シンシアが目を覚ますとクラリスの膝枕で眠っていた。クラリスは壁に背を向けてしっかり眠っているようだ。

「１人でやってくか……」

睡できたシンシアは、早速魔法陣制作の続きに取り掛かる。寢る前にクラリスが描いていた魔法陣を取り、魔力を込めて功すればテーブルの上へ。失敗すればテーブルの下へ。

似たような作業の繰り返しである。

◆◇◆◇◆

「結構功したな」

「んっ……あ、シンシアちゃんおはようございます」

新しい魔法陣を全て試し終わった頃にクラリスが目を覚ました。

「おはよう」

「私もすぐ再開するわ」

「いや、まだ寢てていいよ。俺もし魔法陣を描いてみようと思う」

クラリスは自分が描いた魔法陣がテーブルの上に移しているのを見て、し安心して再びを楽な勢にした。

「じゃあしここで見ていようかしら」

「いつもありがとうな。俺なんかの為に何日も部屋に篭って」

「そういうのは魔法陣が完した時に言うものよ。それに私はシンシアちゃんの為なら何日だってこの部屋に居られるわ」

その言葉にシンシアは驚いて、クラリスの方を向いた。

「それって……どういう事です？」

「魔王様の初めての親友ですもの」

「あぁ……そ、そういう事ね」

シンシアはしガッカリしながら、再び羽ペンを手に取って魔法陣を描きはじめた。

紙は余るほどある。１度に30枚程描いてから試していこう。

◆◇◆◇◆

「勝ったぞ！」

「ふんっ、我輩がれば負ける事はない」

イヴと人間に変したウルド、そして悔しそうな顔のアデルが教室に帰ってきた。

「皆おかえり……」

サラは暇そうに項垂れていて、シンシアがいない時のサラはこんなものなのかと殆どの生徒がじていた。

「魔法陣の制作にどれくらい時間を掛けてるんだアイツは……イヴが暇してるだろう」

ウルドも周りの人達の元気がないことに不満をじ始めたのか、愚癡を吐き始めた。

「でも何か噂によると凄い魔法を作ろうとしてるらしいよ」

「イヴちゃん詳しく教えて」

「黒魔でしか可能じゃなかった魔法を、白魔でも可能にする為に魔法陣を１から作ってるって」

するとサラが勢いよく起き上がった。

「私ちょっと見せてもらった！ 何か文字沢山書いてたよ！」

「その噂は本當見たいね。でも新しい魔法って……何日かかるのか分からないし、もしかしたら今頃上で死してる可能も……」

皆が上の方を目を向けた時だった。

「やったぁぁぁああああああ!!!!」

シンシアのと思われる大きな聲が聞こえてきた。

「いっ、今のシンシアちゃんの聲？ だよね？」

「多分……何があったのか見てこようよ！」

「僕も行こう！」

◆◇◆◇◆

「やったぁぁぁああああああ!!!!」

「う……しい……やっと功したのね……」

「か、鏡鏡！！」

「はいっ！」

「おぉっっ！！」

鏡を見ると、そこには銀の長い髪をした高長のしいが立っていた。凜とした顔立ち、大きな、細長い腳、スタイルまで抜群。

ついに大人のになる魔法陣が完したのだ。

「あっ……でも……魔力消費量がっ……やばいっ……」

その瞬間、シンシアは子供の姿に戻ってばたりと倒れてしまった。

「シ、シンシアちゃん！ どうしたらっ……ま、魔力を分けないと！！」

──ガララッ

「シンシアちゃん達大丈夫！？」

そこに丁度サラ達がやってきて、魔力切れを起こした事を伝えた。

◆◇◆◇◆

醫務室に運ばれたシンシアは、ベッドの上で眠っている。

「良かった。シンシアちゃんもクラリスさんも元気そうで」

「ただまた部屋に篭らないといけないみたいですけどね……」

魔力消費量を抑える為に魔法陣の形狀を変えなければならない。その事をクラリスは常に考えながらも、シンシアを心配していた。

「部屋で何をしていたんですか？」

「シンシアちゃんを大人にする魔法陣を作ろうとしていたの」

「「おぉ〜」」

アイリ達はシンシアが大人になった姿に興味があるようだ。

「あ、シンシアちゃんが起きたよ」

「んん〜……あれ……さっきのは夢？」

「夢じゃないわよ。シンシアちゃんは一時的に大人になれたけど魔力切れでここに運ばれてきた」

するとシンシアはニヤッと笑った。

「じゃあ沢山食べて再開しないとな」

「そうね」

