庭を聞くこともできた。
「あの時が練習だとしたら……今日は本番だからね。期待してるわよ」
「期待って言われても困るけどな」
「いつも通りの晴流でいいのよ。あたしの好きな晴流でね」
瑛はにっこりとウインクをして答えた。照れるな、本當に。
『まもなく橫浜、橫浜。お出口は右側です……』
次の停車駅を知らせる車アナウンスが鳴り響く。
堂庭と付き合い始めてから最初のクリスマス。最高の思い出になるようにしなくちゃいけないよな。
◆
「これは……凄いな」
目的地に到著し、目の前に広がる景を見て俺は驚いた。
まずは辺りを青白く染めている街路樹のイルミネーションだ。彩こそド派手では無いものの、夜景とマッチした幻想的な景に思わず目が奪われてしまう。
次にそのイルミネーションを目當てに訪れたカップルの多さに驚いた。周りを見渡せば手を繋いでを深めている二人組だらけ。それなのに俺達は……と一瞬思ったが俺と堂庭は人同士なのだから、この聖夜ムードから浮いた存在にはならないだろう。
未だに実が湧かなくなる時があるけれど、俺達の関係は昔と比べて確かに変わっている。それは紛れも無い事実なのだが――
「晴流見て見て! あそこにいるの子可くない?」
殘念ながら堂庭の変わらない言によって人らしさが半減しているのだ。幻想的な場所で彼氏に向けた最初のコメントがって……堂庭のロリコンっぷりは相変わらず直らないようである。
「別に俺はいいけどさ……もっと他に言う事があるんじゃねぇのか?」
「そうね、確かに言葉が足りなかったわ……。あの子のダウンパーカーは國寶級よ。もこもこな部分も可いし、あたしも著てみたいわね」
駄目だこいつ……。視線がにロックオンされて離れないようだ。
「いくらお前でもあのサイズじゃ著られないだろ」
「そうなのよね。あと三十センチくらい長が低かったら良かったのに……」
真剣な顔で思い悩んでいる様子の堂庭だが、一どこまで本気で考えているのだろうか。く見られたい気持ちは分かるが俺としては今の堂庭のままでいてほしいと思っている。だが決して小學生型が大好きなロリコン、という訳ではないぞ。
「それより綺麗だな、イルミネーション。寫真でも撮るか?」
「ええ、そうね……」
ようやく街路樹に目を向けた堂庭だったが、どこか寂し気な表をしていた。
「どうした? 合でも悪いのか?」
「ううん、違うわ。景も綺麗だし、不満は無いのだけど……。もっと人が居ない場所に行きたいの」
人が居ない場所ということはまさか……俺をっているのか!?
高鳴る鼓を抑え、冷靜さを取り繕う。
一旦落ち著け俺。まだそうと決まってはいないじゃないか。まずは相手の真意を探らないと……。
「その……外だと寒いだろうし、もし他の人に見られたらマズいだろ」
「外……?」
かなり直球な質問になってしまったな……。
しかし堂庭は容を理解できていないのか首を傾げながら困している様子。
だがしばらくした後、彼は瞳を大きく見開いて頰を真っ赤に染めながら――
「そ、そういう意味じゃないわよ! 晴流のエッチ!」
一発脇腹を毆られてしまった。痛くはないけど。
「でも人気ひとけが無い場所って言ったら普通そうなるだろ」
「ならないわよ! 大、あたしはそんな野外出するような趣味は持ってないし。そうじゃなくて……」
強い口調と共に叱る堂庭の語尾が段々と弱くなる。隙あらばエロを妄想するのが男子高校生なので、その點は理解していただきたいが……。
「二人きりになりたいの。靜かな場所で景を見ながら晴流と一緒に居たいわ」
「……なるほど」
なんということだろう。堂庭は俺なんかより何萬倍も純粋で素直な心を持っているではないか。
有名なデートスポットより二人だけの時間を優先したいだなんて……泣かせてくれる奴だな。
「あたしのワガママで連れまわしちゃって本當に申し訳ないけど……今からあの神社へ行かない?」
「おう、もちろん構わないぞ」
あの神社と言われれば答えは一つ。俺と堂庭にとって欠かす事のできない沢山の思い出が詰まった場所だ。
今から移するとなると結構な時間がかかってしまうが堂庭に赤っ恥をかかせた手前、斷ることは出來まい。
「ありがと。お返しに何かしなくちゃいけないわね」
「気にするな。俺も丁度神社に行きたいと思っていたからな」
「え、本當?」
「…………噓だ」
再び脇腹の辺りを毆られる。今度はし痛かったが堂庭の顔は笑っていた。
「格好つける必要なんて無いのよ。ほら、早く行こう?」
「はいはい……」
彼氏らしい振る舞いを取れずに彼からダメ出しをけてしまうけない俺だが、堂庭の無邪気な笑顔を見るとそんな暗い気分は全て吹っ飛んだ。
彼が楽しければそれでいい。だって俺は瑛・・の彼氏だから。
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