《メイドの鈴木さんは僕にをした》第十話:流行り病
いつも通りの日常、當たり前な毎日、そう思っていた日々に不幸とは突然に現れるものである。今日がその日であった。
「湊さん、ちょっといいですか?」
普段はエリナの後ろに使えているマリアが珍しく自分から話しかけてきた。しをモジモジさせながら勇気を振り絞るように頑張って話す。
「実は今日、エリナ様が風邪を引かれたんです。ですから、湊さんが良ければ、放課後にお見舞いに來てくれませんか?」
マリアはエリナのことを気にして俺に話しかけたようだ。俺はマリアの気持ちを尊重するために行くことにした。
「分かった。放課後一緒に行こう。あ、お見舞いに行くんだったら途中お土産とか買ったほうがいいんじゃない?」
俺が行くことを告げるとマリアは喜ばしそうな表になり土産を買うことを賛してくれた。
キーンコーンカーンコーン…
時間は流れ気づけば今日最後のチャンイムの音が校に響き渡った。帰りの支度を始める為、バッグに課題や教科書を詰め込む。
「ぼっちゃまー、一緒に帰りましょうー」
帰る支度をしていると三年のクラスから來た鈴木さんが現れた。しかし、俺は帰るわけにはいけないので彼からのいを斷った。
「すいません、今日エリナが風邪を引いたらしいんでお見舞いに行ってきます。」
鈴木さんはし殘念そうな顔をしながらも渋々了解してくれた。
「分かりました…でも、できるだけ早く帰ってきてくださいね?お夕飯準備して待ってますから」
彼はし寂しそうに教室を後にする。突然った予定を殘念に思ったのだろうが馴染であるエリナが風邪なのだから止めることも難しいみたいだ。
「湊さん、準備はできましたか?そろそろ行きましょう。」
學校を出ると俺たちは二人で歩いた。この時間は部活を行なっている生徒たちの聲が學校の外までれる。歩き続けるほどその聲は小さくなっていき俺たちは町の商店街に著いた。
「あの、お土産はエリナ様の好きなプリンでも大丈夫だと思いますか?それとも、もっと別のものを選んだ方が良いのでしょうか?」
マリアは弱々しい聲で訪ねてくる。マリアが良いと思ったものを選べば良いと思ったが本人には難しい選択のようだ。
「風邪ならも痛めてるだろうから、プリンのほうがいいんじゃない?そのほうが食べやすいだろうし。」
「そ、そうですか!?なら、湊さんはどんなプリンが良いと思いますか?カスタードだとか、カラメルだとか、クリームだとか、どれにしましょう?」
選択肢を減らしてあげると、前以上に選択肢が増えてしまい心の中で呆れてしまう。コンビニに到著する前にこんなに悩んでいてはいざプリンを目の前にした時はどうなるのかと気になったが、混されては困るのでまたアドバイスを授ける。
「それなら、噛まなくても飲み込めるクリームがいいんじゃない?それに、コンビニだからあまり種類もないだろうから、多分クリーム系かカラメル系しかないんじゃないかな?」
提案をするとマリアはとても喜ばしそうな表をした。
「なら湊さんが選んだものにしますね!」
コンビニへ著くと案の定、店にはカラメルとクリームだけが販売されていた。
「おー、湊さんの言う通りこの二種類だけでしたね。でしたら、さっきオススメしてくれたクリームプリンを買うとしますかね。」
マリアはカラメルプリンを大事そうに持ちながら會計を済ませようとした。
「大丈夫だよ。プリンんなら俺が払うから。」
「そんな、湊さんには私が付き合ってもらってるんですから私が払います!」
會計の時、俺が財布を取り出そうとするとマリアは俺の手を止めようとする。
「プリンぐらいで気にしないで。それに、俺もエリナのお見舞い行くんだから俺も出したほうがいいだろうから。」
俺はきを止めたマリアの手を優しく退け會計を済ませた。
「うぅ…なんだか申し訳ないです。」
會計が終わった後もマリアは俺がお金を払ったことを気にしていた。
「だから気にしなくていいって。それより早く家に行こう!」
お土産のプリンを持ち俺たちはマリアの家に向かった。
「お嬢様ただいま帰宅しました。合はどうですか?」
エリナの家に行くとマリアはすぐにエリナの部屋へ向かった。マリアは部屋の外からエリナに聲をかけるが部屋の中からは苦しそうな咳が聞こえる。
「あ…マリア帰ったのね。おかえりなさい。合は…あんまり良くないわ。食もないし…ゴホッゴホッ!」
エリナは苦しそうに大きな咳をする。本當に容態が悪く今日は會わないほうが良いと思った。
「エリナ様、今日は湊さんがお見舞いに來てくれましたよ?私の隣にいますけど會われますか?」
「え、湊がそこにいるの?ちょ、ちょっと待ってて今出るから!」
調を悪そうにしていたエリナの聲は一変し部屋からはドタドタと暴れる音がする。
「ゴホッゴホッ!ごめん湊、待った?」
部屋の中の音が消えるとエリナの部屋のドアが開きマスクを著けたエリナが出てきた。
「待ってなかったけど…合大丈夫なの?無理なら寢てていいから」
