《學校一のオタクは死神でした。》第77話 湯上りと怪談
*第77話 湯上りと怪談*
風呂から上がった後、どうやら、華菜も無事だったようでバレてはいないらしい。そのかわり、新の財布から2000円が旅発って行ったが、もう過ぎたことである。
風呂から出たあとは、旅館から支給されている浴にを包む。
後から、新が個人的に調べた話によると、汚れていた男湯湯の暖簾を新人の仲居が綺麗な暖簾に変える際、片方づつ変えればいいものの、両方一片に汚れた暖簾を外した為、どちらが、男湯湯かが分からなくなり、當てずっぽうで決めたところ、案の定、逆になってしまった暖簾の狀態の時に華菜が浴。
そのすぐあとに異変に気づいた他の仲居が中を確認せず、慌ててれ替えたため、結果的に、華菜が男湯にってしまうことになったらしい。
部屋に戻ってからは、畳に敷かれた布団に即座に潛り込み、耳栓をしてから就寢する。
真面目な一星學園に通う生徒といえど、所詮は高校生。夜通し友と話しに花を咲かせる者も多數いると聞く。
しかしながら、新はそんな事よりも湯冷めし、冷房病にかかる事のみが不安である。その為、安眠を貪るべく、さっさと眠ってしまう。
ゴリラとイヤミが相部屋のメンバーの1人が乗り気でないのでつまらなさそうな表をしていたが、正直言ってどうでもいい。
早々と眠ってしまった新に続き、その約3時間に、彼らも布団に潛り、寢息を立て始める。
2人が寢付いてから約1時間後。
ふと、新は眠りから覚まされる。
何者かが忍び寄っていたからだ。
眠りに就いているとはいえ、いつ何時、獣神が現れてもいいように、眠は常に淺く警戒を怠らない。
瞼を僅かに開き、命を確認する。
それから、ギィ〜……とドアが開きその人が部屋へと侵する。
「ふむ…皆眠っているようだな…」
華菜だった。
眠っていることを確認していることから察するに、見回りだろう。
しホッとしたが、高校生にもなって見回りなんかあるのかと驚く。しかも、今は午前1時を過ぎている。教師も大変だなと々呆れる。
しかし、男子生徒の寢る部屋に、である華菜が見回りするというのはどうなのだろうか…?
ゆっくり足音が去っていく…………と思いきや、その足音は近づいてきた。
1歩、また、1歩。抜き足差し足忍び足と徐々に近づく。そして、彼の足音は新の布団の隣で靜止した。
「…………神藤。起きているか…?」
耳元でそう聲をかけられた。
何の用だ…?何故こんな時間に…?
このまま寢たフリをしてやり過ごすか?
そう考えるが、華菜は新の布団を譲り起こそうとする。
仕方なく、をゆっくりと起こし、今起きましたを醸し出すため、目をってみたりする。
「……?華菜先生ぃ…?どうしたんですぅかぁ?」
欠を1つ。寢てましたアピールは完璧だ。
「……………しいいか?」
「……………はい?」
キョトンとした顔を見せた後、言われるがまま、部屋の外へ出され廊下を進む。
え?マジでなんの用?どこ行くん?
やがて、華菜がとある部屋の前で立ち止まると、ドアを開け中にる。
「………れ。」
「…あ、はい。」
そのまま、部屋の中にる。
確かここは、そう。華菜が寢泊まりしているという部屋だったはず。旅のしおりに書いてあった。
電気はついておらず、窓から月が差すのみ。
部屋の場所が違うといえども、やはり部屋のセットは全く同じ。唯一違う點を挙げるならば、壁に飾られた掛け軸であろうか。新の寢ていた部屋は鶏だったのに対し、ここの部屋は孔雀である。
あと、機の上に缶ビールが3本と、ツマミが乗っているくらいだ。
「…………浴時は助かった。謝する。」
「は?あー、はい。そりゃどうも。」
なんだ、その事かとしホッとする。
てっきりお説教なんかされるかと思った。何にも悪いことした覚えないけど。………………して無いよね?してないよな?
