「良く院中の子供にも泣かれてしまうんだが……そんなに怖いだろうか？」

「い、いや……その……正直…し……」

俺は恐る恐るそう答える。

すると、子さんのお父さんは大きな溜息を吐き下を向いてしまう。

「そうか……私の表が問題か……」

「いっつも眉間にシワを寄せて、難しい顔ばっかりしてるからよ」

「仕方ないだろ、こう言う顔なんだ」

あぁ、そう言う顔なのか……そうとわかると安心するが、表が固定されているぶん、表がわからないので、それはそれで厄介だと思う。

そんな話しをしている途中、リビングのドアが開いた。

そこには、部屋著に著替えた子さんが、頬を膨らませて立っていた。

「話しが長いのよ！　あんまり次郎君を困らせないで！」

「別に困らせてなどいない、ただお前の事を聞いていただけだ」

「もう、だから帰ってきたく無かったのよ！」

子さんはそう言って、俺の隣に座る。

俺の飲んでいたコップを奪い取り、ビールを一気に飲み干す。

「あぁ～……味しい……」

「子さん、それ俺のです」

「良いでしょ、代わりの注いであげるから」

そう言って子さんは、俺のコップにビールを注ぐ。

その様子を子さんの両親は、ジッと見ていた。

なんだかもの凄くやりにくい……。

「娘の彼氏と二人で酒を飲むのを楽しみにいたんだが……やはり娘と家に邪魔をされてしまったな」

「あはは……まだチャンスはありますよ」

子さんは俺の隣に陣取り、自分のコップを持ってきてビールを飲み始める。

先輩のお父さんは、ビールからウイスキーに飲みを変更し、ガブガブと飲み始める。

先輩の両親はお酒が強いらしく、結構な量を飲んでいるはずなのに全く酔っ払う気配が無い。

そんな両親から生まれた、子さんはと言うと……。

「うぅ……次郎く～ん……もっとお酒ぇ……」

「子さんは相変わらずですね……」

そう、子さんは直ぐに酔っ払う。

缶ビール三本目で、顔を真っ赤にして俺に寄りかかって來る。

不思議な事に、この人は大きな飲み會の席ではこうならない。

必ずと言って良いほど、俺と二人で居る時か、だけで飲んでいる時しか、こうはならない。

「ん～…」

「眠くなって來ました？」

「うん……寢る……」

子さんはそう言って、俺の膝を枕にして眠り始めてしまった。

つまみとビールで足りたのだろうか？

「あらあら、うちの馬鹿娘はもう潰れちゃったの？　折角お夕飯も気合いをれたのに」

「まぁ、疲れていたんだろう、寢かせて置いてやりなさい。それよりも岬君に食事を」

「あ、すみません、何もしなくて……」

「良いのよ、貴方はお客様なんだから。それに娘と是非とも結婚してしいもの」

「こら、あまりプレッシャーを與えるものでは無いぞ」

「あら、でも私には何となくだけど、うちの馬鹿娘には岬君しか居ないと思ってるのよ？」

「だから、そう言うプレッシャーを……」

やはり子さんのお母さんは、俺と子さんが結婚する事をんでいるらしい。

子さんは綺麗だし、格さえなんとかすれば十分魅力的なだ。

対して俺は……何の取り柄も無い普通の學生。

俺の方が捨てられるのではないかと思う事も多い。

大晦日の特番をリビングの大きなテレビで、先輩の両親と見ながら、俺はふとそんな事を思う。

しかし、俺は決めたのだ。

子さんが俺から離れるていくその日までは、俺がこの人の支えになろうと。

「しかし、この番組も長いことやっているな……笑ったら罰ゲームでケツバットなんて、どれくらい痛いんだろうな」

「みんな結構痛がってますよね」

「お父さんはこういうゲームは得意ね」

「そんな事はない、私だって腹を抱えて笑うことくらいある」

「25年の付き合いだけど、私はそんな貴方を見た事ないわよ」

「そうだったか？」

なるほど、子さんのお父さんはあまり笑わないのか……俺は仲良くなれるだろうか？

子さんのお母さんがつくってくれた食事は凄く味しかった。

年末で、しかも俺が來るからと、手の込んだ料理が多かった。

しかも、俺が無理して全部食べなくても済むようになのだろう、量も丁度良い。

「料理味しいですね、かなり手の込んだばっかりで」

「そう言って貰えると嬉しいわ」

子さんのお母さんの食事を楽しみながら、テレビを見ていると隣で寢ていた先輩が目を覚ました。

「ん……今何時？」

「夜の10時過ぎた位ですよ、子さんもお母さんのご飯食べたらどうですか？」

「あら、お母さんだなんて呼んでくれるのね」

「あ、いや！　すいません……つい」

「良いのよ、本當にそうなるだろうし」

「あ、あはは……」

ついつい口がってしまった。

お母様とか、子さんのお母さんとか言えば良かったかな？

そんな事を考えていると、先輩のお父さんが俺をジッと見てきた。

なんだろうか？

もしかして何か問題があっただろうか？

それならば、もう一度謝った方が……。

などと考えていると、先輩のお父さんが口を開いた。

「岬君」

「は、はい？」

「……お父さんと呼んで構わないよ」

「あ。は、はい……」

どうやら自分も呼んでしかったらしい……。

子さんも目が覚めたようで、食事を始めた。

「子さんのお母さん、料理お上手ですね」

「まぁ……確かにそうね……」

「子さんもしづつ覚えましょうね」

「う……わ、わかってるわよ…」

嫌そうな顔をする子さん。

いや、だってピーマンの芯を食べようとする人だもん、そりゃあ基本くらいは覚えてしくなるよ……。

食事を終え、俺と子さん家族は再びソファーで酒を飲みながら大晦日の特番を見る。

「この蕓人は、今年良く見たな」

「人気が有りましたからね」

「どうせ一発屋よ」

終盤に差し掛かった人気バラエティー番組を見ながら、俺たちはそんな話しをする。

子さんは今度はワインを飲み始め、俺は子さんのお父さんと同じウイスキーを水で割って飲んでいた。

流石にし良いが回って來た。

子さんは完全に出來上がっている。