《脇役転生の筈だった》31
食事を終えると私は天也と天さんを部屋で待っていた。
すると、しばらくしてノックの音が聞こえ、私は2人を出迎えた。
「咲夜、待たせたな」
「咲夜様、お待たせしてしまい申しわけございません」
「いえ、天さんも忙しいでしょうから。
私こそお仕事中に申しわけありません。
二人共、中にってください」
2人を招きれるとお茶を出し私も席につく。
「天さん、こちらが私の婚約者になりました天也です。
家に來る事も多くなるでしょうから…」
「天野天也だ。
咲夜の婚約者として恥じぬよう心がけるつもりだ。
宜しく頼む」
そんな天也と私の言葉に天さんはいつものように禮をした。
「かしこまりました」
「そんなに畏まらなくていいのだけれど……。
…やはり、よく見ると似ていますね」
「咲夜?」「咲夜様?」
私は春瀬さんの事を思い出し思わずそう呟いた。
「ふふっ…何でもありませんわ。
天也、こちらは海野家の料理人の天司さんですわ」
「…天…司?
…っ、春瀬の弟か」
「兄の事をお知りだったのですか?」
私はカラカラと笑い紅茶のったカップを傾けた。
「……兄をお知りだったので私をお雇いに…?」
何か勘違いしている様だったのでちゃんと訂正をしておく。
「あら、心外ですわ。
私が春瀬さんとお會いしたのはついこの前ですもの」
「も、申しわけありませんでした」
「気にしなくて結構ですわ。
それに、もし知っていたとしても私、天さんのお菓子が好きですもの。
何より、腕の悪い料理人を置いておく程海野家は優しくはありませんのよ?」
と、冗談じりに言うと天さんは嬉しそうに微笑んだ。
天也は複雑そうに見ていたがやがて天さんと楽しそうに話し始めた。
「司、もし海野家を辭めたら天野家に來いよ」
などと名前で呼ぶだけでなく、勧までする仲になっていた。
…まぁ、それは私が許さないが。
「殘念でしたわね。
なくとも私が海野家にいる限りは天さんを解雇したりはしませんわよ」
「つまりは咲夜が天野の姓を名乗るようになればいいって事だろ?」
天也はニヤニヤと笑いながらそう口にした。
だが、天野の姓を名乗るという事は私と天也が結婚するという事だ。
そう考えてしまった私は溫が上昇していくのをじた。
「そ、それはまだ先の事でしょう」
「私も、咲夜様がお許しになるのであれば咲夜様に付いていきます。
旦那様からも、咲夜様がおみになるのであれば……と申し付けられておりますので」
「だ、そうだぞ?」
私は2人の視線に耐えられなくなりもう既に何もっていないカップを傾け赤くなった顔を隠したのだった。
「咲夜様、私は仕事が殘っていますのでこれで失禮させていただきます」
「え、えぇ…。
お時間をいただきありがとうございますわ」
「いえ、私の方こそ楽しい時間をありがとうございました」
天さんの仕事を邪魔してしまった様でかなり申しわけなく思っていたが噓とはいえそんな言葉に心がし軽くなった気がした。
「咲夜、下にカジノがあっただろう?
トランプでもやらないか?」
「…そうだね。
行こうか」
私天也のいにのり、カーディガンを羽織り下の階にあるカジノへと向かった。
2人だけというのも寂しいので音や紫月もってみた。
後で來るらしい。
それまでの時間、私は話を切り出した。
……ずっと、悩んでいた事を。
「……天也、私…」
「言うな!
………分かってる。
分かってるんだ……。
……行くんだろう?」
私には留學の話が來ていた。
學年1位という事もあり、私には前々から留學の話があった。
ただ、それをぐだくだと悩んでいたのだ。
天也や奏橙、紫月に音。
折角、友人が出來たのにも関わらず離れるのが嫌だった。
だが、ドイツへの留學は私にとっていい経験となるだろう事は分かっているのだ。
それに、向こうには母や父もいる。
だから、決めるに決められずにここまで來てしまっていた。
「……うん」
「………そう、か。
決めたんだな…。
俺は応援する。
それに、來年には戻ってくるんだろう?」
「…うん。
そのつもりだよ」
私と天也の間に無言の時間が流れる。
だが、そんな時間を天也が破る。
「分かっていた。
咲夜なら絶対に行くって事くらいな。
それに、長期休みにれば會える。
だから…だから、こっちの事は気にせずに行ってこい」
天也なりの優しさだった。
私の背中を押してくれる天也の優しさが嬉しかった。
だが、それと同時にしばらく會えなくなるという寂しさに襲われる。
「……ありがと。
冬休みは絶対戻ってくるから…」
「あぁ。
俺も時間があればドイツへ行く」
「……ん」
私はもう、來週にはドイツへ行くことになっているのだ。
つまり、もうあまり時間は無い。
支度ももう済ませて荷は向こうに送ってある。
「咲夜、出発はいつだ?」
「來週。
この旅が終わってから2日後」
「…はやいな……。
だが、分かった。
見送りは必ず行く」
「…ん、ありがと」
自然と口數が減ってしまう。
…その雰囲気をぶち壊すかのように皆がってくる。
そのタイミングに私と天也は苦笑してトランプを広げるのだった。
したってから、私は軽く口を開いた。
「私、來週からドイツに留學するから。
來年までには戻るけど」
「そうなんですか。
……え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
う、噓!?
