《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》11-084.恐ろしい魔法ですよ
ロンボクはヒロから視線を外すと、両手の指先を組んで自分の膝の上においた。そして思い出すように語り出した。
「後から聞いた話ですが、ロッケンとミカキーノさん、そしてハーバーさんは同郷だったんです。ロッケンは師匠わたしたちの元を去った後、郷に帰りました。きっと別の仕事を探そうとしたんだと思います。だけどそれは葉わなかった……」
再びロンボクの顔が歪んだ。
「……彼の郷は、小悪鬼ゴブリンの大群に襲われて、壊滅していたんです。五百匹を優に越える數だったそうです。わずか數十人の郷ではどうすることも出來ませんでした。郷の男達は勿論、子供までも悉く殺されました」
「生き殘りは?」
壊滅といっても、生き殘りが一人もいなければ、誰が襲ってきたのか、どれくらいの數が來たのかなど分かる訳もない。ロンボクは小悪鬼ゴブリンが五百匹だと説明した。ならば、生き殘りが居る筈だ。
しかし、ヒロにはその答えの察しがついていた。そしてロンボクの答えも予想通りのものだった。
「はい。二人だけ……。お察しの通り、ミカキーノさんとハーバーさんです」
ロンボクは続ける。
「三人は必死に郷の人々を守ろうとしました。けれども、ミカキーノさんとハーバーさんは深手を負い、ロッケンは魔法を使えるではなかった……。どうにもなりませんでした。全てが終わって、運良く生き殘った三人は、の涙を流して小悪鬼ゴブリン達への復讐を誓った。スティール・メイデンはそのとき生まれたんです」
ヒロには言葉も無かった。スティール・メイデンが執拗に小悪鬼ゴブリンを目の敵にするのも、殘に殺すのも、彼らなりの理由があったのだ。
「ミカキーノさんは郷を襲った小悪鬼ゴブリンを何か斃していたのですけど、その戦利品の中にあの髑髏の指があったんです。最初はなんの指か分からなかったのですが、知り合いの賢者に鑑定して貰ったところ、マナを整えるマジックアイテムだと分かった。それをロッケンに渡したんです」
――マナの流れを制する指。
ヒロは思わず自分が填めている廻の指に手をやった。この異世界ではこの手のアイテムは結構あるのかもしれない。尤も、モルディアスは、ヒロに與えた廻の指レンガスを扱えた魔法使いは殆どいないと言っていたが。
「話のついでにもうし聞かせてくれ。さっき、ロッケンが黒の不可ブラックアンタッチャブルは青の珠ドゥームとかいう魔法を使うと言っていたように聞こえたが、一何なんだ?」
「僕も師匠から聞いた話でしか知りません。青の珠あれはマナを吸収・凝する魔法だと師匠が仰ったことがあります。大気のマナや生きのマナオドを吸い取る魔法なのだ、と。青の珠ドゥームが発すると、青い寶珠のようなものが現れ、周囲のマナを所構わず吸い込んでいくんだそうです。生きが傍に寄れば、マナを吸い取られ、最悪は死に至る。恐ろしい魔法ですよ。僕は見たことはありません。まさか黒の不可ブラックアンタッチャブルが青の珠そのの使い手だったなんて……」
「そういえば、スティール・メイデンと黒の不可ブラックアンタッチャブルの戦いの一部始終を見た子が、そんな事を言っていた。黒の不可ブラックアンタッチャブルが青い珠を出したって」
「恐らくそれが青の珠ドゥームです。ロッケンは青の珠ドゥームにミカキーノのマナオドを抜き取られてしまうことを阻止したかったのでしょう。でも、だからと言って、自分のマナオドを使ってしまうなんて……」
ロンボクがを噛みしめる。いつも冷靜な彼がの昂ぶりを抑えらないように見えた。それでも、ロンボクは二、三度深呼吸をして、自分を落ち著かせようとした。ヒロはし待ってから訊ねた。
「ロンボク、スティール・メイデンあいつらが、黒の不可ブラックアンタッチャブルを襲ったのは、やはり何処かからのクエストだったのか? 君は冒険者ギルドにはそんなものは出ていなかったと言っていたよな」
先程、ロンボクがミカキーノとの會話で、黒の不可ブラックアンタッチャブルの討伐というクエストはないと言っていたことをヒロは指摘した。クエストなしで襲いかかることがあるとすれば、個人的な恨みがあるか、または表・に・出・な・い・クエストのどちらかだ。
「先程のミカキーノさんが呟いた通りだとすると、おそらくそうでしょうね」
ロンボクはぽつりと答え、眉間に皺を寄せた。
「ヒロさんには、前にもお話したかと思いますけれども、クエストは冒険者ギルドに出すものだけではなくて、冒険者個人に依頼するものがあります。それは、學生は勿論ですが、冒険者でも、個人契約している代理人マネージャーを通じて行われるのが殆どです。しかし、その中には表沙汰に出來ないものもあります。例えば、他國に対するスパイ行為といった諜報活に類するものです。當然、王國もその辺りは承知しています。其の為、王國は冒険者ギルドに直屬の報告を派遣、常駐させていますし、學生や冒険者の代理人マネージャーには、個別依頼されたクエストを領主または王國に報告する義務を課しています」
そういうことだったのか。ヒロは心の中で唸った。
言われてみれば、戦闘能力の高い冒険者を集めて王國に反旗を翻す輩が出てこないとも限らない。それを防ぐために冒険者に出されるクエストの容を常日頃から把握しておくシステムを設けているということなのだろう。それは、領土を治める立場にしてみれば當然の処置だとも言えた。
「だけど、それでも捕捉できないクエストがあります。個人的な知り合いを通じて冒険者本人に直接依頼するケースです。それを僕ら冒険者仲間は『アンダーグラウンド』と呼んでいます」
「要するに、裏の仕事的なクエスト、ということか?」
「えぇ。に処理したい案件や、アイテムの探索など、最初からなかったことにできるクエストですね。アンダーグラウンドともなると冒険者達ぼくらでも、それに手を染めない限り、実態を知る事はできません。けれども、伝説クラスのアイテムは、そうしたアンダーグラウンドの中で取引されると聞いたことがあります。つまり、それだけ危険なクエストだということです。普通の冒険者には縁のない世界ですよ」
「王國は裏の仕事アンダーグラウンドについては、目を瞑っているのか?」
「さぁ、そこまでは……。ただ數としては、そう多くは無い筈ですよ。アンダーグラウンドが簡単なクエストである訳がないですから。當然それをけられる冒険者も限られてきます。だけどスティール・メイデンの実力はウオバルの冒険者の中でもトップクラスでしたから、アンダーグラウンドの話があっても全然おかしくないと思いますよ」
――裏の仕事。
本當に重要なものは人知れず取引されるということか。表だけでは決して知る事の出來ない世界があるという事実を告げられたヒロは、表の世界だけで元の世界に帰る方法を見つけることができるのだろうかと不安になった。だが、そんな心配はずっと先の話だ。まだ自分は冒険者に正式登録されたばかりの駆け出しだ。今は、この世界での生活基盤を築くことに専念すべきだ。ヒロはそう考えを切り替えた。
「そういえば、さっきミカキーノは『破魔の剣』とやらが手にる筈だったとか何とか言ってなかったか。もしかしたら、それが伝説クラスのアイテムだったりするのか?」
ヒロはロンボクとミカキーノとの會話で耳に挾んだ単語を思い出した。伝説クラスのアイテムがアンダーグラウンドのクエスト報酬になることがあるのなら、その剣がそうではないかと思ったのだ。
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