《學校一のオタクは死神でした。》第70話 chimera

*第70話 chimera*

「デスサイズ…」

青い炎が手のひらから吹き出し、青い炎に包まれたデスサイズが握られる。それをバトンの様に回し、最後に振り下ろすと、青い炎は掻き消えた。

マーメイドは三の槍を握り、構える。

そして、互いが意を決した瞬間。

風と共にぶつかり合う。

辺りに槍と鎌がぶつかる音が響くが、途轍もないスピードにより音がほとんど重なって聞こえる。

槍と鎌がぶつかる度に水面が波を生み出し、しずつ新とマーメイドの足元が凹み、ドーム型の空間を形していく。

互いの武を振るう速度は落ちることなく打ち込まれ、より一層、激しさを増していく。

(やっぱり、“神速型”と“神速型”じゃあ簡単には押し切れないよな…)

ガッ!!と新がセイレーンの槍を勢いよく弾き、その隙に人差し指をに突っ込み、命へとれる。

「“chimeraキメラ”」

そう呟いた瞬間、新の命が淡くる。

それが終わる頃、制を整えたマーメイドが再び槍を振るう。

ガコッ!!!!!!と鈍い音と共に、マーメイドの槍が砕け、吹き飛ぶ。それと同時に新の姿が消え、マーメイドのが水面に落ちることなく、何十、何百と、縦橫無盡に吹き飛ぶ。

最後にやっと、視覚できる速度で姿を現した新は、一瞬にして溜め込まれた鎌のしなりを利用し、オゾン層付近まで、“く”の字に曲がったマーメイドを打ち上げる。

空に打ち上がり、一瞬マーメイドのが失速し、一秒と無い時間停止した瞬間、ぶしゃっとの花が咲く。それが引き金だったかのように、落下してゆく。

落下途中、マーメイドが咆哮し、何十ものgateを開き、大量のクラーケンを召喚する。

クラーケンの落下速度が上がり続け、弾丸ののように新に降り注ぐ。

「“soulソウル eaterイーター”」

新がそう呟いた瞬間、大量の魔法陣が新周辺に出現し、中から青い炎の焔ほむらの悪魔。

“魂たましい喰らい”__“魂喰こんしょく”_が姿を現した。

“魂喰”は、命を喰らう“命喰めいしょく”とは違い、命の造形、魂の炎を喰らう焔の悪魔で、命喰より食が強く、バーサーカーの如く暴れ回る。

以前の新は魂喰をることは出來なかったが、今の新であれば十分なることが出來るであろう。

「行け」

瞬間、上空のクラーケンの目の間に魂喰が消える様に移し、クラーケンのに“喰らいつく”。クラーケンは暴れ、牙を立てる葵焔の悪魔を引き離そうとするが、圧倒的な力の差で引き離すことが出來ず、魂喰はクラーケンのを開け、に存在する“命の炎”、魂を貪り食う。

グチャグチャとを掻き回す音が數秒聞こえた後、クラーケンは靜かに消滅し、代わりに魂喰が元いた位置に飛び降りる。

そして、次の獲クラーケンに狙いをつけると、それをそれぞれが爭うように喰らう喰らう喰らう…

あっという間に食い盡くされた。

しかし、セイレーンは未だ遙か上空。

翼を翻し、落下速度を弱めそこに停滯する。

すると、セイレーンは大きく息を吸う。その際、部が風船のように膨れ上がる。

※ここで言う部はに存在する空気袋のようなセイレーンが持つ特殊な機関である。その為、バストサイズは変化はしません。いやらしい事を想像した貴方

、破廉恥極まりない!! by 神

そして、セイレーンが口を開いた瞬間、地が割れるような衝撃波と歌聲が響き渡る。

しい歌聲だが、大気が震え、付近の空間自が揺れるようだった。

その衝撃波は、セイレーンから離れるにつれ拡大、強化され、新へと襲いかかる。

すると、新はセイレーンを“真似”するかのように大きく息を吸い、“瞬間的”に全て咆哮に変えた。

キィイイインッッ!!!!と耳に響くその咆哮は衝撃波となり、セイレーンの歌聲を相殺する。

その行にギョッとするセイレーンが、ふと影の中にる。セイレーンが上を見上げると、そこには自分の上にだけバチバチと雷をチラつかせる雨雲がそあった。

その瞬間を見計らったかのように、新がパチンッッ!!と手を叩いた。瞬間、雷が轟く。セイレーンの悲鳴は新や他の神の耳にも屆くこと無く、その雷鳴によって全て掻き消された。