新の頭の中で小さい新達が會議した後、何もしてないという事になった。
「………………………見たよな。」
「?はい?何を?」
「………私の“”…見た、よな。」
「………………………ミテナイデス。」
「今の間はなんだ。何故カタコトなんだ。」
「ソンナコトナイヨ」
明らかに怪しい返答にズバズバと容赦なく切り込んでいく。切り込み隊長ですか貴方は。
暫くした後、観念したように言った。
「……………………………………………見ました。」
「………………………………そうか。」
ええ、見ましたとも。そりゃもうバチッチリと。
いくら湯気や濁り湯だったとはいえあの距離だったら下は隠れても上は見えてしまうわけで……
「…すんません。」
とりあえずを7の字にに曲げて謝っておく。
「………別に、お前が悪い訳では無いだろう。顔を上げろ。」
そう言われて新は7の字から1の字にを戻す。
………………途中、はらりと、何かが落ちた。
一瞬にしてが直する。
なぜ直したかというと、そのはらりと落ちたのせいである。
その落ちた場所は、華菜の足元。さらに言えば、その落ちたものは浴である。
つまり、その2つ指す意味は……………
「……………1度も2度も変わらんだろ。」
「………………………。」
ゆっくりと顔を上げる。
華菜は下著のみを著用した姿となっていた。
その瞬間、彼が何をしようとしているのかが分かった。
震えた聲で、華菜は続けた。
「………育教師だからな。自慢できるようなではないことはわかっている。
……これでも腹筋が割れないようにだとか結構注意しているつもりだ。」
らかさの無い己のをりながら華菜は言う。
「………タダで黙っていろなどとは言わない。今晩だけ好きにしてくれて構わない。だから……黙っ」
そう言いかけた瞬間。
パチンっ!!と華菜の頬に1発のビンタがとぶ。
威力は弱めたはずだが、その勢いで華菜は敷かれていた布団に倒れ込む。
目を丸くしながら、叩かれた場所を自分の手でれる。
「そんな言葉…人に易易というんじゃねぇ。」
新の意図せずとも聲には熱がこもった。
ハッとなり聲のトーンを弱め、口を開く。
「言ったらダメなんだよ。
の子だろ?簡単にを見せてもダメだ。
本當に好きな人以外、本當にしている人以外、は見せるな。
まぁ、2度も見た俺が言うのも説得力の無い話だが…
そんな事をされても、俺は喜ばないし、むしろ怒る。
自分を大切にしない奴は特にな。クソくらえだ。
本當はしたくなかったんだろ?見せたくもなかったんだろ?
だったら尚更だ。
俺以外の男子生徒にそんなことしてみろ。大半は野獣の如く飛びつくぞ。
好きでも無い人とそういう事をするのは嫌だし、怖いだろ?
その怖さは、華菜が一番よく分かっているはずなんだ。
だから、二度とこんな真似をするな。」
そう言うと、床に落ちた浴を拾い上げ、華菜の肩に掛ける。
それから、華菜と同じ目線でしゃがみ、頭をわしゃわしゃとでる。
「大丈夫…他人に言ったりなんかしねぇよ。」
俯きながら無言で泣き続ける華菜を泣き止むまでで続けた。
* * *
華菜が泣き止んでから、その後すぐに部屋を出たが、時刻はまもなく午前2時になろうとしていた。
廊下を歩いて帰ろうにも、自販売機なんかに行こうとした先生なんかに見つからったら、それこそ大慘事である。そもそも、ここまで來るのによく見つからなかったものだとしみじみ思う。
ホッとため息をついた後。
「“shadow”」
と呟くと、新のは影の中へゆっくりと落ちていった。
完全に影にった直後、『キャーー!!!!!!!!!!!!!!』と大きな悲鳴が外から聞こえた。
あ、やべ、と思いつつし離れた位置、床に出るのもなんなので天井からひょっこりと顔を出す。
すると、案の定妖怪でも見たかのような真っ青な顔をした“生徒指導員のマスキュラー”が腰を抜かしていた。見ると、手には財布らしきものを持っており、ほろ酔い狀態であった。
………………………………………………
………………………………………………………………
………………………………………………………………。
ん?ちょっと待て。影の中から腕を出し、目をってからもう一度よく見る。
やはりそこには“生徒指導員のマスキュラー”、目をっている間に駆けつけた教員がいた。
うん。ちょっと待て。
ってことは?今さっき悲鳴をあげたのは…………
「だ、大丈夫ですか。増區ますく先生!?」
「い、今影の中に人が!!!!」
「…影の中に人がいるのは普通ですよ。酔っているんですか?」
「違う!!影の中に人が落ちてったんだ!!」
「はぁ?馬鹿な事言ってないで寢ますよほら。」
そこにいるのは、やはり、腰を抜かした“生徒指導員の増區先生(初めて知った…)と眼鏡の先生”、そして、それぞれの部屋から扉からひょっこりと顔を出した他の先生方である。
うん。勘違いではなさそうだ。うん。
つまるところ、さっきの悲鳴は…やはり……いやいや、すげぇ高い聲だったし。しかも、相手はあのマスキュラーだぞ?そんな訳…
頭をブンブンと振り、もう一度顔を元に戻すと。
「あ。」←新
「あ。」←増區先生
「どうしたんでs………」←徐々にの気の引く眼鏡
その他の先生も目線の先に気づいたようで。
新は全員と目線が合ってしまう。
…………………………………………
………………………………………………………
……………………………………………………………。
「キャーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」←増區先生
「本當にお前かーーーーーーーーーーーーい!!!!!!」
「「「「「ぎゃーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」」」」」←先生一同
その後、慌てて仲居さん達が駆けつけてきて、それに気づいた新も慌てて頭をひっこみ、いそいそと自分の部屋の布団の中から出し、即座に寢たフリを再開した。
翌日、先生達の間では【影に沈む人間】と、【「やっぱりお前かーい」とぶ宙吊りの生首】の怪談が広まり、その後、一星學園に伝わる怪談伝説の1つとなるのは、また別の話である。
因みにだが、その晩、獣神が現れることはなかった…
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