《先輩はわがまま》12
「よいしょ」
私はいつものように彼に抱きつき、目を瞑る。
やっと彼と人同士になり、半同棲までしていると言うのに、彼全く私に手を出そうとしない。
時々、本當に付いているのだろうかと不安になる。
「ばーか」
彼への不満をつぶやきながら、私は彼の頬をつつく。
そんな事をしても彼は起きる気配すら無く、彼は気持ち良さそうに眠っている。
こうして寢顔を近くで見るようになってまだ二日、前まではこんな関係になるとは思ってもいなかった。
彼と出會ってもう一年以上が過ぎると考えると、時間が経つのはあっという間なんだと改めて思う。
「昔は全然タイプじゃなかったのになぁ~」
まさか自分がここまで彼を気にるなんて、考えても居なかった。
鈍な普通の學生、それが彼だった。
でも、基本的に格は真面目で、誰にでも優しい。
彼はそんな人間だった。
「ま、は惚れた方の負けだって言うしね……おやすみ……」
私はそう呟くと、彼を抱きしめながら眠りに付こうと瞳を閉じる。
その瞬間、彼は私の方にを向き直してきた。
よほど疲れていたのか、彼は全く目を覚ます気配が無い。
「もう……本當に疲れてたんだ……」
私は彼を正面から抱きしめる。
こうして正面から彼を抱きしめるのは初めてかもしれない。
今日はいつものバイトよりも時間が長かった、その後にも々とあったらしいから、余計疲れたのだろう。
私は起きたら彼がどんな反応をするのかを楽しみにしながら、そのまま彼を抱きしめて再び目を瞑る。
「きゃっ! ちょっ……何?」
眠ろうと目を瞑った瞬間、彼が急に私を抱きしめてきた。
それ自は嬉しいのだが、問題は彼が私のに顔を埋めていることだった。
「んん~……」
「あっ……ちょっと……ん!」
なんで睡している今日に限って、彼は積極的なのだろう。
私は、彼にを弄ばれ、寢るに寢られない。
しかも彼は寢ていて、無意識なので厄介だ。
「な、なんで起きてる時にしないかなぁ……ん!」
寢る事によって、男の本能的にの母の象徴である、を求めてくるなのだろうか?
そんな事を考えている間も彼は、私から離れようとはしない。
「い、いい加減に……って、ばか! そこは……」
睡の彼は寢ている間だけ、普通にエッチな大學生になるようだった。
知らなかった私が、この後どうなったかは、想像にお任せします。
*
「先輩、なんですか?」
「何も言ってないよ?」
「言ってないですけど、無言で俺の背中にくっついて來てますよね?」
大學が終わり、俺は部屋に帰ってきて、洗濯を取り込んでいた。
すると、突然先輩が俺の背中に張り付いてきたのだ。
「暇、なんかしよ」
「じゃあ手伝って下さいよ、先輩の下著もあるんですから……」
「え~、面倒よ」
「何が悲しくて、アンタの無駄にエロい下著を俺が干さなきゃならんのだ……」
「彼氏だから?」
「普通同棲してたら、そこら辺気を使うもんじゃないんですか!」
「だって、次郎君が全部やってくれるし~」
「貴方がやらないからですよ……はぁ、じゃあコレが終わるまで待って下さい」
「仕方ないな~」
「それはこっちの臺詞です……」
俺は急いで洗濯を取り込み、先輩の要に応える。
時刻は夕方の五時、既に辺りは暗くなっており、外は晝間よりも寒くなっていた。
「んで、何します?」
「ゲームでしょ?」
「當たり前のように言いますね……」
「いや?」
「外に行こうと言われるよりはましです。何やります?」
俺は未だに背中に抱きつく先輩に、ゲームのカセットを見せながら尋ねる。
最近二人でやるゲームは、便転堂のゲームが多い。
大人も子供も楽しめるゲームが多く、手軽に出來るのが個人的には良い。
「最近ハマってる、バトルロワイヤルのゲームしよ、アレ面白いのよね~」
「あぁ……武拾って、その武で100人と戦うあれですか? 良いですけど、先輩ってFPS系のゲームもやるんでしたっけ?」
「大好ね」
「ちなみに好きな銃の種類は?」
「スナイパーライフル」
「あぁ、男を狙いうちしてますもんね……現実でも」
「別にしてないわよ、したけど目の前の誰かさんにはなかなか弾が當たらなかったわ」
大學で、先輩は人気者だ。
可い見た目と貓を被った態度に、男もも大騙される。
それを狙ってやっているのだから、ある意味現実でもスナイパーかもしれない。
俺は早速ゲームのハードをテレビの橫から持ってくる。
最近登場した、テレビに繋いでも攜帯用としても遊べると言う便転堂の最新機種だ。
「そう言えば先輩もハード持って來てたんですね」
「當たり前よ! 並んで整理券を貰って、やっと手にれただから、著あるのよね~」
「俺は無理矢理付き合わされましたけど……」
このハードは、発売當初は発的な人気で、何処のお店にも品薄の狀態が続き。
ネットでは価格が高騰していた。
その為、俺は先輩に無理矢理朝っぱらから呼び出され、二人で電気屋やゲームショップに並ぶと言う事を一時期やっていた。
まぁ、俺もしかったからそれは良いのだが、朝があまり得意では無い先輩は並んでいる間に寢てしまうので、俺はそんな先輩の支えになっていた。
先輩は良くも悪くも注目を集めるので、俺にとってあの時間は地獄だった。
皆、俺と先輩を見てくるものだから、恥ずかしくて癥が無い。
「でも、買って良かったでしょ? 二人で隨分やったじゃない」
「あぁ、そうでしたね……購出來た喜びで、その日のうちに、二人で一本クリアしましたもんね」
「一年経つけど、まだ人気よね~、このゲームもかなり流行ってるみたいだし」
「俺まだやったことないんですよ、先輩結構やったんですか?」
「まぁ、十時間くらい?」
「一日じゃ無いですよね?」
「…………」
「ゲームはほどほどに」
「はい……」
気まずそうに答える先輩を見ながら、俺はゲームをインストールし設定を始める。
アカウントを作ったり、ゲームのダウンロードにし時間は掛かったが、無事終わり二人でゲームを楽しむ。
「先輩! 後ろ! 後ろにいます!!」
「大丈夫、もう倒したから」
「流石っすね……って! 俺がやられた!!」
「もう! 余所見なんかしてるからよ!」
「しょうが無いじゃ無いっすか! スナイパーに狙われたんですよ!」
「チーム戦だから、私一人だとキツいの! あ、手が空いたならココア作って、飲みたい」
「はぁ……はいはい」
そう言って俺は、先輩の為にココアを用意する。
なんだかんだ言っても、こうして先輩とゲームしている時が一番楽しいのかもしれないな……。
あれ、なんで俺こんなに女子から見られるの?
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