《學校一のオタクは死神でした。》第72話 新學期
*第72話 新學期*
長かった夏休みも終わり、今日から新學期が始まる。新學期が始まるとは言っても、これでもかと日差しが強い。
一學園は日本一を誇るだけあって學園の設備は充実している。室は何処も彼処もエアコンが起し、熱中癥予防のため各階東西に2代ずつ無料ウォータークーラーが設置されている。流石に廊下まではエアコンは設置されてはいないが、それでも充分すぎるほど涼しい。涼しさのためか、晝食時には熱いが購買でよく売れていたりもする。
しかしながら、便利なには必ずしも利點だけある訳では無い。例えばそう…
「(チーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン)」
死神こと神藤新は現在進行形で機に突っ伏していた。べつに、課題が終わらず絶的な一夜を過ごした訳でも、最終日だからと言ってパーリーナイトした訳でも無い。便利なものにはやはり弱點がある。まさに新はそれに直面している最中であった。
「あはは、新大丈夫…?」
と苦笑いをしながら桜姬が聲をかける。
「“が痛い”…マジで、“寒い”…」
新はいわゆる“クーラ病”に極端になりやすい質であったのだ。
現に新の格好は真夏だというのに厚著し、膝の上には湯たんぽとひざ掛けが乗っている。その姿に若干桜姬は引きながらドンマイと聲をかける。
そんな中、新しい悩みの種が投下される。
「ぷぅ〜っ!!」
「いや、本當にスマンって…」
「だって〜」
新の機に顎を乗せながらへばりつく會長さんこと西園寺百合華が頬を膨らます。
「結構大変だったんだぞ〜…?死にかけたし…」
「そ、それは困るけど…」
「まぁ、こんなクソ暑い時期にまさかプールが壊れるとも思わなかったけど…」
先日のことである。
新がセイレーン討伐のため無人島にいた頃、會員さんは新に大量のメッセージを送っていたのだ。その要件は、『水著を買ったから遊びに行こう』という容だったのだが、流石に無人島に攜帯を持っていくという発想が頭になかった新は結果的にその全てを未読スルーすることになってしまったのだ。しかも、セイレーン討伐後もしばらく無人島に滯在することになり、約一週間あまりの時間、會員さんを放置することになってしまったのだ。
帰宅後、會員さんからの大量のメッセージに驚かされたが、それはもう後の祭りといったところで、試しにプールならどうだとった結果、行くと一言返事が返ってきたのだが、まさかのプールは急修理のため休業。
その後、あれこれしているに夏休みが終わり、現在に至る。
「せっかくお弁當まで作ったのに…」
「ちゃんと食べただろ?味かったって。」
「私は新とプールで食べたかったの!!」
「お、おう…さようですか…」
正直言って、新は段々會員さんの相手が面倒くさくなって來ている。何故なら、この後余計面倒なことが待っているからだ。
ちょうどその時、立てたフラグを回収するかのようにチャイムが鳴る。それと同時に我らの擔任こと藤澤華菜が教室にってくる。生徒達はチャイムがなり終わる前には自分の席へと戻っていた。
「諸君、おはよう。今日から新學期が始まる訳だが、充実した夏休みを風紀をすような真似で埋めてないな?例えば、夜更かしや多量の睡眠などで生活リズムが狂ったりな?神藤。」
「いや、起きてますって…」
「なら、なぜ顔を伏せている。ちゃんと顔を上げて私を見ろ。」
「………。」
「さっさとせんか!!」
仕方なくゆっくりと顔を上げ、閉じていた“瞼”を開ける。
「おい、神藤。ここはコスプレ會場でも校則が緩いダメ校でもないぞ。」
「知ってますけど…」
「じゃあ、なんだその瞳めは?“カラコン”か?」
華菜は新の目を指さしながらそう言った。やはりそういうリアクションになりますよねと新は苦笑いしながら心の中でボヤく。
新の瞳のはサファイアのように青く染まっている。
以前は黒だったが、現在は青。理由を知らない者からしてみれば、カラコンをつけているようにしか思えないだろう。
隣の席に座る會長さんでさえビックリ仰天と表で読み取れるほど驚いている。
教室はしざわめき、桜姬にヘルプと視線を送るが、ファイトっ!!と返された。裏切り者めっ!!
