《學校一のオタクは死神でした。》第69話 覚醒

*第69話 覚醒*

「プハッ!!」

海面から顔を出し、桜姬はようやく息を吸う。

新のおかげで何とかけるようになるまで魔力が補給された。だが、頭の中はぐちゃぐちゃで混していた。

の原因は主に2つ。

1つは“どうやって違う魔力であるはずの桜姬に新が魔力を補給したのかという疑問”。

もう1つは…新から“キス”をされたこと。

自分からすることはあったが、された事は無かった。自分からするとは言っても、よく良く考えてみれば新の合意もなく強引なものばかりであったが、勢い任せでアタックしないと、恥ずかしいという気持ちが勝ってしまうからというのが本音だ。

何故猛アタックをしなければならなくなったのかはまたの機會に話すとして、今はそれよりこれからどうするかだ。

桜姬自は海上へ出たが、新は未だ海の底。水中でマーメイドとクラーケンの2を1人で相手にするのは、いくら最強と謳われる死神でも困難だ。

今すぐ救出に向かいたいが、桜姬には戦うだけの魔力は殘っていない。なくとも、あと1時間以上休まないと戦闘する分の魔力は回復しないだろう。

思考を凝らしていると、突然、空中で発が起こる。

「どんどん行くよ!!☆」

「はぁあああ!!!!!!」

「それっ!!」

上空を見上げると、雷人は魔法で雷ちかずちを放ち、希里が大剣を振るい『鬼雷 斬撃砲』を放ち、邪神が邪爪じゃそう(邪神の主武であり、手のひらに裝著するグローブみたいな形だが、特徴は指先に繋がる刃のある爪のような裝甲。邪神の能力により、自在だ。)の刃をばし、ハーピーを追跡追撃する。

よくよく見ると、何発かハーピーに命中していた。命中しているのは主に雷人の放つ雷だった。

流石、“最速”を誇る雷神であると賞賛できる。

雷人こと雷神の魔法種は“神速型”。文字通り、スピードに長けた魔法であるが、弱點を挙げるならば、防力だろう。だが、スピードが早ければ、攻撃など避ければいい話で防力など関係ない。

因みに、雷人の妻である風吹の魔法種も同じく神速型であるが、空羽は“屬魔法の水”であった。

「桜姬殿!!」

と聲をかけられ振り向くと、そこには車の無いバイクの様な乗る全鎧タイツの仮面男が居た。いや、ここは、居たと言うより“痛イタ”と漢字で示すべきだろうか?絵面はかなりイタイが、これでも一応武神であることは分かっているつもりだが、何かな~っとどうしても思ってしまう。

その橫に何かを察したような風吹が浮遊しながら、「分かるよ〜、わかるよその気持ち…」とうんうんと頷きながら表で訴えているのが分かった。

とりあえず、武神の乗の後に乗せてもらい、海岸まで運んでもらうことになったが、仮〇ライダーの後に乗るのはちょっとなーっと思い、風吹に引っ張ってでもいいから運んでくださいとお願いした結果、すんなり了承され、「儂はダメなのか…」と首を傾げる仮面男ブシンが寂しそうに見えたが、軽くスルーした。

* * *

「“deathspear”」

新の背後から10本の槍が出現し、直ちに発される。

しかし、マーメイドはクラーケンを盾にし避け、新へ攻撃を仕掛ける。クラーケンには先程からちょくちょく攻撃が當たっているが、マーメイドには當たる気配がない。しかし、クラーケンもクラーケンで、攻撃が當たっている割にはダメージがっていないかのような素早いきを見せる。

(先にクラーケンを潰した方が良いか…)

クラーケンを倒せば、しは戦況が良くなるだろうが、クラーケンは化。つまり、魔力がある限り何度でも復活することが出來る。そこが厄介なのが化の特徴とも言える。

「“life eater”」

新たの前方に、円形の魔法陣が現れ、そこから20程度の“命喰ライフイーター”が召喚され姿を消す。

その直後、クラーケンの腕、、頭が微塵切りのように切り刻まれた。

ギョッとするマーメイドのがall lifeを通さずとも、見て取れる。

(今だっ…!!)

