《學校一のオタクは死神でした。》第71話 時神
*第71話 時神*
「久しぶりです、ゼウス様!!」
「うん。久しぶりだね、セイレーンちゃん。無事で何よりだよ。」
「はいです!!このとおり、傷一つないです!!」
「なら良かった。」
くるくると回るエメラルドの髪の、セイレーンを見ながらゼウスは微笑する。
目の前にいるセイレーンの背丈は希里よりし小さいくらいで、年は中學生くらいにしか見えない。しかし、これでも自分達神々と同様、見た目以上の歳をとっている。大きな変化はないが、稀に見るの変化は別だ。現に、セイレーンは1、長年の時を過ごし、知らぬ間にが進化したようだ。
ふと、戦闘時は2いたことを思い出し分裂出來るのか聞いてみたが、「分裂ってなんです?味しいですか!!?」と、返答した。人格の方はどうなっているのかと聞くと、「人格ってなにです?味しいものなのですか!!?」とトンチンカンな返答を貰ったので追求するのはやめた。何故なら基本的にセイレーンは“馬鹿”だからだ。
とは言え、後で會議はしなければならないだろう。何しろ、セイレーンは被害者であり、その加害者の姿を目視している可能があるからだ。
「ところで死神様はどこに行ったのです?もう一度、きちんとお禮を言いたいです!!」
「あぁ…その事なんだが…。」
ゼウスはし引きつったような笑を見せる。
「どうしたです?」
「いや、用事があるって言ってどこかに飛んでいっちゃったんだよね〜…」
「そうですか…」
すると、ししょんぼりした表を見せる。
「心配しなくていいよ。今日の晝には帰ってくるって言っていたから。その間、しばらくみんなと遊んでおいで。」
「はいですっ!!遊ぶでーすっ!!行ってくるです〜っ!!」
「行ってらっしゃい。」
“作り”笑顔でセイレーンを見送ると、はぁー、とため息をつき、頭を抱える。
「新がここにいない理由が、“本の発売日”だからとは言えないよね〜…」
しだけ新の趣味の過剰さを不安に思うゼウスであった。
だが、趣味を持つこと自は悪いことではない。たとえ、それが週刊誌や世間的に悪評をされているものだとしてもだ…
やはりし不安だ。
週刊誌が筆者の意図的に総表現され工作されたものだとしても、不安になる。自分も筆を認めるであるがやはり世間はそんなに甘くないことは知っている。
今までそんなこと思っていなかった人でも、雑誌などでめちゃくちゃな文章を堂々とそんな事が書かれていたとしたら、たとえそんなこと思っていなかったとしても、それが世間の意見だと思い込んでしまう。
うーんとしだけ唸るが、世間の意見をねじ曲げることなど無理に等しい。的の中心をた意見ではないが、外してはいないから尚更だ。
「お飲みはいかがですか?」
「ん?あぁ、頂くよぉおおおお!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
ゼウスは絶した。
理由は至極簡単。傍らにいたが原因である。
「うふふ…“妻”に緒で達の観察とはいいご分ですね?」
「い、いつの間にこっちの世界に來たんだね“ヘラさん”!?」
「それはです。」
「そ、そうかい。」
ビクビクと震えながらニッコリと笑う妻ヘラの顔を見る。
「ところで何を考えていたんですか?また浮気の事ですか?次は誰ですか?何人いるんですか?子供はもういるんですか?私はもう用済みですか?もうしてはくれないんですか?私はこんなにもしているのになんで気づいてくれないんですか?」
ヘラは問い詰めながら、そのの無い瞳でゼウスを見つめながら、懐からナイフを取り出した。
ひぃいいい!!とびながらゼウスが否定する。
「いやいやいやいやいやいや!!!!今でも私は君をしているし、浮気なんかしてないよ!!!?考えすぎだよ!?」
「では何を考えていたんですか?妻である私にも言えないことですか?それともやっぱり…(ナイフがチラつく)」
「言えます!!言えます、はい!!じ、実は新の趣味についてね?」
「なんだ、死神さんの事ですか。安心しました。」
「え?続き聞いてくれないの?」
「安心しましたからもういいです。」
「そ、そうかい?」
「ええ(にっこり)」
あはは…と乾いた笑いをしながら、ゼウスは今でも思う。新の趣味であるオタ活の中から言葉を借りるならば、そう…
ヤンデレ怖っ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
ゼウスの豆腐メンタルが崩壊寸前であった。
* * *
時は數時間前、場所は“アメリカ”、ロサンゼルスのとある酒場。
木製の建築にオレンジのランプが天井から吊られ、カウンターには映畫で見るような酒樽まで置いてある。その酒樽とは明らかに値段が違うようなワイン瓶が混じり、懐に余裕があると踏んでいた酔った男は、にそれを振舞い、會計時にキモを冷やす姿を見るのはこの1時間あまりで何回見ただろうか。空のは暗いが仕事を終えた者達が騒ぎ、酒に酔いしれていた。
