《脇役転生の筈だった》39

朝、私は昨日の夜、母に選んでもらった服を著る。

今までとは違い白の服だ。

白だと汚れが目立つためあまり好きではないのだが…。

は度は度……」

パーティー以外では著る事のない白の服ということもありしだけ不安があるのだ。

そのため、ただひたすらに「は度…」と言っていた。

「ふぅ……いざ、勝負!!」

落ち著きを取り戻すとまるで戦場へ向かうかの様な形相で扉に手をかけた。

そして1歩扉から出ると私は自然に笑みを浮かべていた。

これはお嬢様としての生活の果である。

食事をとるホールへ行くと既に私以外の全員が揃っていた。

1番最後という事もあり待たせてしまったと申し訳なるがそれを隠して挨拶をすると自分の先に著く。

「お母様…その、お父様は…」

私の隣は父なのだが何故か紐で縛られていた。

そして口にはガムテープ。

そんな不自然な景だったものの母は笑みを深めるばかり。

そして私は理解した。

きっと父は天也のことをまた『蟲』か『害蟲』と表現したのだろうと。

それにより母が怒りこの景が作り出されたのだろうと。

……うん。

いつもの景だ。

「ンンンーンッン!

ンンンンンンンンン、ンンンッンーンンンンッン!!」

(訳:  この害蟲め!

咲夜を騙すなど、到底許さぬぞ!!)

皆が黙り込む中、私と母は溜息をついた。

「咲夜、何を言っているんだ…?」

「…この害蟲め。

咲夜を騙すなど、到底許さぬぞ。

です」

天也は顔を引き攣らせていたが他の皆はただ引いていた。

「ンンンッ!

ンンンンンンンッン、ンーンンンンンンンンンンッンンーンン!」

(訳:  見たか!

お前とは違って、私と咲夜は分かちあっているのだ!)

である。

ただ、意味は分かっているが父が子供っぽく見えてしまうので殘念だが……。

取り敢えず食べ終わったので父を放っておくことにして庭へ行くと言ってホールを出る。

私がゆっくりと散策していると背後から聲をかけられた。

「お嬢様」

「何でしょうか?」

私に聲をかけてきた使用人はどこかヒヤリとする笑みを浮かべていた。

だが、無表な人が無理やり作った笑みと似ているような気がしたためあまり追求はしないでおく。

私も昔は笑みがいやら引きつっていると言われて凹んだ事があったからでもある。

「婚約者様がお待ちになられていますので致します」

「天也が……?

分かりましたわ」

天也が待っていると言われ私は何も違和を持たずに彼について行く。

その時、私は気づくべきであった。

天也ならば自分で探しに來ると。

決して、誰かに呼んで來てもらうような事はしないと。

「お嬢様、申し訳ありません」

そう言われ、私はハンカチで口元を抑えられる。

薬品の染み付いたそのハンカチのせいで私の意識は闇の中へと落ちていった。

私が気付いたのは屋敷ではなく、倉庫のような場所だった。

ひんやりとした、し埃っぽい空気を吸い込みに悪そうだなどと思いながらも周りを観察する。

いざという時に逃げやすいようにだ。

それに…私の靴には仕込みもされているし護程度は齧った事がある。

だが、私はある失敗を悟る。

今日に限ってナイフを持ってきていなかったのだ。

あるのは麻痺針と弱い麻酔針だけだ。

そして何も塗っていない針といくつかの解毒薬。

そして靴の仕掛けはちゃんと使える。

この3つの武でいけるだろうか?

そう考えるがここがどこだか分からない限り無理だろう。

山中の倉庫だったとしたら遭難して終わる。

縄抜けは殘念ながらできないし…。

兄なら出來るのだが……。

「あぁ…お目覚めになられたのですね?

お嬢様」

「…えぇ、最悪な目覚めでしたが」

私は淡々と口にする。

を表に出すと恐怖が伝わってしまうと思ったからだ。

それは私のプライドが許さなかった。

「…お嬢様が元気そうで何よりですよ」

「あら、私の何処が元気そうだと?

神の方は全く元気とは言えない狀態なのですが」

「それは失禮しました。

お嬢様が賢い方で本當に良かった。

馬鹿な方ならば喚き散らしますからね」

何の悪びれもなく『失禮しました』と言った彼はそう続けた。

だが、その言葉の中には他にも何度かやった事が分かるような臺詞がっていた。

ならば私がここから逃げるのは困難だと言っていいだろう。

絶対に、何か対策をしてある。

「お嬢様安心を。

今は#まだ__・__#あなたを生かしておきますので。

なので逃げ出したりしないでくださいね?