たった一発の雷だったとは言え、命中したセイレーンにとっては大打撃であったが、それでもかろうじて飛行するセイレーンは瞬時に再生が始まる。

セイレーンのが淡くった後、中の傷は瞬時に癒え、再び速度を上げ新へと突進する。

しかし、その突進は途中で妨げられる。腹に突き刺さる、“甲蟲”によって。

周りを見渡すとそこには無數の甲蟲が飛行し、羽音を立てていた。

煩わしそうに、セイレーンは甲蟲を引き抜くと、再び咆哮し甲蟲を弾き飛ばす。そして瞬時に速度を上げる。

すると、何処からか角笛の音が聞こえた。

「武神流ぶしんりゅうしゃじゅつ___ 畫竜點睛がりょうてんせい___」

視界の隅が強くり、セイレーンはそのに呑み込まれる。

音と共に、セイレーンのは無殘にも腹から臓やを吐き出しながら二手に散る。

二つのをつなぐのは吐き出された腸1本のみ。

すぐさま再生が始まるが、復活する前に海面に當たれば死は免れないだろう。

なぜなら、セイレーンの魔力はもうほとんど殘っていなかったからだ。

大量の化の召喚にの再生。今現在、を繋ぎ合わせることが出來るかも怪しい狀態だ。

徐々に落下速度が上がり、焦りが生じる。殘り時間はない。間に合え、間に合え、とその表から読み取れるほどであった。

しかし、セイレーンのはそのまま落下することなく新によって抱き止められる。その頃には、は繋がりかけていた。

セイレーンは悪足掻きかもしれないが、新の首筋目掛けて牙をむく。ところが、牙はすんなりと新の首筋へ刺さった。それどころか、新はセイレーンのを引き寄せ、ギュッと抱き締めた。

「ごめん…ごめん…」

くように、新がそう呟く。

「あとしだから、頑張ってくれ…」

新がそう言うと、僅かにセイレーンの口が緩んだ気がした。

「______“coercion analyze”…」

そっとその魔法を口にすると、セイレーンのが淡くり、足先からの粒子へと変わっていく。やがてはその形を維持できなくなり崩壊する。

「“operationオペレーション”!!」

そう呟くと、新の両手が淡くる。そして、空を舞うの粒子へと視線を向けると、その粒子にれる。すると、粒子に取り付く魔法が砕け破壊される。次々と処置をし全て破壊し、全ての粒子を純質へと変える。

__operation__即ち手の事だ。新は視界に映る粒子の魔力を見分け、セイレーン以外の魔法を分子単位で見つけ出し破壊オペする。それを繰り返す事で、セイレーンのからかけられた魔法を“強制的に解除する”。大掛かりだが、この方法であれば1人でも出來ると新は確信していた。

なぜなら、自分は“命の管理人”なのだから…

全て切除し終えた後、次の魔法をかける。

「compulsionコムポーション recoveryリカバリー」

の粒子となったセイレーンのを再び再生させる。

の粒子が新の視線の先に集まり渦を巻き再生が始まる。

最初はの主となる命の炎__魂__、そこから広がるようにしてが徐々に再生する。

そして、數秒足らずで完全に再生が完了し、ゆっくりと重力が生まれ、新がそのを抱きとめる。

ピクリと指先がき、瞼がく。

「…ココは?」

「大丈夫そうだな。」

良かったと、ほっと息をつく。

「?…死神様の顔が目の前にあるです…?」

「ハロー?グッドモーニング?あ、グッドイブニングか?」

「……?」

セイレーンはぺたぺたと新の顔を手のひらでれる。

すると、し首を傾げる。

「隨分とリアルな夢なのです。匂いもも死神様そっくりなのです。」

「いやいやいや、夢じゃないんですが…」

「?」

くてんっと首を傾げたまま、今度は自分の頬へと手をばし、両手で左右の頬を摘み引っ張る。

すると、目を丸くし、「痛いですぅ!?」とすぐさま手を離す。涙目になりながら頬をると、唐突にピクリと固まる。その視線は新の顔へと向けられる。

新の顔に自分の顔を近づけ、スンスンと匂いを嗅ぐ。そして再び新の顔をる。し眉を顰める。最後に新の頬を“舌で舐めた”。

新はゾワっとした覚にビクッと跳ね上がり瞬時にセイレーンの脳天に拳を叩き込む。

「あ痛っ!?!?」

「何すんじゃボケェ!!」

「本か確かめようとしたですぅ…う?この味…本當に本當に死神様なのですぅ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

