《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》8-057.今は葡萄酒で勘弁しといてやるよ
ヒロ達三人は、ウオバルの街をぶらりと散策した。特に目的がある訳ではなかったが、まだ來たばかりで良く知らない街の様子を知っておきたかった。賑やかな人通り、立ち並ぶ商店。大學に向かう學生らしき若者に冒険者達。活気のある街だ。統治が上手くいっているのだろう。皆の顔が生き生きとしている。
ヒロはウオバルこのまちを拠點に生活するのも悪くないと思いながら、夕方、宿に戻った。
宿といっても半ば下宿のようなもので、長期宿泊が可能だ。四階建ての四階部分を改裝した六畳くらいの部屋が二つ。ヒロ達は何件か當たった末、半年以上の長期滯在を條件に、格安な此処を常宿とすることにしたのだ。
宿の主人はウオバルの大學の學生相手に長くやっているらしく、毎日のように新しい客を迎えるよりは、気心の知れた相手に長く泊まって貰ったほうが良いと言っていた。その方が手間が掛からないのだそうだ。その代わり、食事は一切なし。食べたければ、自前で食材を用意し、自分達で調理しなければならない。炊事場は貸してくれる。食材は、虹の広場の朝市で、調達できるから特に不便はない。但し、主食のパンだけは、パン焼き用の竃が、ウォーデン卿の居城にしかないため、そこまで足を運ばなければならない。もっとも、その日に食べる程度の分量であれば朝市で手できるから、わざわざ本人が出向いてパンを焼くケースはない。
部屋は、相部屋を想定していたらしく、ツインのベッドに小さめのテーブルと椅子が二つ。ベッドといっても木枠の中に干し藁を敷き詰めてシーツを掛けたものだし、椅子は四つ足のそれではなく、長持ちを正方形にカットした程度のものだ。
ヒロは二つある部屋の、一つは自分で使い、もう一つはソラリスとリムにあてがった。しかし、ソラリスとリムが自分達の部屋に居るのは寢るときだけで、それまではヒロの部屋にり浸っていた。ソラリスとリムは、ヒロの部屋に自分達の部屋の椅子をちゃっかり持ち込んでいる。
――ぱくぱく、もぐもぐ。
リムは味しそうに団子キビエを食べていた。ヒロがリムと初めて出會った落としでリムに食べさせた団子だ。テーブルに山と積まれているため、リムの姿が隠れてしまっている。
ヒロは、ウオバルの街中を見回るついでに、夕食の代わりにと、天で団子キビエを大量に買い込んできたのだ。ソラリスによると、団子キビエは、普段から食べられている一般的な食べであるが、攜帯食としても優れていることから、長旅の道中ではほぼ必須のアイテムとなっているという。
ヒロが団子キビエを買い込んだ理由はもう一つある。ヒロがモルディアスから魔法を習う代償として要求された、リムがモルディアスの世話をする件だ。この問題は結局、毎日団子キビエをリムにお・供・え・することで解決した。
リムは遠慮なく、団子キビエを口一杯に頬張っている。その顔は當然の権利だと主張していた。
ヒロも山から団子キビエ一つ摘んだ。鼻に僅かな草の香りが抜けていくがそれだけだ。相変わらず味がない。この世界の住民の味覚がよく分からない。味のない団子を食べるかと思えば、胡椒りの激辛ワインや蜂でもっているかのような激甘ワインを平気で飲んでいる。丁度良い塩梅がないのだ。もし、この団子に餡子や黃きなこが掛かっていたら、リムはどんな顔をするのだろうとヒロは思った。
「ヒロ、エマに行くのは明日かい?」
ソラリスが聲を掛けた。ヒロが正式に冒険者になるための配達クエストのことだ。その顔には自分もついていくと書いてあったが、ヒロ達は、そのエマから此処ウオバルに著たのだ。エマへの道は分かっている。來た道を逆に辿ればよいだけだ。ヒロは案は要らないとばかり手を振った。