「いやー、話せば長くなるんですけど…」
「簡潔に答えろ。」
「ええっと…その…」
「とりあえず、そのカラコンを外せ。」
「いや、カラコンは付けてなくて…」
「じゃあ、何故青い?さっさと外せ。」
「カラコンじゃなくて…」
「ああ、焦れったい!!」
華菜がカツカツと教卓から新の席へと近づき、新の瞳を覗き込む。すると、華菜はすっとんきょんな聲を上げる。
「あれ?」
「あはは…」
「これ、カラコンじゃないのか?」
「ええっと、実は…」
「実は?」
「実は、実家に帰ったら何らかの影響で変してしまいまして…醫者に見せたら環境の変化で素が薄くなってしまったらしく…」
「は、はぁ?」
「あ、これ診察書です。はい。」
「………確かに、そう書いてあるな。」
「腕の良い醫者ですから間違いないかと…」
「手したわけでは…「してません。」…ふむ…。」
華菜がマジマジと渡された診察書を眺めながら、眉を顰める。數十秒後、はぁー、とため息をついた後
「念の為、ご両親に連絡するが問題ないな?」
「あ、今頃は校長先生と話をしている頃です、はい。」
「……想定済みか。」
「想定済みです。」
「「……………………。」」
しばらく沈黙が続き、アナウンスで新の呼び出しがかかる。ついでに擔任である華菜も呼び出された。アナウンスの聲の主は校長であった。
「はぁ~…皆、私が戻ってくるまで自習して待て。騒いだら許さんぞ。」
「はーい。」
「お前は行くんだよ。」
「………はーい…。」
* * *
數十分後、新は釈放された。
警察にお世話になっていた訳では無いのだが、そんな気分だった。校長と華菜に瞳を何十分と覗き込まれ、親父はそれをニヤニヤしながら見していた。ちなみに、校長と華菜に気づかれないよう親父に殺気をぶつけるとガタッと席が揺れ、華菜と校長にどうしたのか聲をかけられたが、「嫌なんでもないです。はい。」とし慌てたように返答していた。その間、真顔を貫いていたが心の中では大笑いだった。
今でも思い出しただけでもニヤニヤしてしまう。
最終的な校長のコメントは…
『いやー、人間の伝子って難しいねぇ~?』
さいですか。私は理選択だからさっぱりだよと小太りな校長がほのぼの言うのでそういうことになった。結果、新はハーフであるため仕方が無いとの事だった。
まぁ、実際、學校に提出した診察書は真っ赤な偽である。偽とは言っても、実際に使われている診察書の臺紙にアラクネがそれっぽく書いたものだ。アラクネは一応醫師免許を持ち合わせているので大差はない。腕が良いというのも確かなる事実である。
親父ともあらかじめ相談してあったから幾分か楽だった。
実際に新に起こったことはこうだ。
それは文字通り、覚醒と言ってもいいだろう。現段階では、止まるはずの長が再びき出した狀態で、これから數年間、徐々に長することが嵐による検査で判明した。
最も大きな変化は“all life”が使えなくなったことだろう。しかし、今現在新自は命の反応を知することが出來ている。理由は簡単。目がall lifeと“一化”してしまったからだ。つまるところ、all lifeは使えないが、使わなくとも強制的にその能力が発揮できるということだが、そのall lifeは完全なものではなかった。命の知は出來るものの、を読み取ることは出來ない。
その程度のことであれば好都合だと、新はしだけ嬉しく思ったのだが、桜姬や母さん、希里までもが、その結果に殘念そうな顔をしていた。本人曰く、“鈍い”ままが続くと思うとクラクラするだそうだ。
よく分からんが、自分はそれほど鈍くはないと思っている。そうコメントした結果、ため息をつかれた。
なんでだろう?
更には、武裝すると必ず髪は白く染まった時と同じ狀態になった。
幸いの救いは、武裝を解いた狀態では髪のは黒に戻ることだろう。
「神藤。」
「はい?」
唐突に華菜に話しかけられ一瞬ビクッと驚く。まさか口に出たりはしてないよな?と平常心を煽りながら振り向く。
「その…さっきは疑って悪かった。すまん。」
突然の謝罪。
なんで誤ってんの?と首を傾げるが、よくよく見ると華菜の顔がし赤いようにじた。
「……なんで照れてるんです?」
「べ、別に照れてなどいない!!!」
「…照れる要素が見つからないんですが。」
「だから照れてない!!た、ただ、早とちりしたのが気恥しくてだな…」
「なるほど、恥ずかしがり屋だと。」
「そこまでは言ってない!!」
「へー。」
「なんだその目は!!」
「いえ、可らしい一面もあるんだなと。」
「なっ!?」
「どうしました?」
「………褒めても何も出んぞ。」
「いや、率直な想を述べただけですって。」
「………。」
顔を真っ赤にした華菜が數秒間直する。
「授業に戻らなくていいんですかね?華菜先生?」
「だから先生をつけ…てるな。うん。ならば宜しい!!」
何故か満足そうな顔でうんうんと頷く。
そんなに先生と呼ばれたかったのだろうか?先生とは先生と呼ばれたいものなのだろうか?よくわからん。
だが、しだけ楽しいとも思えた。同時に……。
いや、考えるのはやめよう。
しだけ嫌な予がしたからだ。
「そういえば、神藤。今年の終わり頃に留學生が來るんだが、ホストファミリーになってみないか?」
「…………何故です?」
「夏休みの間、神藤と中谷でイタリア留學行ってただろ?その時にホストファミリーの家にしばらくの間滯在していただろ?そのホストファミリーが今年の終わり頃にうちの學校に留學生として來るんだが…どうだろう?ホストファミリーやってみないか?」
「……………………………………………………。」
「ん?なんだそんな気まずそうな顔は?」
「イエナンデモナイデス。」
「言葉が片言だぞ?まさか留學先で何かしでかしたのか?」
