《ロリっ娘子高生の癖は直せるのか》【スピンオフ・修善寺の過去】高校生編「転機」

2章の修善寺視點が続きますがデート部分は大幅カットしております。

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今日は晴天ということもあり、周りを見渡せばどこもかしこも大勢の人で賑わっていた。

デートコースについては瑛が一応作ってくれたようで、晴流の案で中華街へ行き麻婆豆腐を奢ってもらった。

財布の中が常にピンチな私にとっては有り難い心遣いだったが、先日初対面だったばかりの私にこんなにも優しくしまって良いのだろうかと思ってしまう。

何かお返しをするべきかと考えるも時間は刻々と過ぎていき、時計を見れば午後三時を経過していた。

「よし、じゃあ最後にコスモワールドで遊んで帰るか」

「うむ。承知したのじゃ」

みなとみらいの高層ビル群に隣接する都市型遊園地『よこはまコスモワールド』。

名前こそ聞いた事はあるが遊びに行くのは今日が初めてだ。それに遊園地自も初めての経験である。

「宮ヶ谷殿、わしはあれに乗りたいのじゃ!」

著くや否や私は遊園地の看板ともいえる巨大なアトラクションを指差した。

「観覧車か……」

晴流はどうやら乗り気ではないようだ。確かに私達はカップルではないしあの狹い空間に二人きりになるのは心苦しいのかもしれない。

「ちょっと流石に恥ずかし」

「何をぐずぐずしているのじゃ。早よ行くぞ」

晴流の心も理解できるが、私はどうしても観覧車に乗りたかったので々強引に彼の腕を引っ張ることにした。

この落とし前はいつか必ずつけるから許してくれ、晴流。

「うひょおぉー! 高い! 高いのう!」

眼下の景を眺めると思わず子供のようなはしゃぎ聲を出してしまった。

今まで私達がいた地表からぐんぐんと引き離されていき、道路を走る自車が玩おもちゃのように見えてしまう。

「これなら學園も見えるかもしれないのう! えっと……あっちの方か?」

「そっちは東京だよ……」

呆れた聲で晴流に訂正される。私はどうやら方向音癡らしくこのように「やれやれ」と溜め息をつかれることもよくあるのだ。自分では正しいと思っているのだけど……。

だがそれは別に構わない。それよりも晴流と二人きりになっているこのチャンスを有効利用しなくては。

外では話し辛い話題でも今なら簡単に聞ける気がする。

「突然じゃが、お主の學校へ書を送った理由を知りたくないかの?」

「えっ……」

「勘違いしてるかもしれんから、是非わらわの言い分を聞いてくれ……なのじゃ」

「うん、寧ろそれは聞きたいな」

癖を直すため。そして彼の通う東羽高校の実態を探るために送った一枚の封筒。

その真理を晴流にもきちんと理解してもらわないと私の思通りにいかないかもしれない。

「あれは瑛殿に自覚してもらう為に行ったのじゃ。決して悪気があった訳ではない」

「……え、自覚?」

「ロリコンが差別されるという事実じゃ。仮にバレたらまたあの時のように……」

それから私は手紙を送ることに至った経緯から目的までこと細かく説明した。

「修善寺さん。あれは本當に善意で送った封筒なの?」

「あぁもちろんじゃ。は噓をつかんぞえ」

一通りの説明により私の意図は伝わったと思えるが、晴流はまだ納得していないように見けられた。まあ無理もないだろう。大・切・な馴染みが一時窮地に立たされたのだからな。

