《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》11-079.神がいるといないとでは生存率が全然違ってきますからね

「ロンボク!」

「こんにちは。ここ、よいですか?」

「もちろん」

聲の主はロンボクだった。ヒロに斷ってから対面に座る。

「ヒロさん、冒険者認定クエストはもうされましたか」

「お様で。昨日終えたばかりさ。一応正式登録して貰えたよ」

「それは良かった。これでヒロさんも晴れて僕達と同じ冒険者ですね」

差し出したロンボクの手をヒロが握り返す。ヒロはし大袈裟だと思ったが、これが此処の流儀なのかもしれない。

「ところでロンボク、この間待ち合わせていた仲間はいいのか? てっきりクエストをしに遠くに行ったとばかり思っていたよ」

ヒロは散々待ち惚けを喰らったロンボクがやっとお目當ての仲間と合流できたのに、まだ此処にいることを不思議に思った。

「えぇ、そちらの用事は終わりましたから、心配なく」

そう答えたロンボクはヒロが一人であることに気づいた。

「おや、今日はソラリスも、小さなお嬢さんリムも居ませんね。お一人ですか?」

「ソラリス達は他の用事で出ている。俺は朝から図書館でね。ここで待ち合わせすることになってるんだ」

「そうですか。ところでヒロさん、聞きましたか?」

ロンボクがを乗り出す。ヒロにはもう何の話題か察しがついていた。

「スティール・メイデンのことかい?」

「その通り。ご存じでしたか」

「知ってるも何も、昨日、クエストの帰りにそのスティール・メイデンに會ってたんだ。彼らがやられる所は見てないけどね。黒の不可ブラックアンタッチャブルとやらの姿はちらりとみたんだが」

「では、彼らが今どうなっているかも?」

「それは知らない。昨日酒場で、彼らと黒の不可ブラックアンタッチャブルがバトルしたのを見た子がいてね。その話を聞いただけだよ。確か、戦闘が終わってから神を呼んだとかいっていたが」

「えぇ。彼らはリーファ神殿に運び込まれ、治癒魔法をけました。幸い命は取り留めたのですが、ダメージが酷くて、もう冒険者として復帰できないのではないかと言われています」

この男ロンボク、相変わらず耳が早い。ここの冒険者は皆そうなのだろうか。一、何処から報を集めているのだろう。報に敏なことも冒険者に必要な資質なのかもしれないなとヒロは思った。

「そんなに重傷なのか。俺が聞いた話だと、外傷をけたのは剣士と狩人の二人で、魔法使いは特に攻撃をけてなかったそうだが」

ヒロは昨晩、酒場で聞いた話を思い返した。

「魔法使い……ロッケンの事ですね。実は彼のダメージが一番大きいのです。オドが盡きかけていたそうです」

「オド?」

「あぁ、済みません。『のマナ』と言った方がいいですかね。魔法使いは、大気のマナと區別して『オド』と呼んだりもするんです」

そういえば、モル爺さんもそんなことを言ってたっけ。モルディアスから指を貰ったときの記憶がヒロの頭を掠めた。

「俺は、魔法使いで冒険者登録をしてはいるが、魔法については殆ど何も知らないんだ。オドが盡きると命に関わるから普通は魔法には使わないと聞いているが違うのかい?」

ヒロはモルディアスから教えて貰ったことを口にした。

「仰るとおりです。迷宮ダンジョン探索といった特殊な例を除いて、魔法発に自分のオドを使う事はあり得ない。魔力を殆ど消費しない極々小規模の魔法ならオドを使っても大丈夫ですけど、中級魔法以上にオドを使ったら只ではすみません」

「俺が聞いた話だと、魔法弾マジック・ミサイルと魔法多弾頭弾ノードーンとかいうのを使ったらしいが」

「魔法多弾頭弾ノードーンは上級魔法です。大量の魔力を消費しますが、そもそもあれを使える魔法使いからしてそうはいません」

「じゃあ、彼ロッケンは、その魔力を大量消費する上級魔法を自分のオドで発したということかい?」

「分かりません。普通は絶対にそんなことはしません。でも、まさか……」

ロンボクの顔がみるみる曇っていく。ロキ、と小さく呟きながら、ロンボクは眉間に皺を寄せて苦しそうな表を見せた。その姿はまるでれられたくない過去と闘っているかのようにも見えた。

「……怖いものだね。でも、黒の不可ブラックアンタッチャブルって一何者なんだ?」

ヒロはそんなロンボクを見て慌てて話題を変えた。昨日の酒場でも話題になった事をロンボクにぶつける。報通らしいロンボクなら何か知っているかもしれない。そうヒロは思った。

「申し訳ない。僕も知らないんです」

ロンボクはし肩を竦めて、ヒロに詫びた。

「そうか。ロンボク、昨日の酒場で聞かれたときも誰も知らなかったんだ」

「そうでしょうね。黒の不可ブラックアンタッチャブルの正を知る者は誰もいない。ただ、リーファ神殿の高位の神ハイプリーストではないかとはいわれていますね」

「高位の神ハイプリースト?」

「ヒロさん、貴方が信じる神が何かは存じませんけど、大陸の殆どの民はリーファ神を信仰しています。大陸各地の大都市にはリーファ神を奉る神殿があり、それらは神が守っています」

「神? 神殿は都市の守備隊が護ってくれるんじゃないのか?」

いえ、とロンボクは、ヒロの疑問に首を振った。

「リーファ神殿は租稅を免除されている代わりに、國の保護がけられません。寄進をけ獨自の領地を持つ彼らは自分の安全は自分で護らなくてはならないのですよ」

――僧兵。

ヒロは高校時代に習ったことを思い起こした。確か中世の日本でも荘園を持つ有力な寺社には財産を護るための僧兵がいた。

「神を守るために魔法を使いますけど、専ら防魔法が主で攻撃魔法は殆ど使いません。やはり神ですから相手を無闇に殺めることは、憚られるでしょう」

「だから防魔法を?」

「ええ。リーファの神達は防に特化した魔法研究を続けていて、その果は代々け継がれてきました。中には彼らしか知らない奧義もあると聞きます」

「もしかして彼らはこの都市ウオバルと敵対しているのかい?」

「いいえ。両者の関係は良好です。ただ稅を納めないというだけですよ。彼らはウオバル大學とも関係が深く、力のある高位の神ハイプリーストは、特別講師として招かれたりもしています」

「そうなのか」

「ある意味、彼らは自立しているのですよ。フォス王國の法に縛られない代わりに保護もけない。もっとも彼らの規とて、王國法を踏襲してますからね。住人にとってはあまり変わりませんよ」

「神かれらは冒険者にはならないのかい? それほど防魔法に優れているのなら、どこのパーティもしがりそうに思うが」

「仰るとおりです。元々神職は回復魔法ヒーリングが使えることが前提ですしね。聖騎士も回復魔法を使えなくもないのですけど、度も力も神には及びません。神になるにはリーファ神殿の大司教の認可が要りますから、それほど沢山居る訳ではありません。実際、神を仲間にしたがっているパーティは多いですよ。中には毎日銀貨一枚の高額報酬で神を募集しているパーティもあるくらいですから」

「ふ~ん。貴重な存在なんだな。俺はどのパーティにも一人は神がいるものとばかり思っていたよ」

ヒロの言葉にロンボクは、まさかと苦笑する。

「ヒロさん、貴方がどこかのパーティにることがあるときは、メンバーに神がいるかどうかを確かめておくことをお勧めしますよ。神がいるといないとでは生存率が全然違ってきますからね」

ロンボクのアドバイスに禮を言うヒロの前に影が落ちた。

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