その中でも、カウンター席に座るは極めて輝いていた。派手なドレスや豪華な寶石が散りばめられたアクセサリーをにつけている訳では無い。服裝はthe OLといったスーツ姿であるが、白のに相応しい白銀の長い髪はその整った顔をより一層際立てていた。
「よお、姉ちゃん。俺と一緒に飲まねぇか?」
ふとそのに話しかけたのは金髪の筋質の男だった。その顔はとても真面目そうとは言い難く、ベロベロに酔っていた。
「斷る。人を待っているの。」
「連れねぇ事言うなよ。さっきからずっと一人で飲んでるじゃねぇか。」
「もうすぐ來るわ。あと、“10秒”ほどでね。」
「あ?」
「9、8、7、…」
「ハッハッハ、ナイスジョークだ。そんな事より俺と遊ぼうぜ。な?」
「4、3、…」
すると、男はふと足音が聞こえてくることに気がついた。ゆっくりと振り返ると、そこに1人の年が立っていた。すると、男はその年の服裝を見ると吹き出して笑った。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!!なんだそのふざけた服裝は!!宴會の練習でもしてたのかよお前ww」
「遅れてすまない(スルー)」
「いいえ、構わないわ。私が呼びつけたんだし(スルー)」
「ひゃひゃひゃ、へ?」
「お前、酒なんか飲んでんのか?酔っ払うなよ?」
「いいの別に。それより、そこのデカブツどっかにやって。」
「デカブツって俺のことかぁ!?」
「お前以外誰がいる、帰れ。(真顔)」
「なんだとこのクソチビ!!」
男は顔を真っ赤にし、額に管を浮かばせながら年の倉を摑んだ。
すると、年は摑んできた男の腕にれると、クイッと軽く捻る。それと同時に男のも腕と同じ方向に回り、一瞬宙に浮いたかと思えば、年が浮いた男の腹を容赦なく蹴り飛ばす。男は肺の中の空気を吐き出しながら店の扉へ一直線に吹き飛んだ。
運良く店にろうとした男が扉を開けたおかげで、吹き飛ばされた男は外へ放り出された。々悲鳴が聞こえたが、吹き飛ばされた男は白目を向いて気絶していた。
「で?突然呼び出した上に、久しぶりに顔を見せた理由はなんだ?“時姉ときねぇ”。」
新がの隣に座りなが尋ねた。
新は親父に本の発売日だからと噓をつき、アメリカへと來ていた。空を飛んだため、面倒だから武裝は解かず、店までってきたらこの有様だ。男のしチビと言う発言にイラつき吹き飛ばしてしまったが、加減をしたので問題は無いだろう。
そんな噓をついてまで隠して來た理由はこれだ。
“実の姉”に呼ばれたからである。
彼の名前は神藤 時子ときこ、“時神”である。新の姉にあたる存在であり、唯一のの繋がった姉弟である。神の雙子とは、人間的に言えば伝子の相似である。新と時子の伝子は時間が離れているとはいえ、全くと言っていいほど同じだった。試しにDNA鑑定してみた結果縁だと判斷された程にだ。そのせいか、覚醒した新の髪のは時子の髪のそれと良く似たと髪質だった。
「久しぶりにその呼び方されたわ。」
「當たり前だろ?もう“20年”も會ってないんだからな。」
新がメニューを見ながらそう言うと、時姉はしだけワインを口に含む。
「そう、“この世界は”もう20年経っていたのね。」
「ん?あぁ、なるほど…」
違和のある言葉に新はすぐに納得した。
「で、時姉は“いつの時間”の時姉なんだ?」
そう尋ねると、時姉は今の時間は何時か新に聞いた。面倒くさそうに新はスマホを出して今の時間と月、年を見せた。
「…今から“23年と5ヶ月前”。」
「なるほどね…」
時神は文字通り時間を司る神。
自分の好きな時間を覗くことができ、その時間の中にることもできる。タイムスリップすることが出來るのである。
「で?23年と5ヶ月前から遠路はるばる何か用ですか?お姉ぇ様?あ、すいませんハンバーガーとポテト貰えます?」
注文を店員に伝えながら時姉に問う。店員から酒はいるかと聞かれたが、未年と一言言うとしだけ納得したような顔をされ調理し始めた。
「私、“死ぬ”らしいの。」
「ブフッ!?」
口に含もうとした水を吐き出しそうになり、噎せた。
「はぁ!?何時!?」
「16年と8ヶ月前。」
「それって…時姉が“結婚”してからすぐあとじゃねぇか!?」
「そうね。」
と一言だけ答えるとワインを口に含む。
「まぁでも俺たちは死んでも死なないけどな…」
「違う、私は死ぬ。」
時姉はそれを一言で否定した。
「は?だって時姉は俺達と同じ神だろ?」
「そうね………“16年前”までは…」
「………どういう事だ。」
額から冷や汗を1つ垂らす。
時姉は遠いものを見るような目で言った。
まるで過ぎたことだとでも言うかのように…
「私、結婚する前に“人間に転生”したの。」
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