《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》長かった三連休

さて、酷い目に遭った。

俺の財布の中はまるで友和の頭の中のようにスカスカ狀態だ。これは俺の小遣いで生活費は別にちゃんとあるが……。

「はぁ〜〜〜」

自然とため息が出てしまう。

すると隣で座っていた里沙が心配そうにこちらを覗き込んできた。

「大丈夫? やっぱり今日はもう休んでたら良かったんじゃあ」

「いや、流石にお前だけ仲間外れってのはまずいだろ。他の奴ら……特に華蓮はうるさいからな」

華蓮と里沙になついてるから里沙がいいと言ってもどこかへ連れていかないと文句を言ってくるに違いない。兄としての勘がそう囁いている。

「にしても本當にこんな所で良かったのか? 別に遠慮しなくてもお前の行きたい所に連れてってやるぞ」

ここは我が家から歩いてそう遠くないところにある公園。特に目立った遊もなく、ここで遊ぶ子供はあまり見ない。

「そんなに気を遣わなくていいよ。私はここに來たかったんだから」

「ここに? ここって確か、小さい頃に良く遊びに來てた公園だろ」

「うん。良く覚えてるね」

「まあな。華蓮と一緒にここで遊んでたこともあるし」

というかここあれだ。魅雨姉がナンパされたところ+そのお母さんを説得した公園だ。

「にしてもこんなところで何をするわけでもなく散歩って、古臭いな」

「ふ、古臭いって酷いな〜。悪い?」

「別に悪くはないさ。お前が好きな文句なんて言わないし、お前のやりたいようにやればいいさ」

「私がやりたいように……」

し黙って俯く里沙。

何か思うところがあったかもしれない。

「なんてかっこつけすぎか」

「うん。なんかほんとにおじさんに似てきたね」

「やめろってその話は」

本當にあのクソ親父の話はしたくないし、聞きたくもない。最近は近況報告のメールも無視している。

「ん〜、もうそろそろおじさんのこと許してあげたら? 確かにおじさんはちょっと自由奔放でいろいろあったけどさ」

「あれは許すとか許さないの問題じゃないんだよ。それに気にしなくても今度帰って來たらちゃんと話し合うから」

特に住民が増えてしまったことについては仕送りをしてもらっているとして報告する義務がある。

「それならいいけど……ん? あの子、興くんをずっと見てるね」

「どの子だよ」

里沙が指差した方向には人の姿はなかった。

「あれ? さっきまでいたんだけど」

「気のせいだろ。それか、こんな何もない公園に人がいて珍しがったんじゃないのか?」

今はもう夕方。小學生の子がいてもいいのにこの公園は閑古鳥が鳴きそうなほど人がいない。そこに俺と里沙だけ。ふと視線をこちらに向けるのは不自然ではない。

「そんなじじゃなかったと思うんだけど……」

「それより明日は學校だ。ちゃんと宿題やってあるのか?」

「それはこっちの臺詞だよ。やる暇なんてなかったんじゃないの?」

「四六時中、あいつらの相手してるわけじゃないから空いた時間にやってあるさ。俺が心配なのはお前なんだけどな」

「私⁉ ちゃんと宿題やったよ」

里沙は心外だと言わんばかりの大聲で否定する。それに対して興は首を橫に振った。

「いや、そこは心配してない。友和じゃないんだから。心配なのは最近お前無茶してることだ」

「そ、そんなことないよ。むしろ興くんの方が無茶してるでしょ。一人暮らしでも大変なのに五人と一緒に住むことになったんだから」

作る料理の數、洗濯、それらは一人暮らしの比ではない。流石にこれは興一人では無理なので仕事を分擔している。

「んなこと言ったって仕方ないだろ。てか、お前もその五人の中にってるからな」

あの時は本當に驚いた。

華蓮とかならともかく、里沙が強行手段に打って出るとは。

「う……。ごめんなさい」

「謝るなよ。お前にはいろいろ手伝ってくれてるから謝してるんだ。ただ度が過ぎたら駄目ってことだけを言いたくてな」

疲れて倒れでもしたら目も當てられない。きっと華蓮に怒られるだけでは済まされない。

「うん。そういえば魅雨さんがお料理の勉強してたからしは楽になるんじゃない?」

「そ、そうなんだ。魅雨姉料理の勉強してるんだ……」

どうしてだろう? 急にお腹が痛くなってきた。

「どうしたの顔悪いけど」

「問題ない。それより料理はいつも通り俺と里沙でやるぞ。他の皆は忙しいだろうから」

華蓮は殘念ながら料理出來ない子だ。ちゃんと教えればそれなりにはなるだろうが今までがアイドル稼業で忙しかっただろうからそれは後でいいだろう。

「いいけど、何を焦ってるの? そういえば魅雨さんが興くんに味見役をしてほしいって……」

「そうだ! 買い忘れてたものがあったんだ。ちょっと行ってくるから先に帰っててくれ」

最後は逃げる形となったがこれで長い三連休は終わり、明日からは學校。

いつものように登校。またいつものように面倒な授業が始まるはずだったがどうやら人生は俺を休ませてくそうなく、俺のクラスに教育実習生がやってきた。

それもただの教育実習生ではない。彼は俺の初の人だった。

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