咲夜、留學するんですか!?」
軽く流されたと思ってしショックをけたがすぐに音が慌てだした。
奏橙は相変わらず苦笑しているだけだ。
「いつにもまして急だね……。
天也は知っていたの?」
「いや、俺もさっき話されたばかりだな」
「……寂しくなりますわね。
咲夜、冬休みは必ず戻ってくるのでしょう?」
「うん。
そのつもりだよ」
折角の友人だからね、と言うと紫月は笑って応援してくれた。
そして、最後に奏橙が余計な一言を付け足す。
「…咲夜、本バレないようにね?」
「どういう意味!
人が張して言えば……本って……」
すると、奏橙は笑ってからしだけ、本のし寂しそうな表をした。
「…咲夜なら大丈夫だと思うけど、頑張って。
僕も応援してるよ」
「ありがとう。
音、天也も奏橙もごめん。
大変になる育祭の時に外す事になって…」
「うわっ……忘れてたよ……。
天也、今年こそ1人三種目までって決まりを作ろう」
「…そうだな」
2人で新たな決意をしていた。
その理由を知る私としては是非とも來年までにやってくれという思いで応援をしていた。
「そういえば…咲夜。
なんで今更留學する事に?」
「元々行ってみたかったというのもあるし、お母様とお父様がいるからね。
それと、いい機會でしょ。
お兄様に妹離れをしてもらう、ね…… 」
私の理由を聞いたからか何故か奏橙と天也が渋い表を浮かべた。
そして、何も知らない魁斗が疑問をぶつけてきた。
「そのお兄さんってどんな人なんだよ?」
魁斗は慣れてきたからなのか隨分と遠慮が無くなってきた。
……まぁ、私のこの砕けた口調もあるかもしれないが。
「「「「シスコン(だな)(だね)(です)」」」」
私と天也、奏橙、音の4人は口をそろえてそう口にした。
すると、魁斗と紫月はし顔を引き攣らせた。
「シスコンって……」
「噂には聞いておりましたが……」
つまりは的にどんな人かって事だろう。
これにはまず、天也が答えた。
「…シスコンとしかいいようがないが……。
そうだな…。
好きなもの咲夜、趣味咲夜、集めているもの咲夜、だな。
悠人先輩は咲夜に手を出す奴に対しては徹底的にやるぞ。
特に、男に対してはな…。
俺や奏橙も悠人先輩に害蟲扱いされているしな…」
その件に関しては本當に申しわけないと思っているのだが……。
何度言っても兄は変えようとしないのだ。
それどころか私に天也と奏橙に近付くなという程だ。
……まぁ、それはいいにしても他にも…ねぇ?
「文化祭の時なんて、咲夜の寫真を取りに來て、最初から最後までいるくらいだしね。
初等部の時に咲夜をめていた令嬢なんて悠人先輩から結構な報復をけていたみたいだし……。
あと、咲夜に目を使ったとかって言ってクラスに毆り込みに來ることとかも結構あったなぁ……」
……それは聞いていないのだが……。
というか、そんな事までしていたのか!?
天也と奏橙から語られる話には私の知らない事もありつい頭を抱えてしまう。
「お兄様……今度じっくりと話す必要が……」
「あ、そういえば……。
この前、咲夜に冷たくあしらわれたけど遅い反抗期って言って喜んでたなぁ…」
「それは聞きたくなかった!!」
私は本格的に頭を悩ませるのだあった。
………いったいどこで間違えたのだろうか?
殺される事は無くなったがここまでのシスコンとなることをいったい誰が予想できただろうか?
…誰にも予想出來るはずがない。
「……ま、まぁ頑張れ…?」
と、魁斗にまで引かれる程の兄の殘念さが虛しい。
それに、兄だけならまだ良かっただろう。
だが、うちには兄だけではなく父という者までいるのだ。
「咲夜の父親って財力があるだけ悠人先輩よりも厄介だしな……」
と天也に言わしめた程の娘馬鹿の父なのだ。
そちらは母が止めているとしても年々と母も諦めの極地へと向かっている。
というわけでせめてどちらか片方でも何とかしたいのだ。
「……その、咲夜の家族って個的…ですのね」
そんな紫月の言葉に私は乾いた笑みを浮かべるだけであった。
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