《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》3-022.賭場
其処は濛々と紫の煙が立ち込めていた。
カラカラと、何か堅いものがテーブルを転がる。ぺチリとカードをテーブルに叩きつける音に続いてザラザラとコインをかき集める音がする。テーブルのあちこちから、ちきしょうめ、という怒號が響く。
充満するアルコール臭が鼻につく。アルバから近寄らないほうがいい、と警告をけた賭場カジノだ。
ヒロは店を一通り見渡した。店は広く、緑のラシャが敷かれたテーブルがいくつもある。どのテーブルもギャンブルに興じる客たちで賑わい、誰もヒロ達を気に止める者はいない。リムはヒロの腕をしっかと持ってを固くしている
ヒロはどこか腰を下ろす場所がないか探した。テーブルは賭け事に興じる男達で賑わっていてとても座れる余裕はなかったが、カウンターにいくつか席が空いているのを見つけた。
ヒロはリムを連れ立ってカウンターに行った。カウンターのマスターはヒロ達が席につくと、何も言わずに、銅のコップを二つおき、白葡萄酒を注いだ。
カウンターのマスターは気な雰囲気を漂わせた年配の小男だった。七十歳くらいだろうか。顔の中心に陣取る大きな鉤鼻が印象的だ。マスターは虛ろな目でヒロを睨ねめ付ける。
代金を請求されていると気が付いたヒロは、ナップサックを肩から下ろして、隣の空いた席の上に置いて、中にあるお金がった革袋を探った。この葡萄酒二杯の値段が分からない。後々でめないようにと、銀貨を一枚だした。アルバは銀貨これ一枚で、水筒に並々と葡萄酒を注いでくれた。流石にこれで足りないということはないだろう。
マスターは無言でヒロに背を向けると、直ぐに取って返し、カウンターに銅貨を二枚置いた。釣りらしい。
ヒロは釣りの銅貨を革袋に仕舞うと、白葡萄酒のったコップを手に取った。不思議とコップはキンキンに冷えていた。冷蔵庫などありそうには見えないのにな、と不思議に思ったヒロだったが、その視線はコップの中のに吸い込まれていった。
ねっとりとした黃金の表面に、黒い粒が浮いている。エマこちらに來る道中で痛い目にあった胡椒だ。ヒロは、胡椒を飲まないように、舐めるように口にしてみたり、啜ったりしてみたが、上手くいかない。我慢してしずつ飲んだ。葡萄酒が冷えていたのだけが救いだった。
「店主。宿を探しているんだが、ここで泊めて貰うことはできないかな?」
舌をピリピリさせる甘い白葡萄酒を半分程嘗めたところでヒロはマスターに訊ねる。マスターはじろりと鬱な眼差しをヒロに向けると何も言わずに首を橫に振った。
(ここも駄目か……)
適當な所で切り上げて店を出ようとしたヒロの背中で、怒號が飛んだ。
「テメェ、あんまり嘗めた真似してると、分かってんだろうな!」
「あぁ、ふざけてんのはテメェだろうが!」
後ろのテーブルで、男が二人言い爭いをしている。賭けのトラブルか何かのようだ。互いに椅子から立ち上がり、今にも毆り掛からんばかりだ。
怒聲に驚いて、そちらを振り向いたヒロだったが、関わり合いにはならないとばかりに肩を竦めて、カウンターに向き直る。
そのヒロの目の前で、マスターがゆるりと右手を上げ、口論している男達を指さした。ヒロがもう一度振り向くと、男達は二人とも膝から崩れ落ち、元の椅子に座ったままぐったりとしてかなくなった。
ヒロは目を丸くしたが、男達の周りは気にも止めない。先程の爭いなど無かったかのように、また博打を再開する。
「変な恰好の兄ちゃん。見るのは始めてか。ここの名さね」
隣の中年男が聲をかける。ヒロの答えを待たず、男は続けた。
「ここの店主アラミドは、元魔法使いでな。トラブルになりそうになると、ああやって眠らしちまうのさ。眠っている間は、丸にされようが、何されても文句言えねぇのがこの賭場カジノの仕來しきたりだ。兄ちゃんも喧嘩して眠らされねぇよう気をつけな」
(だから、あんな荒くれ者を相手にしても店主マスターができるのか……)
最初、マスターを見たときは、こんな貧相な格でどうやって賭場を仕切っているのか不思議でならなかった。剣を使うようには見えないし、ましてや、斧や棒などを振り回せそうにない。しかし魔法で眠らせてしまうことができるのなら、筋は必要ない。ヒロは得心した。
また別の場所で歓聲が鳴った。そちらを見ると両手を上げてガッツポーズを取っている若い男と、忌々しげにカードをテーブルに投げ捨てる髭面の中年男の姿が見えた。大勝負の決著がついたらしい。勝負のり行きを見守っていたギャラリーは勝った男に群がり何やら話し掛けている。勝った金で驕れとでも言っているのだろうか。騒がしいところだ。ヒロはもう一杯だけ、今度は口直しにエールを飲んでから店を出ようと思った。
「店主マスター、エールを一杯」
そういってヒロは代金を払おうと隣の席に置いたナップサックに手をばしたが、其の手は虛しく空を切った。ある筈の場所にナップサックはなかった。
【書籍化+コミカライズ】悪虐聖女ですが、愛する旦那さまのお役に立ちたいです。(とはいえ、嫌われているのですが)※完結済み
★書籍化&コミカライズします★ 目が覚めると、記憶がありませんでした。 どうやら私は『稀代の聖女』で、かなりの力があったものの、いまは封じられている様子。ですが、そんなことはどうでもよく……。 「……私の旦那さま、格好良すぎるのでは……!?」 一目惚れしてしまった旦那さまが素晴らしすぎて、他の全てが些事なのです!! とはいえ記憶を失くす前の私は、最強聖女の力を悪用し、殘虐なことをして來た悪人の様子。 天才魔術師オズヴァルトさまは、『私を唯一殺せる』お目付け役として、仕方なく結婚して下さったんだとか。 聖女としての神力は使えなくなり、周りは私を憎む人ばかり。何より、新婚の旦那さまには嫌われていますが……。 (悪妻上等。記憶を失くしてしまったことは、隠し通すといたしましょう) 悪逆聖女だった自分の悪行の償いとして、少しでも愛しの旦那さまのお役に立ちたいと思います。 「オズヴァルトさまのお役に立てたら、私とデートして下さいますか!?」 「ふん。本當に出來るものならば、手を繋いでデートでもなんでもしてやる。…………分かったから離れろ、抱きつくな!!」 ……でも、封じられたはずの神力が、なぜか使えてしまう気がするのですが……? ★『推し(夫)が生きてるだけで空気が美味しいワンコ系殘念聖女』と、『悪女の妻に塩対応だが、いつのまにか不可抗力で絆される天才魔術師な夫』の、想いが強すぎる新婚ラブコメです。
8 96【書籍化/コミカライズ決定】婚約破棄された無表情令嬢が幸せになるまで〜勤務先の天然たらし騎士団長様がとろっとろに甘やかして溺愛してくるのですが!?〜
★書籍化★コミカライズ★決定しました! ありがとうございます! 「セリス、お前との婚約を破棄したい。その冷たい目に耐えられないんだ」 『絶対記憶能力』を持つセリスは昔から表情が乏しいせいで、美しいアイスブルーの瞳は冷たく見られがちだった。 そんな伯爵令嬢セリス・シュトラールは、ある日婚約者のギルバートに婚約の破棄を告げられる。挙句、義妹のアーチェスを新たな婚約者として迎え入れるという。 その結果、體裁が悪いからとセリスは実家の伯爵家を追い出され、第四騎士団──通稱『騎士団の墓場』の寄宿舎で下働きをすることになった。 第四騎士団は他の騎士団で問題を起こしたものの集まりで、その中でも騎士団長ジェド・ジルベスターは『冷酷殘忍』だと有名らしいのだが。 「私は自分の目で見たものしか信じませんわ」 ──セリスは偏見を持たない女性だった。 だというのに、ギルバートの思惑により、セリスは悪い噂を流されてしまう。