《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》初相手と謎の
初。
俺のそれは隨分と前に遡る。
今となってはその頃の記憶はとても曖昧だがその初の相手の顔は覚えていた。
だがその人は引っ越してしまい、もう會うことはないだろうと思っていたがまさかこんなところで出會うことになるとは運命とは數奇なものだ。
「嘉納 由です。短い間ですがよろしくね」
簡単な自己紹介を終えて教室は拍手で包まれた。気のせいか男子は気合をれて拍手をしている。
「おい、興。何見惚れてるんだよ」
「別に見惚れてなんかない」
ただ懐かしんではいたかもしれない。彼はもう覚えていないだろうけどあの頃の記憶はとても大切なものだから。
「そう恥ずかしがるなって。他のクラスの連中も実習生が人で喜んでるらしいぜ」
「へぇ〜」
「興味なさそうだな。お前は家にはがたくさんいるからもういいってか⁉︎」
「そんなこと言ってないだろ。てか相手は実習生だぞ」
本人が言っていたが期間は一、二週間とかなり短い。たとえ親しい間柄になったとしても必ず別れがくる。それならいっそ……と俺は考えてしまうのだが。
「関係ない。男ってのはいつだって素敵なを探しているのさ。そこに地位とか年の差があったとしても」
「じゃあ興くんは男じゃないね。昔からそういうのには疎いから」
唐突に橫から割ってってきたのは何故か昨日から元気が戻って來たように思える里沙。
「里沙、こいつの言うことは八割噓だから気にするな」
「今回に限ってはそうじゃないと思うけど。今回は」
「え〜、お二方俺の扱い酷くね?」
「気にくわないなら日頃の行いを見直してみろ。お前また宿題忘れただろ」 
今朝、提出をしていなかったのは友和一人だけ。常習犯だから先生もまたかという顔だったのは印象的だ。
「それは姉貴のせいなんだよ。俺は暇で暇で仕方なかったから宿題でもやるかって思った頃に邪魔してきてよ。興は遊びにこないのかって駄々こねて大変だったんだぜ」
大変だったのは何件も送られたメールから察している。
だが殘念ながら三連休は全て予定が埋まっており、メールの返信すら忘れていた。これは友和だからとかではなく純粋に忘れていた。
「夏芽さんが? また何か嫌なことがあったのかな。今度寄ってみることにするよ」
「そうしてくれ。このままだと俺のが持たない」
夏芽さんはたまに緒不安定になるから大変だ。それは何度か験しているから友和の気持ちは痛いほど分かる。
「んで、里沙は俺に用があって來たんだろ」
「またまた。いくら馴染ったってテキトーなこと言っちゃいけないぜ。俺の魅力に気づいた子たちが耐えきれずに教室まで來ちまったんだろ」
「実は晴奈さんが呼んでるんだけど今大丈夫?」
隣でキメ顔をしてたアホは放っといていい。これはいつものことだから。
「ああ。にしても教室まで來るなんて珍しいな」
我が家でもだが晴奈とは基本的に必要最低限以外のことでは話さない。それに部活のこともあって同居はしているがまだ彼のことを良く知らない。
「なんでも紹介したい人がいるみたいだよ」
「な! まさかこれ以上にまだハーレムのを拡大させる気か」
「前にも言ったけど違うって」
傍から見たからそうなのかもしれない。前に魅雨姉が言ってたけど一つ屋の下で年端もいかぬ男が同居をするのはまずい。
だから俺もこれ以上我が家に同居人を増やすつもりはない。
「ちょっと、まだ?」
待ちきれなかった晴奈は興たちの教室へとって來た。
「ごめんごめん。それで急にどうしたの」
そそくさと急かされるままに廊下へと出るとそこには恐らく紹介したい人がそこにはいた。
「いや、この子があんたに會いたいって言うから」
晴奈とは対照的には雪のように白く、橫で束ねられた髪もそれと同じをしている。何とも不思議な雰囲気を醸し出すそのは小さな聲で呟きながらぺこりとお辭儀をした。
「はじめまして」
「じゃあ、私はこれで。あ、それと……」
晴奈は興に耳元で囁くようにこう忠告した。
「気をつけて。この子普通じゃないから」
そのまま帰って行く晴奈。
なんだか面倒事を押し付けられた気分ではあるが他の誰でもない俺に用があるらしいから無下に出來ない。
「え、え〜と何か用があるんだよね」
「天坂 興。天坂 晉也の息子で間違いないわね」
「あ、うん。そうだけどどこでそんなことを?」
晴奈から聞いたのか? いや、でも何のために。
「そんなことどうだっていいでしょ。ここだとなんだから場所を変えましょう」
疑問と違和を抱いていると目の前のは涼しげな顔で吐き捨てた。
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