「うん。俺だけで行けると思う。君ソラリスの怪我もあるしね。どうかしたのか?」
ヒロはエマへ配達して帰ってくるだけなら、三人でいくこともないと考えていた。ソラリスはかすり傷といっていたが、無理することもないだろう。ソラリスとリムに余計な負擔を掛けさせたくないという気持ちもあった。
「また黒曜犬に出喰わしたらお前だけで捌けるのか? モンスターは黒曜犬だけじゃないんだよ。それに……」
ソラリスは、テーブルに手を突くと、ずいと顔をヒロに近づけてニヤリと笑った。テーブルの山から団子キビエが一つ転がり落ちたがリムが落ち著いてキャッチすると自分の口に案する。
「冒険者ならそれなりの裝備が要る。あたいを連れてけば、カタッダのとこで安く手にるぜ」
ソラリスの言うことは尤もだった。指の力で魔法が使えるようになったとはいえ、それで全て解決すると考えるのは傲慢だ。異世界人であるヒロには、まだまだ知らない危険がいくらでも転がっていると考えるのが妥當にも思えた。確かに戦力は多いほうがいい。それが土地勘のある冒険者なら尚更だ。
「いいのか? 報酬なんて知れてるぞ」
「後で熨斗つけて返して貰うさ」
「そいつは怖いな」
「へへっ。今は葡萄酒こいつで勘弁しといてやるよ」
ソラリスは、テーブルの水筒から、銅のコップに葡萄酒を並々と注ぐとグイと煽った。空になったコップに再び葡萄酒を満たすとヒロに渡す。ヒロは黃金ののったップをけ取ると、ほんの一口だけ含んだ。胡椒はっていないが凄く甘い。やはり蜂か何かを足しているとしか思えない。
「なぁ、ソラリス。一昨日、此処の酒場で俺の事を冒険者に向いていると言ってたよな。本當に俺が冒険者になれると思うかい?」
ヒロはコップをテーブルに置くと、右手を額にやった。昨日の出來事を思い出す。とりあえずの便宜のために冒険者登録をしたはいいが、まだクエストをこなした訳ではない。今のヒロは公式には、仮の冒険者に過ぎない。たとえ、手紙をエマに屆けるクエストを無事に達して正式な冒険者になれたとしても、今回のような簡単なクエストがいつもあるとは限らない。
そもそも配達なんて、その難易度からみて報酬など多寡が知れている筈だ。とても配達クエストだけで生活できるとはヒロには思えなかった。もしも、冒険者で生計を立てるのなら、いつかはモンスター狩りなどの高難易度のクエストをしなくちゃいけなくなるのは避けられない。昨日、モルディアスの所に現れた魔にしても、モルディアスを含めた四人が力を合わせてようやく倒したのだ。あんなのを狩っていかないといけないと考えただけで気が滅る。ヒロは自らの不安を正直に口にした。
「……なれるね。お前ヒロが魔法を使いこなせるようになったらね。あの爺さんモルディアスがどこまでアテになるか知らねぇけどよ。あたいは魔法を使えないから、ヒロが魔法使いになれるかどうか分からないよ。でもよ、ちゃんと習うなら大學に行った方がいいんじゃないのかい?」
「それも考えたさ。だが、元引人の紹介狀と願書がいるんだろう。願書は誰か代理人を雇うとしてもだ、元引人がそう簡単に見つかるとは思えない。ソラリス、君が俺の元引人になってくれるのかい?」
ヒロはソラリスに質問を投げ返した。昨日、冒険者ギルドで知り合ったロンボクに教えて貰ったところによると、ウオバルの大學に學するためには、元保証の為に元引人の紹介狀と、學願書を用意しなければならない。このうち願書については専門の代理人マネージャーに依頼することで手當はつくが、紹介狀はそう簡単に貰えるものではない。自分を良く知る人でなければならないからだ。
「……殘念だけど、無理だね」
ソラリスはし考えてから答えた。
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