《脇役転生の筈だった》42

私は、朝から天也とロイさんと3人で病院へと來ていた。

晝から船に乗らなければいけないので私もし急いでいた。

「咲夜様、こちらです」

「あ……お兄ちゃん……」

病院にると儚げな年がそう呟いた。

彼がロイさんの弟なのだろう。

「……ヴィル、しばらくこれなくてゴメンな…」

ロイさんは申し訳なさそうに弟さん…ヴィルの頭をでる。

それに嬉しそうに…だが申し訳なさそうにヴィルは笑った。

「えへへ…お兄ちゃんも忙しいだろうし仕方ないよ。

お兄ちゃん、その人達は……?」

「俺は天也だ。

よろしく頼む」

「私は咲夜です。

ロイさんとは仕事上の関係です。

よろしくお願いしますね」

言葉使いを変えたのはヴィルに余計な不安をかけたくなかったからだ。

 そのため仕事上の関係といい、詳しくは言わないようにした。

「あ……お兄ちゃんの……。

僕はヴィル。

こんな格好でごめんなさい……」

「私達こそいきなり押しかけてごめんなさい」

挨拶が終わったところで私はロイさんを急かした。

「ヴィル、手の日が決まった。

1週間後だ」

そう。

私はロイさんからヴィルの狀態を聞き清水に腕の良い醫者でドイツに來てくれるという者を探していたのだ。

そして、今朝。

見つかったという連絡がきた。

そしてこの病院と相談して決めたのがこの、1週間後という日だった。

「……え…。

う、噓……この病院じゃ無理だって……」

「腕の良い醫者が來てくれるんだ。

ヴィルを治してくれる…。

退院したら外で遊べるようになる」

「っ……ほ、ほんと…に……?」

「あぁ。

今までヴィルに噓を吐いたことがあったか?」

「な、ない!」

必死に首を橫に振るヴィルにロイさんは優しく微笑むとまた來るといい、病室を出た。

天也もロイさんに続いて出ていくが最後に私1人がここに殘る。

「ヴィル、と呼ばせてもらいますね。

私の事は咲夜と呼んでください」

「は、はい…」

「ヴィル、あなたが退院したらロイさんと一緒に暮らしたい?」

「は、はい…。

えと…お兄ちゃんは何か……?」

不安そうに見つめるヴィルに私は優しく微笑む。

不安をしでも和らげるように。

「詳しい事は言えないけど…。

退院祝いも準備しておかないといけないでしょう?」

「ありがとうございます……?」

「手、頑張ってください」

私は最後に応援の言葉を投げかけて病室を出ると急いで港へと戻る。

その直前にお土産などを購し、ドタバタとした空気の中私は1度帰國をする。

「咲夜様、ありがとうございました。

…こちらに來るのをお待ちしています」

ロイさんはヴィルの手の事もあり、こちらに殘る事になっている。

そんなロイさんの固い様子にふふっと笑うと私は船に乗り込んだ。

母と父も私達の見送りに來てくれて微笑んでいた。

……父は何故か泣いていたがいつもの発作だろう。

「咲夜様、おの方は大丈夫でしょうか?」

「天さん…大丈夫ですわ。

ご心配をお掛けしてしまい申し訳ありません。

…ですが、し疲れたのでお部屋で休ませていただきますわ」

どうやら天さんにも心配をかけてしまったらしい。

……まぁ、拐された時にここから連絡をしたので知っているのも無理はないが。

「何かお持ちいたしましょうか?」

「では、何か落ち著けるお茶をお願い致しますわ」

「畏まりました」

さんが下がると他のスタッフが私達の荷を部屋へと運んでくれる。

そのため手ぶらになったものの、私は最初に言った通り部屋へと戻って休むことにする。

「天也、咲夜、後でしだけいいかな?」

「…?

えぇ、いいですけれど……」

「あぁ。

だが、お前からなんて珍しいな」

奏橙から何か言うだなんて初めてではないだろうか?

そう思える程珍しい事であった。

そのため私も天也も構えずにはいられなくなる。

「そう構えないでいいんだけど……。

し相談があるだけさ」

困ったような表をしている奏橙はとても噓をついているようには見えなかった。

「……今から來ますか?」

「そうだね。

天也がいいならそうさせてもらうよ」

「俺は良いが…」

ということで3人に斷ってから私の部屋に行くと早速話始めた。

「……紫月とのことなんだけど、

來月の頭辺りに婚約パーティーをする事になったんだ」

「あら……それは……。

おめでとうございます」

「良かったじゃないか」

私と天也は口々にお祝いの言葉を投げかける。

だが、それで何故相談なんてするのだろうかと考える。

「咲夜は來れそうかと思ってね。

紫月も咲夜と仲が良いし僕にとっても馴染の様なものだからね…。

出來れば來てしいとは思うけど……」

「行くに決まっているじゃありませんの。

紫月と奏橙の婚約パーティーでしたら何があろうと參加致しますわ」

友人と馴染との婚約パーティーに不參加なんて出來るはずがない。

父と母もさすがに許可を出してくれるはずだ。

そしてきっと兄もついてくるだろう。

何故かそんな確信があった。

「それなら良かった。

ありがとう、咲夜」

本當に嬉しそうに奏橙は微笑む。

そんな奏橙に私は呑気に紫月は奏橙のこんなところにやられたのかなぁ……などと考えていた。

「で?

