《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》始まりの朝
短い春休みが終わり、久しぶりに學校へ行く支度をする。
この緑の制服も一年間著続けてようやく馴染んできている。
『天坂』の表札のある我が家を出て雲ひとつない空を見上げる。
そしてこれから二年生としての學校生活が始まるんだと期待が膨らんでいく中、後ろの不審人の気配をじ取り振り向く。
「それで、親父はどうしているの?」
アロハシャツ、サングラス、キャリーバッグと旅行の三種の神的なを攜えいかにもここではない何処かへ行く予定を醸し出している我が親父。
こんなのでも母が早くに亡くなって俺を男手一つで育ててくれているので謝はしているのだが、やはりし他の親とはズレている。
「どうしてって可い我が子が旅立つのを見守ろうと」
「見守るのにそんな荷いらないよね。しかも旅立つって、俺學校行くだけだし。今日始業式だけで早く帰るから」
「へ〜、だが息子よ。殘念ながら俺はここにはしばらく帰ってこないんだ」
「飯を作る量が減るから助かるよ。どうせまた例の金持ちの親友と一緒に旅にでも行くんでしょ?」
「いやいや今回は仕事。結構家を空けることになるからよしくぴ♫」
「はいはい。それで今回はどれくらい?一週間、それとも一ヶ月?」
親父のくだらないギャグを華麗にスルーしてどうせまた仕事容は教えてくれないのだろうがそこだけは聞かなくとはいけない。
「う〜ん、多分一年、二年くらいかな〜」
「は⁉︎ 何だよそれ。そんな重大な事今言うのかよ。せめて心の準備くらいさせてくれよ」
「はっは〜、めんごめんご。急遽決まった事だったしどうせ僕がいなくてもやっていけるでしょ」
「仕送りさえしてくれればな」
料理、家事等はこの不甲斐ない父のせいで自然とについて今となっては専業主婦にさえ負けないレベルにまで到達して來た。
それに親父がいきなり家を出るのはこれが初めてではない。
むしろこうして面と向かって何処かへ行くことを告げる事の方が珍しく、いつもは手紙と必要以上の生活費がった封筒が機に置いてあるなんてザラなのだ。
しかし、今回はあまりにも期間が長く心中穏やかではない。
「大丈夫、大丈夫。その辺はちゃんとするし、何かあったらすぐに帰ってくるからさ♫」
この楽観的で自由人は何も分かっていない。
今までそうしているのだからそこは全く心配していない。問題はこの無駄に大きな我が家だ。
軽く十人くらい住めそうなこの家は親父の親友であり、有名な會社の社長から結婚祝いに貰ったらしい。プレゼントで家一軒を渡すとは金持ちの思考は理解しがたい。
これだけ大きな家に住んでいるから羨ましく思われるが掃除する場所が多くて大変なだけだ。
「とにかく、帰ってくる時とかは事前に連絡しないと家にれないからな」
「は〜い。んじゃ、飛行機の時間があるから行っきま〜す」
「はいはい。できれば一生帰ってくるな」
子供のような親を送り出すと同時に向かいの家から見慣れた姿が現れた。
「あ、興こうくん。おはよう。今のっておじさん……だよね?」
短く整えられた艶やかな茶髪、見つめていると吸い込まれそうなつぶらな瞳、らかそうな。
ファンクラブが出來てしまうほどの容姿を備えた彼は俺の馴染の三雲みくも 里沙りさ。
実際に學校には彼を慕うファンクラブがあり、一年生の時からサッカー部のエースとかに告白されていたがどれも斷っている。
気になって後で理由を聞いても要領を得ない言い訳を並べられるだけで今のところ謎だがそれは彼本人が決める事だ。
だからもうそれに関しては何も聞かないと決めている。
「ああ。それがまたどっか行くらしくてさ。しかも今回はかなり長い間帰ってこないらしいんだ」
「ふ〜ん。華蓮ちゃんも仕事が忙しくてなかなか戻ってこないからだから寂しくなるね」
我が家の妹、天坂 華蓮かれん。
中學生ながら実は現役のアイドル。それもかなり人気で仕事場とかなり遠いここに戻ってくる事は親父が家でジッとしているぐらいレアなので実質俺は馬鹿でかい我が家で一人暮らしが今日から不定期で続いていく訳だ。
「別に。こういうのには慣れてるから」
「興くん……」
心配している里沙に気づいて興はその空気を何とかしようといつもより明るい聲を張り上げる。
「それより早く學校行こうぜ。また同じクラスか知りたいしな」
小學生、中學生、そして去年もまるで呪われているかの様に必ず同じクラスになるのでそれが続きすぎた今では楽しみになっている。
「そうだね。じゃあ行こっか」
満開の桜に囲まれた坂道を歩き、これからまたお世話になる月日學園へと歩みを進める。
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