部屋から出てきたエリナはとても顔が悪かった。無理に起こしてしまっては治る病気も治らなくなってしまう。俺はエリナを押し戻すようにベッドに寢かせた。
「そ、そんな…折角來てもらったのに寢てるなんて失禮じゃない?」
「風邪引いてるのにそんなこと気にしなくていいから。」
エリナは布団で顔を半分隠しながら問いかける。
「わ、私林檎でも剝いてきますね。」
部屋のテーブルにコンビニで購したプリンを置きマリアは部屋を後にした。
部屋の中はとても靜かになっていた。存在するのは部屋の床に置かれた加の音と、外から聞こえる下校途中の小學生たちの賑やかな聲と年頃の高校生二人だけだった。
「なんか改めて二人だけになると気まずいね。別に初めて二人きりになるわけじゃないのに。」
特別話題があるわけでもなくエリナは楽しそうに話しかける。部屋が暖かくしてあるせいか不思議と俺のも火照り始める。
「気まずくなることなんてないでしょ。小さい頃はいつも一緒に居たんだから、ただ久しぶりなだけだよ。」
部屋の中は只々靜かな空間を築き上げていた。
「あの頃はさ、私と湊の二人だけで遊んでいたのに何で今は違うんだろうね…」
エリナは俯いたまま話しかける。どこか寂しそうでどこか支えてしそうな聲は俺の心を迷わせた。
「あの頃っていうと、鈴木さんがうちに來る前のこと?」
彼が來る前の俺たちは今よりも濃い関係だった。
『大きくなったら結婚しようね!』
あの頃にした恥ずかしい思い出。それはい頃だからできた行為なのかそれとも本気で考えていた行為なのかそれは當時へ戻らないと想像もつかないがなくとも俺は、あの頃にわした約束と言う名の『契約』は今も忘れていない。
「そうだよ。私たちがわした契約はまだ有効期限がある。私はそれまでに湊と結婚する。」
「無責任なこと言うかもしれないけどあれは子供の頃にしたただの『約束』じゃないか。それを今更掘り返すような真似は…」
「私はっ!真剣に考えてるの!」
エリナの聲がビリビリと俺の全神経を伝ってじ取れる。
「わ、私はね本気なんだよ?嬉しかったな…『みーくん』が私に誓いの言葉を言ってくれた時のこと思い出すだけでね嬉しくて鳥が立っちゃうの。」
懐かしいような恐ろしいような気分になる呼ばれ方の『みーくん』。俺をこんな風に呼ぶのは世界どこを探してもエリナただ一人だろう。
「エリナ、あれは小さい頃のおままごとでした口約束だ。それをっ…」
「みーくん、どんな家に住みたい?何人子供がしい?私はみーくんに求められるだけ與えてあげる。みーくんと私の中を邪魔するものは全員消す。みーくんは私と一緒になるために存在するのであってみーくんにあんな売は相応しくないの。ねぇ?みーくんは分かってくれるよね?ねぇ?ねぇ?」
もう彼に俺の言葉は通じていない。今、彼の脳は彼だけの世界で支配されている。い頃の約束が今はこんな呪いのような形になってエリナを支配しているなんて考えたくもない。
「え、エリナし落ち著いて。」
「あ〜みーくん、あなたの目や鼻や口や耳や髪がみんな好き。あなたのダメなところなんてどこにもない。でも、一つだけあなたには壊れた場所がある。それは『ハート』。『ハート』だけは私を向いてくれない。話をするときは目や鼻や口や耳や髪は全部私に向けてくれるのにその『ハート』だけは私を向いてくれない。それは、あのが歯止めをかけている。あのさえ、あのさえいなければいいのに…」
エリナの目は混沌のごとく黒く濁っている。いつものような明るく生意気な彼は今の彼の心の中には存在していない。彼は両手で自分を抱きしめガタガタと震えている。真冬のように震える彼のを俺はそっと包むように抱きしめた。
「…!みー…くん?」
抱きしめたことで安心したのかエリナの震えは無くなった。それと同時に彼の混沌のごとく黒く濁った目はしずついつもの彼の目のに戻っていった。
「ごめんね、ごめんねエリナ。」
エリナの様子が変わったとき、俺はいつも彼のを抱きしめ謝る。その行為は意味があるのか一時的ではあるが彼の震えを抑える。
「うんっ…うんっ…私こそごめんね。なんか取りしちゃって。また迷かけちゃったね。」
彼の心が取りすのは決して初めてではない。それは彼に心の病があるのかは分からないが彼には二つの格が存在するように思える。
「俺は気にしてないよ。でも、今度から気をつけてね。」
俺も悪い人間だ。本當にエリナのことで困っているのなら彼に近づかないか彼に相応しい病院を紹介するなど対策を取らなくてはいけないのだろうが今までそんなことはしたことがない。俺自も彼の黒いところを認めたくないのか行をとることに怯えている。
「今日はもうおやすみ。寢るまでは俺が見てるから、目を瞑っていいよ。」
「うん。おやすみ。」
エリナはそっと眠りにった。彼の寢顔を見て実した。一日でも早く、俺とエリナとの『契約』を切らなければならない。その為にもはやく『あれ』を見つけ出さなくてはならない。
【あとがき】
ご読ありがとうございます!