命喰に命令を出し、マーメイドへ攻撃対象を変更させる。が、突如として再びクラーケンが召喚され、それを防がれるが、またもクラーケンは切り刻まれその勢いで、マーメイドへも攻撃がる。

水中に赤黒い煙が漂い、一瞬だが、マーメイドが苦しむ表を見せる。その瞬間、新をねっとりとした罪悪が心に絡みつく。

なんでこんなことをしなくてはならないんだと。

ビートル、メデューサとの戦闘は、そんな気持ちよりも怒りと憎しみが勝り忘れてしまっていたが、突如としてマーメイドの苦悶の表で蘇らせる。

すると、マーメイドの“口角が僅かに上がった”気がした…

その瞬間、新の目の前にマーメイドが瞬間移でもしたかのように急接近する。

「っ!?」

マーメイドの握る槍が新のを襲うが、何とかそれをデスサイズでかすり傷程度まで抑えるが、マーメイドの攻撃は終わらない。既に攻撃範囲に立っている新を更に追い詰めるように連撃が雨のように降り注ぐ。

デスサイズで、それを捌こうとするが、“神速型”であるマーメイドの攻撃は全ては裁けない。徐々に新の力、そして、魔力を奪う。

直ちに命喰に命令を出し、接近したマーメイドを吹き飛ばす。そしてすかさず鎌を思いっきり引き、追撃を打ち込む。が、それはクラーケンが間にはり防がれる。

その一撃で、クラーケンは消滅するものの、再びマーメイドが咆哮し、復活させる。

海中にってから約30分強が経ち、そろそろも盡きる。

1度海上へ上がり、制を整えることを決めた新は、追加20程度の命喰を召喚し、計40の命喰で2を足止めする。

その隙に、海面へと昇る。

海面まであと10メートル

9、8、7、6、5、4…

「!?」

突然、海上にlife反応が出たかと思うと、海面に巨大な影が出現し、それはコンマ秒後に“新の目の前へと落下した”。

(“2目のクラーケン”!?どっから降ってきたんだこいつ!?)

新は直ぐに答えへ行き當たる。

セイレーンは“2で1の獣神”だ。

つまり、“マーメイドがクラーケンを出せるなら、ハーピーが出せてもおかしくはない”ということだ。

してやられた。

セイレーンは新が海中へった時點で端から海上へ上がらせる気はさらさらなかったのだ。桜姬が海中へ引き釣り込まれた理由が、自分が有利である海中へと新をい込む囮でしかなかったことを新はようやく気づいた。

空中にいるハーピーは、逃走防止のためにクラーケンを落とす撃機そのものである。

空中でき回るハーピーを倒さなければ、新が海上へ上がることの出來る可能は、皆無に等しい。

絶命の危機に曬されたというわけだ。

新は急いで鎌を構え、目の前のクラーケンを切り裂く。しかし、クラーケンは思いの外簡単に消滅した。

だが、倒した瞬間、再び海中へクラーケンが投下され、目の前に現れる。

(クソっ、キリが無い…)

「“life eater”」

命喰を追加で30召喚し、クラーケンと戦わせる。その隙に海上へ向かうが、再びクラーケンが投下…その繰り返しが続き、約50回が過ぎた頃、マーメイドを相手していた命喰が消滅してしまい、マーメイドが新への攻撃を再開する。

更に追加で“50”…

マーメイドを倒すには50でも足りないことは分かっていた…

ただ、しでも時間を稼ぎ、を手にれたかった…

だが、そこでついに、“が切れてしまった”…

(やばい…)

に殘っている魔力さえ使えなくなった新は殘っていた力だけで水を掻き、海面目指して泳ぐが、再びクラーケンが投下され、容赦なく振るわれる腕により海底へたたき落とされる。

「ガバッ…!!」

叩き落とされた衝撃で海底が割れ、その割れ目にゆっくりとが沈んでゆく。

が無くなったことにより、通常の人間とさほど変わらなくなってしまった新にとって、先程の一撃は生きているのが奇跡であるほどだった…

骨が砕かれるがそれを再生する魔力が使えない…

視界の先にクラーケンが接近する影が見えるが、戦う力も殘っていない…

完全に積んでいた…

そこでふと思い出した。

何が「手後れになる前には知らないとな?」だ…

何が「これから知ればいい」だクソッタレ…

こんなの…

死んでも死に切れねぇよ…

“幸せにしてやるって約束したのに”…

“俺がお前の兄でいてやるって約束したのに”…

“もっと強くなるって誓ったのに”…

今のままじゃあ、守れるものも守れねぇよ…

(じゃあ、諦めるのかい?)

嫌だ…諦めたくない

(でも、そのままじゃ死んじゃうんだろ?)

死なない、負けたくない…

(君が幸せにするって言った約束はどうするんだい?

君の弟はどうなるんだい?

あの誓はどうした?

君は何がしい?何をむ?)