俺も呼んだのは?」

「だって、僕と咲夜が2人で話をしたら天也が後でうるさいからだよ。

嫉妬深いと咲夜に想つかされるよ?」

奏橙は楽しんでいるようで昔と同じようにイラッとくるようなニヤニヤとした笑みを浮かべている。

「なっ………いいだろう。

お前の小さい頃の事を結城に全て話してやろう。

の腳も加えて、な」

「ちょっ……天也?

それはさすがに……」

天也がニヤッと悪戯を思いついた子供の様な笑みを浮かべると奏橙は慌てて止めようとする。

その様子がおかしくて私は思わず笑ってしまった。

「2人とも……子供ですか…?

初等部の頃と全く変わりませんわね」

「咲夜は変わったよね。

なんというか、裏表が激しくなった?

オンオフの切り替えが素早くなった気がするよ」

「あぁ、そうだな。

まぁ、あの時は々あったからな……。

最初の頃は俺も咲夜に嫌われてただろうしな…」

天也の苦笑に私は頷く。

そして昔の事を思い出しながれ私は語った。

「そうですわね……。

私は逃げようとしていたのにも関わらず、天也が話かけて來るんですもの。

隆會としての活もあり、関わりは増える一方でしたし……。

最初の頃は苦手意識しかありませんでしたわ。

お兄様に相談してどうにかしてもらおうかとも考えましたもの。

奏橙は奏橙で分かっているくせに止めないんですもの。

しかも、作り笑いをしながら話かけてきますし…。

気味が悪いとじましたわ」

素直に口に出すと天也も奏橙も顔を引き攣らせた。

「咲夜、もうしオブラートに包んでしかったんだけど……?」

「悠人先輩に言われなくて良かった。

絶対に死んでたぞ、それ……」

2人は文句などを言っていたが仕方ないという様に笑った。

あんなに嫌だった天也との関わりがまさか強まっているなどと…しかも婚約者となっているなどということは考えもしなかった。

いや、それどころかこうして3人で仲良く話すなどということも予想はしていなかっただろう。

……あのころの私はフラグを折る事か回避する事しか考えていなかったから。

だが、今はだの友などという昔なら馬鹿にしていた事に私は楽しいと、嬉しいとじてしまっている。

そんな変化を與えてくれたのは紛れもない、天也と奏橙…そして、兄や母に父や屋敷の皆。

々な人に変化を與えているつもりでいたが一番変えられたのは実は私なのかもしれない。

そう思いながら私は笑っていた。

「天也、奏橙、ありがとうございます」

「……急に何だ?」

「咲夜らしくない……。

どうしたの?」

う2人に私は

「何でもありませんわ」

と答えると2人して肩を竦めた。

その辺の息がピッタリな所はさすが馴染だというべきなのだろうか?

そんな仲の良さに嫉妬している自分がいて天也に対して本當に心を抱いているのだとじさせられる一方で自分の醜さを見せられているような気にもなる。

「奏橙はそろそろ紫月のもとへ行ったらどうですの?」

「……じゃあ、そうするよ。

天也と咲夜の邪魔になっているようだからね」

奏橙は立ち上がり私のもとへ近付いてくると耳元でそっと囁いていった。

「咲夜が嫉妬深かったなんて意外だったよ。

留學中の天也の様子はちゃんと伝えるから安心しなよ」

と。

そんな言葉に私は恥で顔を赤く染めた。

天也の様子を伝えてくれるのは嬉しい。

それは認めよう。

だが、嫉妬深いとかは言われたくなかった。

「か、奏橙!?

な、なな何を言うんですの!?」

「前にからかわれたお禮だよ」

最後の一言で私は余計に顔を赤くするのであった。

そして、そんな時にってきた天さんに熱があるのではないかと慌てられ諌めるのに大変な思いをするのであった。

そして私は心の中で1つだけ決心した。

『今度機會があれば奏橙を思い切りからかってやろう』

と。

そして奏橙の慌てる姿を寫真で撮って紫月に見せてやろうと。

そんな私の悪戯心に気付いたのか天也が話かけてきたのでこの計畫を話してやれば

「程々にしてやれ。

そうでないと俺がやれなくなるからな」

という言葉を貰った。

そして2人でかに奏橙をからかうための計畫が練られるのであった。

それが功したか失敗したかは私達のの中に隠しておこう。

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