今回も投稿が遅れてしまって本當にすいません!!
でもこれには深い言い訳があります!
まず書き方を変更しました。それにより一時的に全文字書き直すことになったのでそれにより長時間消費してしまいました。
それとお知らせにも書きますが「メイドの鈴木さんは僕にをした」を全話改修(書き直し)する計畫をしていました。
どうすれば今までの話をもっと面白く+話を変えずに書き直せるかと考える為に時間を使ってしまったので投稿が遅れてしまいました!
長く多い言い訳すいません!本當すいません!
もう逃げます!次回話にご期待を!じゃあまた!
【お知らせ】
前回話更新の際に予告していた「あの夏二人で見た打ち上げ花火は君のの中だった」を數ヶ月前より公開しています。まだ一話しか公開してませんがこれからどんどん面白くなるのでぜひ一度だけでもご読ください!
「メイドの鈴木さんは僕にをした」の全話を改修(書き直し)します!長い時間をかけて行いますのでご迷をおかけする時があるかもしれませんがみなさんのご理解とご協力をよろしくお願いします!
改修後の目印としては
(変更前:第1話→変更後:第一話)と題名の英數字を漢數字に変更しますのでそれを確認し読んだ場合、話の中や書き方が変更されているので新しい「メイドの鈴木さんは僕にをした」を楽しめますよ!
【返信コーナー】
アニメ好き不登校 様→二回にわたるご指摘ありがとうございます!俺を僕に変更のことでしたがそれは難しいです!ごめんなさい!また何かございましたらご指摘ください!
ティナ 様→ご指摘ありがとうございます!できるだけ早く変更します!
他の読者の方もフォローやいいねをありがとうございます!私の作家魂の支えとなっていますのでこれからもよろしくお願いします!
後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりを受けて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜
「すまん、我が家は沒落することになった」 父の衝撃的ひと言から、突然始まるサバイバル。 伯爵家の長女ヴェロニカの人生は順風満帆そのもの。大好きな婚約者もいて將來の幸せも約束された完璧なご令嬢だ。ただ一つの欠點、おかしな妹がいることを除けば……。 妹は小さい頃から自分を前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢であるとの妄想に囚われていた。まるで本気にしていなかった家族であるが、ある日妹の婚約破棄をきっかけに沒落の道を進み始める。 そのとばっちりでヴェロニカも兵士たちに追われることになり、屋敷を出て安全な場所まで逃げようとしたところで、山中で追っ手の兵士に襲われてしまった。あわや慘殺、となるところを偶然通りかかった脫走兵を名乗る男、ロスに助けられる。 追っ手から逃げる中、互いに惹かれあっていく二人だが、ロスにはヴェロニカを愛してはいけない秘密があった。 道中は敵だらけ、生き延びる道はたった一つ。 森の中でサバイバル! 食料は現地調達……! 襲いくる大自然と敵の兵士たちから逃れながらも生き延び続ける! 信じられるのは、銃と己の強い心だけ! ロスから生き抜く術を全て學びとったヴェロニカは最強のサバイバル令嬢となっていく。やがて陰謀に気がついたヴェロニカは、ゲームのシナリオをぶっ壊し運命に逆らい、計略を暴き、失われたもの全てを取り戻すことを決意した。 片手には獲物を、片手には銃を持ち、撃って撃って擊ちまくる白煙漂う物語。 ※この物語を書く前に短編を書きました。相互に若干のネタバレを含みます。またいただいた感想にもネタバレがあるので読まれる際はご注意ください。 ※続編を別作品として投稿しておりましたが、本作品に合流させました。內容としては同じものになります。
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