《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》10-076.ヒロは何の本を読みたいんだい

たっぷり一時間程の時間をかけて、図書館を一巡りしたヒロとセインの二人はり口のホールに戻ってきた。

「これで一巡りっと。ヒロは何の本を読みたいんだい?」

図書館の説明を一通り終えたセインは、好奇のまなざしを向けた。

「俺はこの國の事は殆ど知らないんだ。歴史か地理か百科事典。そうだな地理の本にしよう」

「じゃあこっち」

セインは、ヒロの手を取って、先程案したホール奧の廊下に連れて行く。通路にって直ぐ右手の小部屋で、セインは足を止める。

「この部屋の本棚にあるのは全部地理の本だよ。大陸でここまで揃えてるのはウオバルここだけだよ」

セインは自慢気に鼻を鳴らす。二十畳程の小部屋には、四列に書架が部屋の端から端まで並べられ、隙間無く本が並べられている。本は黒か赤の革の裝丁で、たまに茶や青のものが混じっている。表紙にも背表紙にもタイトルは書かれておらず、どういう本なのかはいちいち中を開いて確認しなければならない。

 ヒロは読み書きを覚える事と、実用を兼ねてまず地理の本を教科書にしようと考えていた。地理の本なら地図と山や川。街の名前が記されている筈。それに文字數も多くはないだろう。読み書きも手始めとしては都合がよいだろうと考えていた。

だが、表紙になにも書いてないのには、ちょっと面食らった。中を見るしかないか、となるべく薄手の本を探して手に取った。

――チャリ。

金屬音。よく見ると本の表紙の角に鉄製のチェーンがついている。チェーンは書架と繋がっていた。

「これは?」

ヒロはセインにチェーンを見せる。

「鎖チェーンのこと? 勿論盜まれないようにするためだよ。ここの小部屋の本には皆ついているんだ。原本も沢山あるからね。此処で読む分には構わないけど、持ち出し止だよ」

盜難防止のチェーンなのか。確かに防止にはなるだろうが、持ち出しできないとは。ヒロは元の世界との違いに戸った。

「じゃあ、この図書館の本は全部持ち出し止なのかい? 貸し出しはしてない?」

「ううん。補償金を払えば貸し出ししてくれるのもあるよ。そっちにいって見る?」

「頼む」

セインはくるりと振り返り、ヒロの手を引くとホールに戻った。ホールの片隅の小さな書架の前にヒロを連れて行く。

「ここにある本は皆寫本で、貸し出ししてるんだ」

「さっき案してくれたっけ?」

ヒロは、セインの案で此処をスルーされたことを指摘した。別に咎める積もりはなかったが、プログラマーのなのだろうか、抜・け・には敏に反応してしまう。

「だって、ここの本は子供向けの絵本ばっかりだから、案は要らないと思ったんだ。ヒロ、もしかして絵本を読むの?」

セインは不思議そうにヒロを見つめた。セインから見ればヒロは立派な大人だ。大人が絵本を借りる理由があるとすれば、息子など自分の近な子供に読み聞かせてあげるくらいだ。だが、流石のセインも其処までは考えが及ばなかったらしい。

「俺はこの國の事も知らないが、文字も読めないんだ。此処の本で、読み書きの勉強も一緒にしたいと思ってる。地理の本が借りれなくても読み書きくらいなら絵本でも出來るしね。お勧めはあるかな。何でもいいよ」

「そうなんだ。じゃあ、これはどう」

セインは一冊の青い表紙の本を取り出しヒロに渡す。相変わらずタイトルは書かれていない。一、セインは何でタイトルを見分けているのだろう。ヒロは不思議に思いながらもページを繰った。

「この本は伝説のレーベ王の語だよ。この國の人なら皆、一度は読んだことがあるはずだよ。僕が初めて読んだ本なんだ。何度も読んだよ」

セインが付け加える。それは、五十頁くらいの本だった。羊皮紙の角がり切れ、何度も読まれた後がある。全ての頁には見開きで絵が描かれ、大きな書で文字が書かれている。文字數もそう多くない。最初の手習いとしては手頃かもしれない。

「うん。最初はこれでいいかもな。ここの本は借りれるんだよな。どうすればいい?」

り口の付に言えばいいよ。さっき、ペルージャに會ったでしょ」

「ペルージャ? 付の娘このことかい」

「うん。あそこだよ」

セインが指さした先は、り口脇のカウンターだった。図書館にる時に問い合わせた窓口と続きになっている。図書館の総合案と貸出管理の両方をしているということか。

「じゃあ、これを借りることにするよ」

ヒロはセインと付に向かった。

◇◇◇

「おかえりなさい。いかがでしたか?」

ヒロの顔をみるなり、ペルージャがにこりとした。

「ありがとう。セインこのこの案でよく分かったよ。すごい蔵書量だね」

栄です。我が図書館は領主様ウォーデンも力をれておりまして、毎日のように蔵書が増えております。実は本日午後からも荷する蔵書がありまして……」

「それで閉館するのか」

「そうです」

ペルージャはそう言った後、セインに微笑みを投げかけた。

「セイン、案ありがとう。もうじき閉館だから、今日の仕事は此処まで。午後は自由にしていいわ」

「ほんと? じゃあ、父ちゃんに會ってきていい」

「そうね。今からなら、まだ間に合うんじゃないかしら。貴方のお父さんはいつも最後まで店を出してるから」

「うん。じゃあヒロ。僕はこれでバイバイするけど、また來てね。いつも此処にいるから、今度來たときは聲をかけてくれると嬉しいな」

「あぁ、案してくれて助かったよ。気をつけて行ってきな」

「じゃあね。さよならレデゥーサ、ヒロ」

セインは手を上げて挨拶すると、元気よく外に飛び出していった。

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