《部活の後輩と付き合ってみた》僕の父と母の馴れ初め 前編
合宿が終わり次の日……
「よぉ來たぞ我が息子よ!!」
「……さっさとお土産置いて帰ってくれないかな?」
僕の両親が家に來た。
両親はともに忙しいので2人が揃うのは珍しいのだが、合宿の次の日にわざわざ來なくていいと思う。
……なんせ來るって知ったの昨日だし。
「あら拓ちゃん、お母さん悲しいわ」
「だから母さん、その呼び方止めてくれって……恥ずかしいんだから」
「あっ、お義父さんお義母さんこんにちわ!!」
昨日はあんなに二日酔いだったのに今日は完全に元に戻った七海が僕の両親に元気に挨拶する。そしてなんか僕の両親に対しての呼び方が違うのは気のせいだろうか?
「おう七海さん、こんにちわ」
「こんにちわ七海さん」
「おいおい拓海~お父さんだぞ~? もっと喜べよ~」
「……あぁ疲れる。
ーー七海、僕寢てるね」
僕が寢室に戻ろうとすると七海に手を摑まれた。
「ダメですよセンパイ!! せっかくお父さん達がいらっしゃったんですから寢ちゃダメですよ」
「……ちっ」
「どんなに嫌なんですか……」
だって嫌なものは嫌だし。
ーー例えそれが実の両親でも。
僕は渋々、両親をリビングに招いた。
……玄関で問答をしているのが面倒くさくなったからである。
「おぉ~ここが拓海と七海さんのの巣か~」
「親父言い方な……ほいお茶だ」
一応昨日の時點で來るってことは知っていたのでお茶の用意はしていた。
「おっ、気が利くな我が息子よ!!」
「ありがとうね拓ちゃん~」
「センパイ!! 私の分もしい!!」
「はいはい」
それからは僕の就活の話や両親の仕事の話をしていたが、不意に七海が思い出したように言った。
「そう言えばなんですけどお義父さんとお義母さん達の出會いってどんなじだったんですか?」
「おい七海ーー」
「よくぞ聞いてくれた七海さん!!」
「……あぁ面倒な事になった」
僕は最近はあまりやっていなかった恒例の手を額に當てるポーズをとった。
このポーズを取った理由だって?
ーーこの後面倒な事になるからに決まっている。
「おいおいどうした我が息子? そんなにげんなりした表をして
ーー生理か?」
この人にデリカシーってものがないのだろうか?
というか僕男だから生理ないし。
「黙れ親父……僕がその話をどれだけ聞かされてきたと思っているんだよ……もうほぼ暗記しているわ」
「おぉ拓海凄いな!!」
「こんなんで褒められても嬉しくないわ!!」
親父は昔から僕の事を結構褒めてくるが今まで一番褒められて嬉しくなかった。
「ってことで七海さん、拓海にクイズ形式で説明してもらおうと思うがいいか?」
「僕の意見はむーー」
「はい是非是非!!」
……來たよ、安定の僕の意見無視。なんでこうも僕の意見を無視するのだろうか?
「ってことで拓海諦めろ!!」
「“諦めろ!!”ってそんな爽やかな笑顔で言わないでもらえる!? なんで彼の前で両親の馴れ初めをクイズ形式で答えなきゃいけないんだよ!!」
「まず一問目!!」
「無視か!!」
「俺が母さんに初めて會った際に言った事はなんでしょうか?
ーーあっ、拓海はまだ言うなよ?」
「言わないよ……というか僕ずっと黙っているつもりなんだけど。七海、なんだと思う?」
僕が話しを振ると、七海は真剣に悩み始めた。
……こんなことで真剣に悩まなくていいのに、というか七海にはもっと別の事に悩んでしい。
料理とか洗濯、掃除とかに。
「何でしょうか……? 悩みますね……ヒントくださいっ!!」
「初対面の人に普通は言わない。というか々と飛ばしすぎ」
「“普通は言わない”ですか……まさか“俺と結婚してください”は言いませんしね~」
「……七海」
「なんですか?」
「正解」
「えっ……まさか本當に言ったんですか?」
七海はふざけのつもりで言ったのだろうけど、本當に親父は初対面の母さんにそう言ったのだ。
「おうとも!! いや~初対面だったんだが母さんのあまりのしさに一目惚れしてな!!」
「いやいや親父、普通初対面で言わないからな!? なんかいつも通りに爽やか笑顔で誤魔化しているけどやっていることぶっ飛んでいるからね!?」
い頃は親父カッコいいと不覚にも思ってしまったが、それなりの歳になると中々ぶっ飛んでいると思い始めた。親父は普段から々と破天荒な行をしているが、母さんとの出會いはその中でも破天荒すぎる。
「お母さんも最初は“えっ、この人何言っているの?”って思ったわ~ウフフ」
「いやいや母さん、それが普通だと思うよ?」
「カッコいいですねお義父さん!!」
「そう思うか七海さん!! いや~それから毎日の様に會う度に“好きです”や“結婚してください”って言ってな、やっと付き合えるようになったからな!!」
「親父がストーカーで捕まらなくて良かったよ……」
「最初は“毎日しつこいわね~”とか“毎日こんな事して飽きないのかしら”って思ったのだけど徐々にそれが嬉しくなってね、そして最後は私から告白したわ」
「いやいや母さん、親父に毒されているでしょ絶対!!」
「見たか息子よ……
ーーこれが逆転満塁ホームランだ!!」
「親父……例えが全く分からん」
僕は呆れているが七海は目をキラキラさせて親父を尊敬のまなざしで見ている。
「凄いですお義父さん!! 自分より先輩のお義母さんに毎日猛烈アタックするなんて尊敬します!!
私も拓海さんに毎日アタックしてましたので!!」
「えっ、七海そうだったの?」
「まさかセンパイ……気づかなかったんですか?」
とジト目で見られる僕。どうやら僕は彼の地雷を踏んだみたいだ。
……だ、だって僕が好意を持たれているなん思わなかったんだもの。
「七海さん、ごめんな~。拓海、人からの好意に鈍なんだよ」
「すみませんね鈍な息子で」
「拓ちゃん、前から言っているけどの子の気持ちには敏にしてなきゃいけないわよ?
ーーでも、今七海さんがいるから大丈夫かしら?」
「そうですよねセンパイには可い私がいますもんね!!」
「當たり前でしょ、何を今更」
僕には七海がいれば十分だし、七海がいるのにも関わらず浮気なんてするつもりは頭ない。
こんな可い彼がいるのだからそれ以上を求めるなんて罰が當たりそうだ。
「も、もうセンパイったら……」
僕の答えが予想外だったのか顔を赤らめ恥ずかしがる七海。
恥ずかしがるなら自分から言わなきゃいいのになんて言葉をいったら絶対不機嫌になるので言わない。
「拓海……お前ってそんなことを素で言える格だったか?」
「拓ちゃん、貴方長したわね……お母さん嬉しいわ」
両親からは驚きと暖かい目線を向けられるのだった。
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