力がしい…

(何のために?)

皆を、家族を守るだけの力がしい…

(…なら立て!!なんでそこで寢ているんだ!!)

……。

(立て!!前を見ろ!!今お前がやるべきことはなんだ!!)

……。

(何をむ!!何をし遂げたい!!何かをし遂げるならばさっさと立て!!)

新はピクリと指をかし、徐々に全に力をれ立ち上がる…

(君は何だ!!君は何者だ!!何のためにいる!!答えろ神藤新!!)

俺は…

そこでようやく思い出す…

『勘違いしてるみたいなんだよね?新は』

『死神はね、壽命を決めるだけの神様じゃないよってことだよ。』

『確かに、死神は壽命を決める神様だけどね、それだけの役割じゃないんだよね~。』

『死神は簡単に言えば、“命の管理人”なんだよ。』

新はしだけニヤリと笑った…

その瞬間、足元から“青い炎”が吹き出した…

「俺は神藤新

神名、死神

“全ての命を管理する者だ”。」

(答えは見えたか?)

「ああ、ようやく理解したよ。」

(だったら、やるべき事は分かっているな?)

「ああ…」

「俺が命の管理人であるならば…」

(君が命の管理人であるならば)

(「“自分(己)の命くらい管理出來ないはずねぇよな”!!」)

その瞬間、一瞬にして新は青い炎に包まれた。

クラーケンが新に急接近し、腕を振り上げた瞬間、青い炎が一瞬強くった瞬間、弾け飛び、新はその真の姿を現した…

髪は白く染まり、瞳は青い…

その姿は、八岐大蛇戦で見せた姿そのものであった。

新が手で自分のれると、ゆっくりとその指先をの中へと沈めてゆく。そして、の奧不覚で強くる命ライフを指先だれた…

その瞬間、が淡くった…

から腕を引き抜くと、新はゆっくりと“息を吸った”

そして、吸った海水を“肋の下に作られたエラで外に吐き出す”。

視界の隅にクラーケンが映る。

先程の弾けた炎に巻き込まれ吹き飛んだのであろう。

再びクラーケンが攻撃を仕掛ける。

新は両手を広げ海水を“まるでそこに形があるように摑み”、捻りを加えながら勢いよく投げあげる。

その瞬間、接近したクラーケンは何かに巻き込まれるかのように、が橫に吹き飛ぶ。しかし、それは何処にも衝突することはなく、新の周囲をぐるぐると高速で回り、徐々に上へ上へと昇っていく。

気がつくと、マーメイドも同じように周り、新の周囲半徑約10メートルに存在している海水全てが、円を描きながら新の周りを回っていた。

新が再び両手を広げ、海を摑むと更に捻りを加えながら投げあげる。

その瞬間、回転はいっそう早くなり、海面を突き抜け、竜巻となった。

マーメイドとクラーケンは竜巻から外に投げ出された瞬間、海中から高速を超える何かが飛び出し、クラーケンの背後に現れた後、そのを砕くかのような威力の回し蹴りが撃ち込まれ、マーメイドに衝突し、その先に飛行していたハーピーをも巻き込み吹き飛び、水という3に課せられた圧力によって固められたい壁に衝突する。

「…あら、た?」

飛行していた邪神がそう言うと、腰から“青い炎の翼”を生やした新は橫目でちらりとその方向を見ると、呆然とする邪神の姿が目に映った。それを確認すると、司會を戻し、同時に竜巻に手をれると、その竜巻は栓を抜かれたように勢いを失くし、形を崩壊させた。

新はそれを見送ると、ゆっくりと降下し、水面に足をつく。

その直後、ハーピーが新の首筋めがけて牙をむく。

だが、新はハーピーが噛みつく寸前、その頭を片手で摑み、“握り潰した”。紅い花が咲くと同時に、それはの粒子へと変わり、先程マーメイドとクラーケン、ハーピーが墜落した先へと飛んでゆく。

その先に著いたの粒子は一段と強くり、そこに海面から飛び出したマーメイドと共に一つのとなった。

そこで、ようやく新は口を開く。

「…俺が“進化”したように、君達も進化していたようだな。

とは言っても、俺は進化と言うより、覚醒に近いがな。」

ひたひたと海面を歩く、白い翼と鰭のついた尾を持つは咆哮した。

その目は赤く、を張り巡らせるように刻まれた赤黒い痣が見えた。

そして、その痣には前までは見ることの出來なかった、微かな命ライフ反応があった。

「…大丈夫。」

新はそう言うと。

「すぐに助け出すから。」

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