「いや、なんで確かめるための最終手段が味覚なんだよ!?ってか、なんで味で分かるんだよ!?」

「…?死神様の汗はし寒気がするです。だからたまに、暑い時は気づかれないように舐めているですっ!(ボコッッ!!)あ痛ぁっ!?」

「何が気づかれないように舐めているですっだど阿呆!!ってか俺の汗って舐めると寒気するの!?」

「殺気風味です!!」

「そんな風味いらねぇよ!!」

「味覚だけで肝試し気分ですっ!!」

「素直におばけ屋敷か心霊スポットでも行けよ!!」

「無料ですっ!!」

「確かにそうでごぜえますねぇ!!その代わり俺の何かがごっそり奪われているのですが!?」

「汗のことです?」

水癥狀かっ!?え?そんなに舐めてんの!?そんな大量に!?」

「違うですよ?死神様のにタッチして手についた汗を舐めるのです!!」

「oh間接的〜、じゃねぇよ!!ってか暑いなら冷たい飲みでも飲めばいいだろ!?」

「なかなか手にらない分です!!」

「堂々と言うなよ!!素直に頼めばそのくらい作るから!!」

「お金です?」

「それは犯罪だ!!飲みだよ!!」

「やったですっ!!」

「素直に喜ぶなぁあ!!!!!!」

その夜、無人島周辺に存在する島々で魔の聲が聞こえると警察に通報が相次いだそうだ…。

そして、固くてもらかくてもなんだかんだ、新は新たであった。

* * *

「どうやら無事終わったようだな。」

「そうみたいでござる。」

カチャリと武神は自分の背丈を超える巨大な“弓”を下ろす。

弓の握りの位置の隣に設置してある裝置からカードを引き抜くと、弓はコシューッ!!と煙を吐きながらガチャガチャと形を変え、“バイク型の機”に変形した。

「それにしても、凝った作りですね…」

「うむ、魔法で再現できるか不安だったが…上手くいってよかったと言ったところかの。威力も申し分ないしの。」

「流石、師匠でござる!!尊敬するでござるっ!!」

「ハッハッハー、そう言う兜も良い時に化を當てたのぉ。おかげで、狙いやすかったわい。」

「それほどでもないでござるよっ!!」

「いや、上出來だ。よくやった。」

「褒められたでごさる〜!!」

機嫌良さそうに、仮面男はカチャリとベルトを外し、武裝を解除した。その様子を見ていた希里、ゼウス、アラクネ、ビン、桜姬の表はかなりイタイモノを見る目であった。

そんなことには気づかない仮面姿の武神は鼻歌まで歌ってしまう勢いの超ご機嫌である。

それを見ている兜も兜で、「凄いでござるっ!!」と尊敬の眼差しを向けるため、武神が余計調子に乗り高笑いする。

まったく、この仮面おっさんのどこを尊敬しているのだろうか…?

まぁ、確かに武神の弓の腕に驚かされたのは事実だ。刀一筋だと思われた武神がまさか武道系なら全てこなすことが出來ると聞いた時は本當に驚いた。

大剣しか振れない希里からしてみれば、し羨ましいと思ってしまうほどだった。

とは言え、一件落著したのは良いことだ。素直に喜びたいのだが…

「あー、うぅぅぅ〜〜っっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「………。」

姉上の現狀がカオスだった。

視線は、希里の足元…

ただ照れているだけなのだが、こんな狀態の桜姬を見たのは初めてである。顔は耳まで真っ赤、恥ずかしさのあまりに両手で表を隠し、寢転がりながら転がっている…

先程からぐるぐると海岸を転げ回ること島を“約5周”…

服や髪は砂で汚れているが、そんなのお構い無しと言った狀況である。

視線を変えて、視界右端の方を見れば…

「お疲れ様ダーリン♡」

「おつはれさはっ♪」

「ありがと☆ハニーもお疲れ☆(よしよし)」

「やったっ!!ダーリンに褒められたぁ♡♡♡」

「くーもっ!くーもっ!」

「はいはい☆そら、よしよし☆☆」

「(むっふーー♪)」

いつの間にか戻ってきた雷人が風吹と空羽の二人とイチャついていた。

「私もまだしてしいな~(チラッ)」

「も~、ハニーは甘えん坊さんだな〜☆☆(ギュッ)」

「きゃーっ♡♡♡♡」

イチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ

キャッキャウフフ…

「………。」←希里

……………………。

…………………………………………。

…………………………………………………………

…………………………………………………………。

リア充発しろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

(鬼がキレた…)←ビン

(僕だって勇気さえあれば、あんなことやこんなことぉお!!!!あぁあ!!羨ましい!!クソっ!!発しろぉお!!(ダンダンダンッッ!!←地団駄を踏む音)ぁああああ!!!!!!僕だって好きなんだよ!!“ビビちゃん”が好きなんだよぉお!!!!!!!!!!!!!!なんで毎年毎年勇気が出ないんだ!!この意気地無し!!木偶の坊!!いざ告白しようとしても話題がそれちゃうし!!そらしちゃうし!!だって恥ずかしいしフラれるの怖いんだもん!!でも好きなんだぁ!!大好きなんだ!!!世界一しているんだ!!今年こそは!!今年こそは!!!!)

「……………oh..…chaos…」←ビン

「ハッハッハー、みんな元気がいいね〜。」←ゼウス

「私の出番がなかったです…」←アラクネ

「私なんて置いてきぼりだよ…」←邪神

「……あんたらもか。」←ビン

海上も島上もどんちゃん騒ぎ。されど、これこそ神々の日常。

斯くして、セイレーンとの一戦は夜明けと共に終わりを告げたのであった。

    人が読んでいる<學校一のオタクは死神でした。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください