《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》8-054.晝下がりのギルドは冒険者で賑わう

――虹の街ウオバル。

人口一萬五千人を數えるフォス王國有數の都市である。アラニー河を背に高い城壁に囲まれたの中心に、この地の領主であり、現フォス王の弟であるウォーデン卿の居城がある。ウオバルは國境にほど近い位置にありながら、王國有數の魔法騎士大學で教を努めるマスタークラスの騎士団と高位の魔師達を中心とする守備隊を有し、その守りは堅固であった。

また、付近の杜にはモンスターが出沒し、彼らを狩ることで生計を立てようと、腕に覚えのある冒険者達も多數集まり、隣國からも一目置かれる存在であった。

要するに、ウオバルに手出しをする無謀な企てを試みる者は皆無であり、王國の中でも治安のよい都市の一つである。

そのウオバルの冒険者ギルドに魔法使いの男と盜賊の、そして霊見習いのが足を踏みれた。

男の名はカカミ・ヒロ。二十六歳。この剣と魔法が支配する異世界に転移した日本人だ。彼は元の世界に帰る為の手掛かりを探しにウオバルに來ていた。

ヒロの右隣にいる年の頃十歳くらいに見える小さなはリム。霊見習いだ。エンジのローブをに纏い、金のくりくりとした可らしい瞳を輝かせている。

反対の左側に控えるのはソラリス。盜賊だ。巨人族のを引く彼の背丈はヒロより頭一つ大きい。茶のマントを羽織っているが、その隙間から良く発達した筋が見え隠れする。盜賊というよりは戦士といった方がぴったりくるのだが、盜賊になる前は剣士をやっていたという。

ヒロはこの世界に転移してから、ウオバルに來る道中で、リムとソラリスを仲間にした。ソラリスの勧めで何かと便宜が図られる冒険者の仮登録したのだが、本登録されるためには、冒険者ギルドの指定する承認クエストをこなさなければならない。ヒロはその為に、ここウオバルの冒険者ギルドに來ていた。

冒険者ギルドの広いフロアには數多くの冒険者が集まっていた。

「こんにちは。ヒロさん」

白のカッターシャツに黒のサスペンダーでズボンを吊った男が爽やかな笑顔を見せる。ぱっと見はどこかのバーのカウンターに立っていそうな男だ。男の名はロンボク。これでも魔法使いである。

ヒロは昨日、ソラリスの紹介でこの男ロンボクと知り合いになったばかりなのだが、この都市ウオバルや冒険者について、々教えて貰っていた。

「やぁ、ロンボク」

ヒロが挨拶を返して、ロンボクしか座っていないテーブルに近づいた。

「お急ぎで無ければ、座りませんか。付は混雑してますし、私も退屈してたんですよ」

ロンボクが話し相手が出來た嬉しさなのか、ヒロ達に席を勧める。ヒロがフロアの一角にある付カウンターをみると、十人近くが並んでいた。ギルドの職員がてんてこ舞いになって、立ち働いている様子が見えた。空くまでし待つことになりそうだ。

ヒロとリムが座ったのに続いて、ソラリスも座ろうとしたが、椅子を引いたところで、思い出したようにロンボクに顔を向けた。

「ロンボク、お前、まだ會えてないのか?」

「えぇ、今朝から待ちっぱなしですよ。言伝ことづてでは朝一で來ることになっていたのですけどね」

「そいつは愁傷様だな」

ソラリスの軽口にロンボクは苦笑いで返した。ソラリスは昔、剣士をやっていた時分にロンボクと同じパーティにいたという。しばらく二人は馴染みの間柄らしく軽口を叩き合っていた。

「ヒロさん、今日は承認クエストを?」

ソラリスとの會話が一區切りついたタイミングで、ロンボクがヒロに水を向ける。昨日、ヒロが冒険者の仮登録をした際、ロンボクも付き添っていた。その時のやりとりを覚えていたのだ。

「うん。付ラルルに言われてたからね。もっと早く來る積もりだったんだが、ちょっとあってね。今になってしまったよ」

ヒロの返答に、ソラリスが付け加えた。

「ロンボク、昨日、深淵の杜で魔をやっつけたのさ」

「え、深淵の杜に行ったのですか」

ロンボクが驚きの聲を上げる。

「最近、見たことない魔が出るって噂になってますよ。ベテランのパーティでも手傷を負うくらい強いって聞いてます。魔それには遭わなかったのですか」

「あぁ、やっぱりそうなのか。あたいも見たことない気味悪い魔だったよ。結構手強い奴だったぜ。でも、最後はこのヒロが魔法で止めを刺したんだ。あたいの見たとおり、ヒロは魔法が使えるんだ」

「いや、ソラリス。魔法は爺さんから貰ったこの指のおさ」

ヒロは両手の人差し指に填めた金銀の指でた。謎の魔法使いの老人、モルディアスから手渡された指だ。これをにつけることで、ヒロは魔法を使えるようになったのだ。

「なるほど、魔法裝マジックアイテムですか。確かにそれで魔法を使えるようになる人もなくありません。何にせよ、おめでとうごさいます」

「ありがとう」

ロンボクはヒロの禮をけ取ると付を振り返って列が空いた事を確認した。

「ヒロさん、付が空いたようです。しお付き合いさせていただいてもいいですか? 好い加減、席に座っているのも、が生えちゃいそうでしてね……」

腰を浮かしたヒロに、ロンボクが首と肩を回しながらボヤく。

「もちろん、構わないよ。ロンボク」

ヒロは笑ってけた。

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