《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》新たなる一歩
逃げるが勝ちと誰が言った。
人はそれを否定的に捉えたが私はそうは思わなかった。逃げるというのは自己防衛の一種だから。
弱い人間は特にこの手段に頼るしかない。そしてこれは慣れてしまうとすぐに頼ってしまうという恐ろしい質になってしまう。
逃げても解決しないことの方が多いのだが、自然とこの選択肢をとってしまうのはきっと楽だから。
あとあと面倒になるかもしれないけど、今は楽になる。そして次も楽になりたくて逃げる。
それの繰り返し。
どんどんと問題が積み重なっていくばかりでどんどんと息苦しくなってくる。
「どうしたら良いんだろう?」
逃げ場所として最適なのは理科準備室。ここには滅多に人は來ない。生徒がここに用事があることなどないし、本來るには鍵が必要となってくる。
でも扉の鍵は壊れているようで開いたままとなっている。これはまだ誰にも知られていないので自分だけの基地となっている。
「それは貴方が決めることじゃないの?」
「だ、誰?」
隣には見知らぬが自分と同じように座っていた。突然話しかけられたので餅をつきそうになったが、どうにか堪えて問いかける。
「う〜んと、興ちゃんのお姉さんだよ」
「お姉さん……ああ、教育実習生の。確かそんなことを言ってたような。どうしてこんな所に?」
「様子が変だったから気になって」
「教育実習生には関係ないでしょ」
「そんなことないよ。興ちゃんと同じ家に住んでるんだから貴方も私の妹みたいなものだもの」
「何そのとんでも理論。とにかく、ここのことは黙っててくれる」
新たなる安息の地を求め立ち上がろうとした時、由が痛いところを突く。
「また逃げるの?」
その言葉は琴陵の足を止めるには十分すぎた。
「貴方に何が分かるの?」
彼の瞳は今までにない怒りのが見えた。由はそれを母のような溫かい笑顔でけれる。
「分からないよ。でも、今のままだと解決しないのは確かじゃないかな」
「なら私はどうしたら良いの?」
どれだけ考えても答えは出なかった。出ていたらこうして逃げたりはしていない。
「誰かを頼ってみたらどうかな? 一人だと無理でも二人でならどうにかなるかもしれないよ。ちなみに私のおススメは興ちゃん。昔は泣き蟲だったけど、今はすごい頼りになるの」
「ふ〜ん。でも、逃げた私をあいつが許してくれるかどうか……」
興の好意を無下にしたことを実は申し訳ないと思っている琴陵は思いつめた顔をするが由は優しい聲でなだめる。
「大丈夫だよ。興ちゃんは優しいから。あとは貴方が勇気を出せるかどうかだよ」
「分かった。私もこのままだといけないと常々思っていたし、良い機會かもね」
重い腰を上げたは校を歩き回り、とある人を探した。
幸いにも探し人はすぐに見つかった。探し人はお怒りの様子で息を切らしながらめ聲を荒げた。
「やっと、見つけた。あれから結構探したんだぞ」
「ねぇ、貴方って生徒會長と知り合いよね」
先程とは打って変わった様子に戸う興。不意をつかれたせいで頭にのぼっていたも何処かへ行ってしまった。
「ん? まあ、知り合いというか姉だけど……先に言っておくが生徒會権限を用するとかはできないからな」
「そうじゃない。実はこれから部を設立しようと思うの。そのためには生徒會に申請が必要でしょ? だから、その手伝いを貴方にしてしくて……って人の話を聞いてるの?」
「わ、悪い。あまりにも突然だったから頭が追いつかなくてな。でも、急にどうしたんだよ。さっきまでそんな素振りないどころか、部活とは縁のない奴だったのに」
「後押ししてくれた人がいてね。私もそろそろ変わらないといけないと思って」
柱のでこちらを伺う教育実習生の姿を見て興は事を把握した。
「そういうことなら協力は惜しまないよ。とはいっても贔屓とかはしないからそのつもりで。それでどんな部活にするんだ?」
「もちろん、パワースポットを研究する部活よ。部長は私、貴方も部員に加えてあげても良いけど」
相変わらず人の話を聞かないところに若干呆れながらも笑いながら言葉を返す。
「お斷りだ」
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