《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》後輩とテニス
「それで何をするんだ?」
「テニスに決まってるじゃない。ここでそれ以外の何をするっていうの?」
緑の芝生、ネットに審判が座る為にある背の高い椅子。野球場にあるようなライト。
山を歩き続けて開けた場所に著いたと思ったら見覚えのある景が広がっていた。
「こんな所にテニスコートなんてあったっけ?」
この街に十年以上に住んでいるがこの山にテニスコートがあるなんて聞いたことがない。
「私が親に頼んでつくってもらった。つい最近出來たばかりだから知らないのも無理はないな」
サラッと言ったけどテニスコートってそんなに簡単につくれるもんか?
だが俺も八恵のせいでそこらへんの覚が麻痺して「そっか」としか思わなかった。慣れというのは恐ろしいものだ。
「ラケットはここにあるから好きなの使って」
用意されたカゴには十本以上ものラケットが並んでいた。
どれもそれなりにするでガットもしっかり張られている所からしてきちんと手れされているらしい。
「おう、にしても一年振りだな〜。ちゃんとできるかな〜」
自信がない訳ではないがやはり一年やっていなかったというのは大きい。
ちゃんとしたフォームで打てるか不安だ。
「そういえば自己紹介がまだだった。私は赤石 晴奈せいな。この試合は兄貴にも見てもらうから」
「え? あいつ來てるのか?」
辺りを見回して探すがそれらしき人影がなく、それに見兼ねた晴奈がライトの近くにあるそれを指差した。
「いや、そのカメラから映像を撮っている。兄貴はける狀況じゃないから」
指差された先には監視カメラが一臺設置されているのでそれを見せるのだろう。
「けない?」
続きで申し訳ないがいきなりここに連れて來られて、いきなり意味不明な事ばかり言われるのだ。
そうなってしまうのは必然だと思ってくれ。
「聞いてないんだね。私の兄貴は高校にって三ヶ月くらいの頃にトラックにはねられて今も病院でけない狀態なの」
「植狀態ってやつか」
ドラマとかで良くあるやつだ。
死んではないからまだ希はありそうだが、そんな話初耳だ。
「うん、それで私は兄がいつも話していたあんたの事を思い出してテニス部に部したの。でもあんたがいないから驚いた」
どうやら彼はテニス部らしい。
兄がそうだったのだから必然といえば必然だろう。
「ちょっとやる事があってな。部活なんてやってる暇ないんだ」
なんては余計だったかもしれないが、本當に部活をしている時間などないのだ。
「でも腕は鈍ってないでしょ? 勝負して」
確かに一年経ったとはいえ、三年間続けてきた覚がなくなることはなく昔ほどではないにしろそれなりに出來るはずだ。
「ああ、いいぜ。サンセット先に取った方が勝ちでいいか?」
どうせ時間は有り余っているから何セットでも良かったが正式な試合っぽくしたかったのでサンセットにした。
「いいよ。それとやる前に言っとくけど私負けたらあんたの言う事なんでも聞いてあげる」
「何その條件。それだったら俺が負けた場合はどうなるんだよ」
うまい話には裏があると言うし、何か企んでいるのではと
「それは。あと私がだからって手加減とかしないで」
「ごめん、それは無理」
怖いくらいに鋭い目だが俺は臆さずそれを斷った。
***
「里沙ちゃん、何だか流れ的に二人でテニスするみたいだけどお兄ちゃんって強いの?」
後をつけて四人もテニスコートに著き、バレないように茂みにを潛めているがこの中で興がテニスをしているのを見たのは里沙しかいないので気になったので華蓮がふと口を開ける。
「うむ、それは私も姉として気になっていた。で、どうなんだ里沙」
「うん、強かったよ。南風中の王子っていう人に勝ったことあるし、大會では結構いい績殘してたから」
「なら負けることはなさそうだな」
「でもあの晴奈という人、期待の新人で県大會で準優勝した先輩に勝ったそうですわよ」
そんな不安にさせる報を持っていたのは八恵だった。
「あれ、八恵ちゃんがそんな事言うなんて珍しいね。てっきり興様ならきっと勝ちますわとか言うと思ったんだけど」
「信じてはいますけど、別にこれに負けたからといって興様がどうこうなる訳ではありませんから」
だから勝っても負けても興がテニスをしているところが見られれば満足なのだと言う。
「でも、折角だから勝ってほしいよね」
「ああ、そうだなここからながら応援しよう」
そんな話をしている間に二人とも準備が済んで、試合が始まろうとしていた。
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