《學校一のオタクは死神でした。》第39話 記憶

*第39話 記憶*

どれくらい時間が経っただろうか…

重く暗い時間が過ぎてゆく…

本當にどうしたらいいんだよ…

ふと、何者かが新に向かって近づいて來た…

「コラ、神藤‼︎お前今何時だと思っているんだ‼︎」

ゆっくりと顔を上げると…

「もお、11時半だぞ‼︎いくら績が良くてもっ…?」

その人はそこで言葉を止めた…

「どうしたんだ?神藤?何があった?」

急に説教が止まり、心配そうな聲をかけてくる…

「別に何もないですよ…」

「何もなくはないだろう?目が真っ赤だぞ?」

「別に真っ赤じゃないですよ…」

「噓つけ、格好をつけているつもりか知らんが、泣いていたんだろ?」

その言葉にハッとなり、涙を拭う…

「格好もつけていませんし、泣いてもいません…」

「まぁ、いいが…何があったんだ?私でよければ話してみろ?な?」

「……別に“華菜かな”には関係ないだろ…」

ゴツンッと頭を小突かれた…

「誰が“先生”のことを名前で呼んでいいと言った?」

「…すいません…“藤澤ふじさわ先生”…」

「うむ、よろしい。あと関係なくは無い。私は神藤の擔任だからな。」

「……。」

そう言うと藤澤先生は俺の隣に腰かけた…

「ほれ、私に話してみろ。」

「……例えばですけど先生…大切な人を忘れて、すぐ近くにいたにもかかわらず思い出せず、ある日突然大切な人を思い出してしまい、思い出したことを隠そうと逃げてしまったら…先生はどうします…?」

「ふむ…なかなか難しい質問だなぁ…そうだな〜…私だったら…すぐにその人に會いに言って…抱きしめて…忘れる前に戻ったかのようにその人の名前を呼ぶかな」

「………。」

「しかし、神藤にも似たようなことがあったんだな?」

「…何がです?」

「…私はな、おそらくだが…大切な“誰か”を忘れている…」

「⁉︎」

「高校3年生の時にそう思った…」

「………何故そう思ったんですか?」

「…実はな…私は高校二年生の二學期になるまで…ずっと“言葉を話さなかったんだ”」

「………。」

「話さなかったと言うより…話すことが怖かったんだ…だが、“突然話すようになった”…何故だかは分からない…そこで、何故話すようになったか考えてみた…だが、そのことを考えるたび、誰かの聲が脳裏に響いたのだ…誰だか全く分からない…そして、その聲が響いた瞬間…何故か……」

そう話している途中…突然、藤澤先生の目に涙が浮かんだ…

それに気づくと急いで涙を拭う…

そして、再び語り出す…

「…そして、気づいた…私は“誰かを忘れているのではないか”と…大切な…大切な誰かを……でも、忘れてしまった…私もいつか……神藤みたいに思い出すことができるだろうか…」

「………。」

「…はは…私が偉そうに言える事ではなかったな。」

そして、苦笑した…

目の奧には、悲しみをじる…

「……いつか…いつか出來ますよ…」

「…え?」

「…僕の言うことは信用しないほうがいいですが…でも、きっと、思い出すことができますよ…」

自分は何を言っているのか?

なぜそんなこと言った?

思い出すことは“不可能”だとは自分でも分かっているだろう?

それでも、言わずにはいられなかった…

「…はは、私が元気付けるはずが、逆に生徒に元気付けられてしまったよ…」

そして、藤澤先生……華菜は空を見上げた…

つられて見上げると、都會ゆえに満天の星空とまではいかないが、星々がポツリポツリと輝いていた…

「さてと、神藤…今日のところは見逃してやろう…その代わりだ…」

華菜は、じっと俺を見つめ…

「大切な人の所に行ってこい。」

「……それは先生としてどうなんですか?」

「いいから、今日くらい格好つけさせろ。」

「…先生はいつもクールで格好よくて魅力的ですよ。」

突然の言葉に驚いたのか、華菜は目を見開き、そして何かを察したのか、微笑んだ…

「はいはい、お世辭をどうも、ほら行ってこい。」

「はい」

新は立ち上がり走りだした…が、

途中で振り返り、足を止める

「先生」

「ん?どうした?」

「格好いいって言うのは褒め言葉にならないかもしれないですけど、華菜が魅力的なって言うのは俺が保証しますよ。」

「なっ‼︎⁉︎」

予想外のことを言われたのか、急に華菜の顔が赤く染まる…

「では、さようなら‼︎」

「って先生と呼べ‼︎それと最後まで格好つけさせろ‼︎‼︎‼︎」

* * *

華菜と別れた後、家まで一直線に走った…

そして、家の目の前に立ち、気をなだめるように深く深呼吸する…

そして、ゆっくりと扉を開けた…

その瞬間…

のあたりに何かが飛んできた…

バランスを崩し餅をついた…

飛びついてきたもの…

ゆっくりとのあたりに目をやると…

「ヒッグっ…おかえり…新…‼︎」

顔を涙でぐしょぐしょに濡らした邪神…いや、母さんだった…

そして、そっと抱きしめた…

「ヒッグっ…聞こえてたよ…‼︎思い出してぐれてありがとう…‼︎」

「…ああ、そうか…今の“母さん”には隠し事をしても全部筒抜けなのか…」

そして、母さんと言った瞬間…

わんわんと泣き出した…

地面についた両手を離し…

ゆっくりと抱きしめた…

そして、こう言った…

「ただいま…“母さん”…そして、“おかえり”…」

「うん…‼︎ただいま…‼︎」

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