「それは無いです(キッパリ)」
「お、おぅ…即答。」
即答だとも。何かしでかした訳では無い。“何かしでかされた”からだ。
しの間、思い出に浸ってみる。
初日 拉致られる
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2日目 軍隊の訓練監督になる
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3日目 ゴリゴリマッチョの兵隊達と百キロオーバーの裝備で約5時間の鬼ごっこ
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4日目 鬼ごっこ
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5日目 鬼ごっこ
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6日目 鬼ごっこ
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7日目 鬼ごっこ
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8日目 鬼ごっこ
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9日目 鬼ごっこ
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10日目 鬼ごっこandメデューサ戦
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11日目 何故かフランス観andビンと出會う
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12日目 鬼ごっこ
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13日目 鬼ごっこ
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14日目 鬼ごっこ
↓↓↓
15日目 帰國
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八割型鬼ごっこでした(´>ω∂`)
「…そのじから察するに、何も伝えられてないんですか?」
「は?何のことだ?」
「やっぱりか…」
“彼奴エリザベス”…上手いこと隠蔽してやがる。
何故だろうか、頭の中で(´>ω∂`)☆テヘペロとやりましたと言わんばかりの奴エリザベスの顔が浮かんだ。
「何がだ?」
「ナンデモナイデス。」
「だから、何故片言なんだ?」
そんなやり取りをしながら教室へ戻り、華菜が最後に「まぁ、考えておいてくれ。」と新に言うと再び授業が始まった。
* * *
「さて、新學期早々だが明日は課題テストだ。気を抜かずに勉學に勵むように。」
教室に戻った後、殘り15分も無い殘りの授業時間を華菜が手早く連絡事項を済ませる。
華菜は教師となって1年めであるが、覚えが早かったようでもう既にプロの風格だった。
「課題テストが終われば、1ヶ月後には君達らも楽しみにしているであろう“修學旅行”だ。
その為にも今回の課題テストは気張るように。赤點者は修學旅行宿泊先で夜間に補修が行われる。そうなりたくなければ気張っていけ。」
丁度話し終わったタイミングでチャイムが鳴る。時間ぴったり。華菜の「解散」と言う聲で授業が終了し、放課となる。
そういえば、忘れていた。
二學期にってから約1ヶ月後に修學旅行があったのだ。確か行き先は…
「“京都”…っ!!!!」
會長さんがやる気満々だ…見るからに楽しそうだ。もし、會長さんが七つの寶玉を集めて願いを葉える龍を召喚し、宇宙人とドッカンドッカン戦って元気の塊を投げつける系主人公ならば、「オラわくわくすっぞ!!」とでも言いそうな勢いだ。
「え?だって京都だよ?最高に楽しみに決まってるじゃん!!」
「いや~…京都ってそんな騒ぐ所か?」
渋そうな顔をしながら新が機にへばりつく。
「京都嫌いなの…?」
「いや、嫌いじゃないけど…茶は味いし。」
「ふーん?じゃあ、なんでそんな乗り気じゃないの?」
「うーん。だって“寺”ばっかじゃね?」
「京都の人達に失禮だよ!!じゃあ何処に行きたいの!?」
「“秋葉原メッカ”」
「即答!?」
「うーん…まぁ、良いけど。丁度“用事”があったところだし。」
「用事?」
とツッコミ疲れた會長さんがクテンと首を傾げる。
「ん?あぁ、親戚が京都に住んでてな。丁度會いに行こうかと思ってたんだ。」
「ま、まさか…の子…?」
恐る恐る會長さんが尋ねる。
「1人はな?」
「1人!?え?1人?もう1人居るの?」
「あぁ、用があるのは“2人”。」
「因みにそれって…」
「お察しの通り、2人共人間じゃないよ。」
「やっぱり…」
「まぁ、自由行の時間にでも會いに行くか。」
「私もついて行っても…?」
と會長さんが尋ねる。
ふむ、と新がしの間考えると…
「………1人は良いよ。」
「もう1人は?」
「“危険”だからやめとけ。」
「危険!?」
「あぁ。“付喪つくも”の方は大丈夫だが…“加蓮かれん”はマジでやめとけ。下手したら“死ぬ”。」
「死ぬ!?」
新は頭をカリカリと掻きながら、ため息混じりに言った。
「付喪は文字通り“付喪神”だが…
加蓮は“破壊神”だからな。」
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