「でもあの手紙を見た時の堂庭、マジでビビってたぞ」

「…………」

「あいつは普段うるさいほど元気だけどさ、ショックにじないくらい能天気な奴じゃないんだよ」

晴流の聲は力強かった。いくらなんでもそれは駄目だ、と私に対して反抗するかのように。

「……例え善意であっても堂庭を悲しませるような事があれば、それはやめてくれないか」

「…………」

彼の真剣な表と聲。私が初めて會った時は気の抜けた顔をしていたけれど今は全く違う。まるで別人のように本気の目で私を見つめていた。

――きっと大丈夫だ。彼なら任せられる。

「ほっほっほ。……間違いない、お主は良い奴なのじゃ」

「何でこの流れでそうなるんだよ!」

「だってお主は瑛殿が心配で心配で仕方がないんじゃろう? そしてが行なった一連の行為に納得できない、違うかえ?」

殘念ながら晴流はまだ自覚が足りないようだ。瑛も苦労する訳だ。

「……修善寺さんのとった行はおかしいと思うけどさ、べ、別に堂庭が心配で言った訳じゃないよ」

「宮ヶ谷殿。殿方のツンデレは世間ではウケないぞ」

「ちがっ! 俺は本當に心配なんか……」

とはいえ彼自が気付くのは時間の問題か。それまでの間は……水面下の戦いがお互いに気付くことなく繰り広げられるのだろう。

なら私はしヒントを與えてみようかな。ワガママを聞いてくれたお返しに。

「宮ヶ谷殿。一つお主に質問があるのじゃが……」

「ん、何?」

「桜ってお主の事が」

「はーい! お疲れ様でしたー!」

ガタンと大きな音が鳴り響き室だったカゴの扉が勢いよく開かれた。殘念ながらタイムリミット。ヒントはまた後日教えるとしよう。

「宮ヶ谷殿、早よ降りるぞ」

「あ、あぁ……」

こうして晴流との強制デートは幕を閉じたのだが、私は大きな収穫を得ることができた。

あの一即発のどうしようもない學校とはおさらばだ。

「では修善寺さん。先に私があの子達を集めるので、その後私が呼んだら中にってくれ」

「分かりました、先生」

『2-B』と書かれたプレートの下でその時を待つ。

晴流と會ってから數ヶ月後。今日は二學期が始まって最初の日だ。

そしてここは神奈川県立東羽高校の二年B組の教室前。私は必死に母親を説得して晴れて瑛と同じ學校に通うことになったのだ。

共學かつ公立高校という違いから不安要素が無い訳ではなかったが、先の報収集によりあのセレブ學園よりも百倍マシだと分かっている。

「突然だが今日から一人、転校生が加わる。……よし、れ」

教室の中から合図がかかる。さあ始めますか。

ざわざわと落ち著かない聲と一斉に浴びる視線に張するが構わず歩き進める。

「初めまして。鶴岡學園から來ました修善寺雫と言います。よろしくお願いします」

軽く一禮。そして見上げた瞬間、お馴染みの彼らと目が合った。

「「はあああぁぁぁぁぁ!?」」

晴流はもちろん瑛にすら私が今日同じ學校の同じクラスに転すると伝えていなかったのだ。それにしても驚き方がオーバーだな。

まあ瑛達とは後でゆっくり話すとしよう。それよりも私にはまだ大きな不安が殘っている。

「ごめんな修善寺。続けてくれ」

「はい……。えっと、わし、じゃなくて、わ、私にはぜひ気軽に話しかけてほしい……のじゃ」

クラスに馴染めるかどうか。これは非常に大きな懸念點だ。

いくら瑛を取り巻く環境が良いとはいえクラスメイト全員が善良者とは限らない。鶴岡學園出というステータスを持つ以上、彼ら彼らと対等に接してくれる保証は無いのだ。

考えれば考えるほど張してしまい、にこやかに言う筈だったセリフもたどたどしくなってしまう。

これでは幸先の良いスタートが切れないじゃないか――と思った矢先。

「可いっー!」

一人のショートカットのの子が立ち上がってんだ。まさか私を可いって言ったのか……?

「リアルで「のじゃ」って言う人初めて見たよー! なになに? 修善寺さんってお姫様なの? お嬢様なのー?」

の子は躊躇い無く私に質問をぶつけてくる。そして彼の発言を皮切りにクラス全がざわつき始めた。

「まさかのセレブ?」

「堂庭ちゃんより金持ちなのか!?」

「リムジンで登下校するんじゃね?」

「まあ鶴岡學園からだしマジでありえるよな」

まずい、良からぬ憶測を立てられている。

私はもうお金持ちじゃないのに。結局彼らは嬢様という珍しい見てくれに期待しているだけなのか。

そんなの悔しい。私は客寄せパンダじゃないんだぞ……!

「わしは金持ちなんかじゃないぞぉ!」

気付けばんでいた。教室は一瞬のうちに靜まり返る。

「……わしは服も買えない位の貧乏人じゃ。とある事があって今は一般庶民以下。殘念じゃがお主達の期待に添える人間ではない」

言ってしまった。でもいずれ告白すべき容である。私は噓をつくのが嫌いだから、いっそ全てをぶち撒けた方が気が楽だ。

「金が無い人間には価値も無いのじゃな。……しばらく迷かけるようになるが、どうかよろしく」

報収集不足だった。これは私の責任。世の中はそこまで甘くは無いんだな。

沈黙が続く。完全にやってしまった。私が空気を壊してしまったんだ。もう帰りたい。あぁ、時間が昨日に戻ってくれたら……。

「あの……」

重い空気を打破する者がいた。それはまたしてもショートカットのの子だった。

「余計な事言ったなら謝るよ。ごめんね。でも、可さにお金は関係無いからっ! それに……貧乏で比べたら平沼君の方が絶対凄いよ!」

私の予想を裏切る事態が起きた。なんと彼の言葉によって靜まり返った教室が一斉に沸きだしたのだ。

「都筑ぃ! 聞き捨てならない臺詞を吐きやがったなお前」

「えぇ? ゴミ捨て場からいかがわしい本を探してた人が何を言ってるんだかぁ?」

クラス中が笑い聲に包まれる。一何が起こっているんだ? 今までで験したことのない流れだ。

のあまり立ち盡くすことしかできなかった私だったが、擔任教師がフォローにった。

「はいそこまでー。えーっと、じゃあ修善寺、窓際の一番後ろの席が空いてるからそこに座ってくれ」

「はい」

私はこのクラスに居ていいのか? 格も卑屈だし貧乏人だけど仲良くしてくれるのだろうか……?

しかしまたしても私の予想は裏切られた。

「よろしくね、修善寺さん!」

「お晝ご飯私達と一緒に食べない?」

「ちょっと子ばっかりずるいぞ。俺達ともお話しようよ」

「うっさいわね、修善寺ちゃんが可哀想でしょ。ケダモノ男子は黙ってなさい!」

「あ、差別だ差別! 子優遇はんたーい!」

席に向かうまでの間、通り過ぎるクラスメイト達が笑顔で話し掛けてくれた。

それはまるでアイドルを出迎えるファンのようで……歓迎という二文字以外に思い付く単語は浮かばなかった。

「ありがとうみんな。ありがとう…………」

もしかすると私のこれからの毎日は今までよりほんのしだけ楽しくなるのかもしれない。

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お読みくださりありがとうございました。

修善寺の過去編は以上です。

さて、次回は本作最後の更新となります。

2月23日(土)投稿予定です。お楽しみに。

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