《奴ら(許嫁+馴染諸々)が我が家に引っ越してきたのだが…》告白

由お姉ちゃんが実習生としていられる最後の日にはクラス全員で教室でお別れの挨拶をした。

中には泣き出す人もいて生徒たちから信頼を得ていたのだと今更になって知る。

プレゼントされた花束を片手に彼は弟と共に次の會場へと向かっていた。

「それにしても聞いたよ由お姉ちゃん。ボランティアで海外に行くんだって?」

この報はクラスの面々には伝えられていない。どうやら由お姉ちゃんが心配かけたくないという理由で伏せたらしい。

「う、うん。ごめんね。本當はもっと早くに伝えたかったんだけど、々と忙しくて」

「別に気にしてないよ。それが由お姉ちゃんのやりたいことなら止めはしないから」

「そう? 私はてっきり昔みたいに泣いちゃうかと思ったけど」

「それっていつの頃の話? 俺はもう子どもじゃないんだぞ」

「ふ〜む、お姉ちゃんからしたらまだまだあの頃と変わらないんだけどな〜」

「はいはいそうですか。先に言っておくけど、俺を気にしてやっぱり行かないとかされても迷だから」

あの時は親の都合だから由お姉ちゃんではどうにもならなかったが今回は本人の意思でどうにでもなってしまう。

この人は恐ろしいほどに行力がある。

そこが良いところであり、悪いところでもある。今のところは良い結果で終わっているようだけど必ずしもそうなるとは限らない。

一抹の不安が殘るのでここで釘を刺しておく。流石にここまで言えばこちらに気を遣って行くのをやめるという展開にはならないだろう。

「わかってるよ。でも一生會えないってわけじゃないから。ボランティアも一、二年で終わる予定だからね」

一、二年……。

由お姉ちゃんにとってはあっという間のことだろう。しかし、こちらは學生の。帰ってくる頃には卒業の頃かそれ以降。

まだ想像すらできない。

そもそも今、我が家が大変なことになっているのでそれを解決しなくては……。

「ねえ、それよりもお姉ちゃんに何か相談することない? 今のうちに聞いとかないと後悔するよ」

何もかも見かしたような微笑み。

姉としての余裕なのかどうかは知らないが俺はその微笑みに苛立ちを覚えた。

この苛立ちはきっと弟としてしか見てくれないことに対することなのだろう。しかし、この気持ちは既に終わっているものだ。

だからこんなことを口走ってしまった。

「実は俺由お姉ちゃんが好きだったんだ」

一瞬、時が止まったのかと勘違いしてしまった。

あまりにも唐突な興の発言に由の思考は停止していたのだ。

「ふえっ⁉︎ 急にどうしたの興ちゃん」

「ごめん。困らせる気はなかったんだけど、言っておかないと後悔すると思って。俺の初由お姉ちゃんだったんだ」

「だったってことは今は他に好きな子がいるんだね」

「いや、正直それはわからない。ただ俺の初は終わってるんだ。伝えるかどうか悩んだんだけど、モヤモヤした狀態でお別れするのはもう嫌だからさ……」

これで後悔はない。

今まで目の前に広がっていた霧が晴れたような気分だ。

「そっか……。それじゃあお姉ちゃんがとっておきのアドバイスをしてあげる」

「アドバイス? 何の?」

「もちろん、のアドバイス。見事、初の未練を打ち払った興ちゃんはこれから大きな選択を迫られるだろうけど、それに真摯に向き合うこと。そして自分の気持ちに素直になること。の子を泣かせたらダメだからね」

果たしてこのアドバイスは役に立つ機會が訪れるかどうかは不明だが、先人の教えは覚えておいて損はないだろう。

「ふ〜ん。そういえば由お姉ちゃんは誰かと付き合ったことあるの?」

「さ〜て、そろそろ急がないと皆首を長くして待ってるよ〜」

どうやら由お姉ちゃんも俺と同類だったらしい。

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