《ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】》13-096.不穏の風

――翌日、夕刻。

ヒロは、エマからウオバルへの帰路にいた。昨日シャロームから依頼された品を屆けた後の帰り道だ。依頼された配達クエストはとくに何の問題もなかった。エマのギルドでし尋ねただけで、屆け先は直ぐに分かったし、取証と返品もけ取った。いつもウオバルの冒険者ギルドでけている配達クエストと何ら変わることがない。簡単なクエストだ。

唯一違うといえば、シャロームが付けた一人で行うという條件くらいだ。シャロームが言うには、一人だとに負ける者がいるらしいが、そんなことをしてみすみす信用を失うような馬鹿な真似はしない。それにエマへの行き來は、これで都合三回目だ。慣れた道だということもあり、特に不安もない。

ヒロはこの間、冒険者ギルドの承認クエストで、エマへ行ったときと同じように、時折魔法の練習をしながら歩いた。今度は日帰りなので、練習に時間を割くようなことは出來なかったが、それほど集中せずに発できる魔法であれば、立ち止まる必要もない。ヒロは得意とする炎魔法中心の練習をした。

やがて路は山道となった。正式名稱「凱旋の丘」。冒険者仲間が犬山カニスガラと呼ぶ小さな丘だ。ウオバルへ向かう最後の山道。ここを抜けると一時間ほどでウオバルに著く。どうやら日が沈む前に戻れそうだ。ヒロは太の位置を確認しながら目算した。

ヒロの頭上を吹き抜ける風が、さわさわと両脇の木々の梢を揺らしている。そういえば、前の承認クエストでは、ここで小悪鬼ゴブリンに襲われたのだったな。ヒロはつい數日前の出來事を思い出していた。

あの時は、小悪鬼ゴブリンの攻撃を即席のバリアで防いだ。そのままやり過ごす積もりだったが、突然、スティール・メイデンが割り込んで、小悪鬼ゴブリン達を掃討した。見事な手並みだった。しかし、そのスティール・メイデンも、その後に現れた謎の人「黒の不可ブラック・アンタッチャブル」を追った挙げ句、返り討ちに遭っている。

ヒロは、ロンボクと一緒に、リーファ神殿までスティール・メイデンを見舞いに行ったのだが、彼らのダメージは予想以上に深かった。冒険者としてはもう再起不能ではないかと仲間で囁かれているくらいだ。ロンボクによると、スティール・メイデンはその昔、彼らの郷を壊滅させた小悪鬼ゴブリンの王に復讐を誓っていたという。

「黒の不可ブラック・アンタッチャブルに小悪鬼騎士ゴブリンロードか……。どっちが強いのだろうな……」

ヒロは思わず呟いた。

ウオバルの冒険者ギルド最強と目されたスティール・メイデンが、強力な武である『破魔の剣』を手にれてでも復讐しようとしていた小悪鬼騎士ゴブリンロードと、スティール・メイデン三人を相手に一蹴して見せたという黒の不可ブラックアンタッチャブルの対決。

ヒロには、その答えは分からなかったが、小悪鬼騎士ゴブリンロード討伐のクエストを黒の不可ブラック・アンタッチャブルに出してみるのは有りなのではないかと思った。

今のところ、黒の不可ブラック・アンタッチャブルの正は誰にも分からない。だが、もしも黒の不可ブラック・アンタッチャブルが冒険者であったなら、クエストを出すことは可能なのではないか。尤も、報酬がとんでもなく高額になることは間違いないだろうが。

(戻ったらギルドの付嬢ラルルにちょっと聞いてみるか――)

ヒロは丘の頂上が見える辺りまで登る。遠くに休憩所の小屋が視界にる。し休んでいこうかとも思ったが、そんなささやかな願いは葉わなかった。

目の前で不意に風が舞った。

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