そうなればついうっかり手がって殺してしまうかもしれませんから」

そう笑顔で念押しした彼に私は恐怖をじた。

笑顔のはずなのに、冷たく、周囲の溫度まで下げるような瞳。

もし、本當に殺し屋というものがいるのであればきっとこんな目をしているのだろうと思ってしまう程に冷めきった瞳。

そして、まるでゲームのように楽しんでいる事が分かる聲のトーン。

私の命はこんな奴に握られているという恐怖。

何より、『#まだ__・__#生かしておく』と言った事。

全てが終われば私は殺されるのであろうと理解してしまったから。

だからこそ今までよりも何倍もの恐怖をじた。

「私がそんな馬鹿な事をするとでも?

私は何の力も持たないただの子供なのです。

なにより私、勝てる勝負しかけませんの。

そんな私がその様な一か八かの勝負をすると思いまして?」

そう。

私はちゃんと考えてから行する。

そうしなければ簡単に捕まってしまうから。

私の力と武から見ても1回しか無理だろう。

それに2回目以降はきっと武も全て取り上げられるし監視も増えるだろう。

だからこそ、念に作戦を練らなければいけない。

「……聞いていいかしら?」

「えぇ、私に答えられることであれば答えますよ」

「そう。

なら、何故この様なことを?」

私は報を集めるために行に出た。

「お金の為です」

そう答えた男の表は何故かし曇っているような気がした。

「そう、ですの。

では2つめの質問です。

私はどれ程眠っていたのですか?」

「2時間程度、かな?」

2時間だとしたら車で移したとしても山中では無いだろう。

ならば逃げ出しても大丈夫だ。

海ということもないだろうし。

「では3つめです。

そろそろ疲れたので素で話していいですか?」

「……は?」

さすがに私も令嬢として話していると疲れるのだ。

それにこんな狀態だと尚更。

私の神的にも素で話していたいのだ。

「あ、いや…いいですが」

「そう?

じゃあそうさせてもらうよ。

ふぅ……あぁ~もう疲れたぁ!

さぁ、何で私ばかりこんな面倒な事に巻き込まれるかな……。

お兄様とかお父様とかお兄様とか!!

本當、あの2人も妹離れと娘離れをさっさとしろって思うんだ」

後半は拐に関して何も関係の無い事を言っているが日頃の愚癡というものである。どうか聴き逃してほしい。

「……くくっ……。

あんた、本當はそんな口調なのかよ」

「あんなっ苦しい口調をずっとしてろっていう方が無茶。

私には無理」

彼も取り繕ったような口調ではなくなっているのであれが素なのだろう。

「でも…恐怖心とか無いの?

拐されてるっていうのに…」

私はその問にどう答えるか考える。

本當の事を言うとし怖い。

まだ殺されないという事は分かっているため恐怖心はしだけ和らいだのだ。

だがそれでも、毅然として立ち振舞っていられるのはきっと自分自を守れるがあるからだろう。

「……あるにはあるけど、今騒ぎ立てたところで疲れるだけで何にもならないでしょう。

それに……今のところは殺されない様だし?」

「本當に面白いよ、あんた。

そのままじっとしていてくれたらいいがな」

そんな彼の言葉を私は何も言わずに顔を下に向けた。

彼がここから出ていった事を確認すると、靴を片方だけぎ仕掛けを作させ縄をきる。

その後は仕掛けの刃に持っていた麻痺毒を塗ると何事もなかったかのように平然と外へ出る。

とはいえ真正面から行くわけにもいかないので近くにあった荷をずらし窓から出たが……。

ようやく外へ出られたと思っていたがそこは薄暗い路地裏のような場所でほんのし恐怖心が増す。

そんな恐怖心を振り払うように頭を振ると私はその暗く狹い路地を歩き出した。

ーーー天也ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

咲夜が拐されたらしい事を聞いてからもう2時間程が立つ。

咲夜の婚約者にも関わらず、何も行できない俺はなんの力も持たないと改めて分かった。

「くそっ!

咲夜……」

「天也、気持ちは分かるけど落ち著いて。

あの咲夜が黙ってやられるだけなはずがないんだから」

奏橙は言い聞かせるように言っているがその聲には焦りのが見える。

だが、確かにその通りだった。

あの咲夜がそう簡単に黙っているはずがない。

「咲夜……」

俺は名前を呟くと咲夜を探すための行に出たのだった。

    人が読んでいる<脇役転生の筈だった>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください