《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》閉じ込められたんだが……

目を開けるとそこは倉庫だった。

周囲に人の気配はなく、今は誰も使っていないのか薄暗い。

「ここは……何処だ?」

今日は晴奈の試合を応援しに來たはず。それで……思い出した!

背後から何かしらいもので毆られて気絶してしまったのだ。犯人は言うまでもないがまさかこんな強行手段に打って出くるとは思いもよらなかった。

ここから出ようにも扉は固く閉ざされており、必死に叩いて助けを呼んでも反応はない。

無論、スマホは沒収されていて理沙たちに連絡することもできない。本格的に俺をここに監しようという意思がじられる。

でも、俺をここに閉じ込めてあのお嬢様は何をしようと言うのだろうか?

時間が経てば理沙たちが心配して探しに來てくれるだろうがここでジッと待っていてはあのお嬢様の思通りになりそうだ。それはなんとも屈辱なのでどうにかして抜け出してあのお嬢様の鼻を明かしてやりたいところではあるが一人でこの倉庫から抜け出すのは難しい。

倉庫の中にはテニスで使われるネットやボールなどしかなく、出に役立ちそうなものは見當たらない。これが出ゲームなら出に必要なものやヒントが発見できるのだがこれは現実だ。

「それにしてもこれは參ったな……」

自由奔放な父親を持ったせいで十數年の人生でそれなりの験をしてきたが監されるというのは流石に初めての験であるが戸っていても仕方がないというのは経験上、理解できる。

とにかく、気持ちを落ち著かせるためにテニスボールを手に取る。

そのは知っている。三年間、嫌というほど投げてきたのだから當然といえば當然だ。

上の方に窓はあるが鉄格子のせいでボールで割って出というのは無理そうだ。ならば何故、ボールを手に取ったかというと単純に暇だからである。

この狀況的に出が困難というのは素人でもわかる。あのお嬢様が高笑う顔がチラつくが別に出しないと命を失うとかではないし、晴奈はキッパリと斷ったのだから彼を困らせるようなことはしないと思う……多分。

だから急ぐ必要はないと扉にボールを投げ、一人キャッチボールをしながら助けを待つことにした。

しばらくすると外が騒がしくなってきた。どうやらこの音を聞きつけて誰かが駆けつけてくれたらしい。

鍵を持って來てくれたその人のおかげで固く閉ざされていた扉は開かれる。

「だ、大丈夫⁉︎」

扉が開かれ、真っ先にってきたのはつい最近、実習生として我がクラスに訪れた嘉納 由。彼は興の初相手であり、突然のことに思考が停止してしまう。

「えっと……嘉納先生? 何でここに?」

「何でってそれはこっちのセリフだよ。私はテニス部の試合があるからその応援に來たんだけど、倉庫から不審な音が聞こえるって生徒から聞いて來たら閉じ込められてるんだもの」

「ちょっと々ありまして。でも問題はありませんから」

「問題ないって……でも、これはーー」

「いや、ただ単に俺がここで晝寢してたらそれを知らない人が閉めちゃっただけですよ。それじゃあ、俺も応援に行きますからこれで」

時間的に今頃決勝戦をしているはずだ。番狂わせがなければあの二人の対決ということになるが、俺がいないことを利用してあのお嬢様が何をしでかしたが気になる。

助けてもらっておいて申し訳ないと思いながらも興はテニスコートに向けて走り出す。

その後ろ姿を見つめながら嘉納は怪訝な顔を浮かるのであった。

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