《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》人生諦めが肝心
まるで氷の王だった。
見た目もそうだが、その態度は他人を見下しているようで後輩だというのに『王様』と呼ぶに相応しい。
そんな王様に連れられ、屋上へと足を運ぶ。
「さて、場所を変えるってことは聞かれたらマズイ容なんだな。しかも親父が関係しているとなると正直、帰りたいがそういうわけにもいかないよな」
「ええ、これは貴方の今後に関わる問題。聞くのも聞かないのも自由ですが、もし後者を選んだ場合は後悔するかと」
「はいはい。ダメ元で言ってみただけだ。けどまずは名前くらい教えてくれても良いんじゃないか?」
「琴丘ことおか……琴陵 雪音ゆきね」
もしかしたら親父がその名を口にして聞き覚えのあるものかもしれないと思ったが、その名前には全く聞き覚えがない。
そうなるとこの後輩は親父の仕事に関係あるのかもしれない。
親父は何かと緩いのだが、仕事に関してはガードが固い。気になって何度か仕掛けたことがあるが適當に遇らわれてしまった。
「親父の名前を出したってことはそれ関係なんだよな。お前なら親父が何をしているのか知っているのか?」
「知っている。けど、本人から息子には仕事の話はするなと釘を刺されているからその件について何も話す気はないわ」
「そうか……。ならそっちは親父の口から吐かせるとするさ」
いつ帰ってくるかは分かったものではないが、その時が來たら泣いて謝ってきたととしてもその口から言わせてやる。
「では本題にろう天坂 興……先輩とつけた方が良いか?」
「いや、今更あるしつけなくても良いって」
「なら続けるけど、最近不思議なことが起きているでしょ」
「不思議なこと?」
「例えば急に複數の異と同居するようになったとか、初の相手と再開したとか」
「何でそれを⁉︎」
同居については噂が広まっているからまだしも初のことは俺以外は知らないはずだ。
「やはり危懼していたことが起きているのですか。実は貴方が住んでいるあの地には特別な力が宿っているの。いわゆるパワースポット。天坂 晉也はそれを知り、あの場に家を建てた。他の者に悪用されないように」
「パワースポットってそんなの初耳だぞ。そんなの俺に信じろって言うのか?」
確かに最近はまるでラノベの主人公みたいになったかの如く、々とあったがそれはあくまで彼たちの意思で行した結果だ。
パワースポットだからといってそんな人の未來を左右するほどのものとは思えない。
「信じるも信じないのも貴方の自由。ただし伝える義務があったから伝えたいのみ。だが、こちらとしてはパワースポット……つまりは天坂家を保護したい」
「保護?」
「そう。私たちがくことになったのはそのパワースポットが力を増してきたから。このままでは奴らに目をつけられ、悪用される可能がある」
「けど、保護といっても何をするんだよ。まさか俺たちに出ていけって言うのか?」
八恵に頼めばもっと凄い家を用意してくれるだろうが、そう易々と我が家をけ渡すわけにもいかない。
「パワースポットを観察し、それの調査をするために以前と変わらない狀態にしたいからそこまではしない。ただし長期的に部で調査可能な環境を用意してもらいたい」
「つまり……君も我が家に引っ越したいと?」
「端的に言うとそうなる」
また我が家の住民が増えそうになる中、興は諦めの境地に達していた。
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