笑い合う二人を見たアイリとサラは、し引いていた。

「こういう人がマッドサイエンティストになるのかしら……」

「魔力切れを起こしてもまだ頑張るんですね」

それからシンシアは運ばれてきた大量のお菓子や飲みを食べて魔力を回復させて、再び2階の空き部屋へと帰っていった。

「凄い食べたわね」

「シンシアちゃんは大食いだね〜。それもまた可い！」

「可かったですよね！ ハムスターみたいに頬膨らませてモグモグって！」

サラとアイリは、久しぶりにシンシアの姿を見て興が抑えられないようだ。しばらくシンシアについて語り続けていた。

◆◇◆◇◆

「よし、再開させるとして……どうしたらいいんだ」

「魔力消費量を抑えるのは簡単よ。魔力の通り道を単純化して、ない魔力でも効率的に全ての文字に行き渡ればいいの」

「じゃあこの線をこうして──」

2人はあっという間に集中モードになり、魔力切れを起こしたことなど覚えていないかのように何度も魔法陣を作っては発させていた。

「本當……私でも惚れてしまう程しいわね」

「嬉しいな」

シンシアは、こちらの世界に來る時に5枚のカードを引いていた。化、不老。そして化というのも豪運というカードの影響で引いてしまったのだが、その化のおでこれ程までしい姿になれているのだろう。

「鏡で自分と目が合うだけで俺も照れるな……ははっ……」

しずつ魔力消費量を抑えてきているようで、今は30秒程の持続が可能になっていた。それ以降は魔力切れで倒れてしまいそうなのですぐに辭める。

「ん〜……ちょっと考えたんだけど、そもそもの配置を並べ替えれば更に効率的に魔力が通るんじゃないか？」

「試してみるしかないわね」

◆◇◆◇◆

そしてついに、ほぼ魔力消費をじない程にまで抑えることに功した。

「でもこの魔法陣だと持って2時間ね。それに妖からも魔力を吸われているから……1時間前には食事を取らないと魔力切れを起こすわ。その間に他の魔法を使わなかったら、の話だけどね」

「やっぱり永久的に大人になるのは難しいか〜」

大人になったシンシアのからしい聲が部屋に響く。手をかしただけでクラリスが見惚れる程のしさで、シンシアは髪を手でボサボサにした。

「厳しいなぁ……１度に大量に食べれば栄養も含めて時間くらい……2時間あれば十分か……でも白魔だしこれが限界なのか……」

「シンシアちゃん……」

「んっ？ どうした？」

「本當に綺麗ね……本當に……」

クラリスがそこまで言うものだから、改めて自分の姿を鏡で見ると笑いが込み上げてきた。

「ははっ、なんで俺こんななんだよ」

「もうこの魔法は完で良いんじゃないかしら」

テーブルの上にある最終的に完した魔法陣を見て、シンシアは考える。

1〜2時間毎に力食事を取り続けないと子供に戻る。普段の生活を子供で過ごすとして、大人になりたい時にはこれで十分。

「そうだな。後は変対象を俺限定に絞って終わらせるか」

「その姿を皆に見せに行きましょう。それと、完した魔法陣の紙を貸してくれるかしら」

「ちょっと待ってくれ」

シンシアが文字を修正して対象を自分限定に絞った後、クラリスに渡した。

「これをシンシアちゃんのに記憶させることで、この紙がなくても魔法が発可能になるわ」

魔法陣の描かれた紙を背中に押し當てられ、何か魔法を使用したようだ。に力が流れ込んでくるじがする。

「１度子供に戻って魔法を使ってみてくれる？」

「分かった」

子供に戻ると視界が一気に低くなった。やはり長は高い方が良いな。

「よし」

大人になるイメージをして魔力を手の平に集中させると、2人で作った魔法陣が手の平に現れてり始めた。

「おぉっ！ なんか嬉しいな！」

その魔法陣から放たれたが全を包み、あっという間に大人の姿に変した。

「おぉ完璧！！」

「この魔法陣の紙はいる？」

「それはクラリスさんにやるよ。謝の気持ちとして」

「ありがとう。では皆に見せに行きましょう」

教室に戻って大人になった姿を皆に見せると、サラとアイリは発狂に近いくらいのテンションで甘えてきた。男達は全員顔を赤くし、イヴと使い魔のウルドもビックリしている。

そして俺の使い魔のベネディも、シンシアが綺麗な姿になって嬉しそうに尾を振っていた。