しかし騎士団長のジェドも『自分の目で見たものしか信じない質』らしく……? そんな二人が惹かれ合うのは必然で、ジェドが天然たらしと世話好きを発動して、セリスを貓可愛がりするのが日常化し──。 「照れてるのか? 可愛い奴」「!?」 「ほら、あーんしてやるから口開けな」「……っ!?」 団員ともすぐに打ち明け、楽しい日々を過ごすセリス。時折記憶力が良過ぎることを指摘されながらも、數少ない特技だとあっけらかんに言うが、それは類稀なる才能だった。 一方で婚約破棄をしたギルバートのアーチェスへの態度は、どんどん冷たくなっていき……? 無表情だが心優しいセリスを、天然たらしの世話好きの騎士団長──ジェドがとろとろと甘やかしていく溺愛の物語である。 ◇◇◇ 短編は日間総合ランキング1位 連載版は日間総合ランキング3位 ありがとうございます! 短編版は六話の途中辺りまでになりますが、それまでも加筆がありますので、良ければ冒頭からお読みください。 ※爵位に関して作品獨自のものがあります。ご都合主義もありますのでゆるい気持ちでご覧ください。 ザマァありますが、基本は甘々だったりほのぼのです。 ★レーベル様や発売日に関しては開示許可がで次第ご報告させていただきます。
8 62マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
お遊びバンドがあっという間にメジャーデビュー、あれよあれよでトップアーティストの仲間入りを果たしてしまう。 主人公の入月勇志(イリヅキ ユウシ)は、そんな彗星の如く現れたバンド、Godly Place(ガッドリープレイス)のボーカル兼、ギターだが、もっぱら趣味はゲームやアニメで、平穏な生活を失いたくないがために顔出しはNGで突き通していく。 ボーカルの桐島歩美(キリシマアユミ)を始め、たくさんの女の子たちとドキドキワクワクなラブコメディになる予定。
8 140現代帰ったらヒーロー社會になってた
主人公 須崎真斗(すざきまさと)が異世界に飛ばされ魔王を倒して現代に戻ってくるとそこはヒーロー社會と化した地球だった! 戸惑いながらもヒーローやって色々する物語バトル有りチート有り多分ハーレム有りハチャメチャ生活!
8 52同志スターリンは美少女です!?
歴史にその悪名を知らしめるスターリンは美少女になりました。その中身は日本の元社會人ですが、何の因果か女の子スターリンの中身になりました。 なので、第二の祖國、ソビエト社會主義共和國連邦。通稱USSRを戦禍から守っていこうと思います。 やることの多いソ連ですが、まずは國內のゴミ掃除から始めましょう。 いや、割とマジで國內の腐敗がヤバイのです。本當に、頭を抱えるくらいに真剣に。 あと、スターリンの著しいイメージ崩壊があります。 *意味不明な謎技術も登場します(戦力には関係ありませんが、ある意味チートかも)
8 165クラス転移、間違えました。 - カードバトルで魔王退治!? -
カードバトル。それは、少年少女が駆け抜ける"夢の軌跡"。 季節は春。5月1日の暖かな時期。 修學旅行のスクールバスに乗る2年4組の生徒達は、謎のドラゴンと遭遇する。バスごと生徒らを連れ去るドラゴン。彼が向かった先は、とある美しい宮殿だった。 なんと! 2年4組の生徒は、契約により異世界に召喚されていた。そして、彼ら彼女らの知らぬ間に、魔王討伐の誓いを結ばれていたのだ。しかも話によると、その契約は手違いで、2年4組でなく、2年1組を召喚するはずだったとか言って、ふざけるなと激怒!! 権力も金もコネも力も無い、ただの高校生。そんな2年4組達が、魔王を倒す手段は『カードゲーム』での真剣勝負!? 超個性的なクラスメイト達が送る、全く新しいクラス転移ファンタジー! 果たして2年4組の生徒達は、無事に元の世界に帰還することができるのか!! ※第14話、デュエル回です。
8 118