《甘え上手な彼》♯28
*
「今日、返事をすることになった」
「そうか、おめでとう」
休日明けの學校のお晝休み。
前回に引き続き、高志達四人は屋上で食事をしながら、優一の話しを聞いていた。
優一を尾行していたことは、三人だけのになっていた。
「なにを言ってるんだ? 斷るに決まってるだろ」
「は? お前彼しいって言ってたじゃないか」
「それにあんなに可かったら、別に問題ないんじゃない?」
高志と紗彌の言葉に、優一はフンと鼻を鳴らすと、顎に手をあて遠くを見つめながら言う。
「いや、なんか違うなって……あの子には、もっとふさわしい奴が居るんじゃないかって……」
「格好つけてないで、本當の事言えよ」
高志はあからさまに作ったような言葉を口にする優一に、呆れた様子でそう聞く。
すると、優一は溜息を一つ吐き、購買で買ってきた牛を飲みながら、高志達に話す。
「あの子が好きなのは、喧嘩してる俺なんだよ……」
「? どういう事よ?」
尋ねたのは、由華だった。
あれだけ良いじでデートしていたにも関わらず、なんでこのような結果になったのか、三人は気になっていた。
「あの子とこの前デートしてさ……確かに楽しそうなんだけど、なんか違和があって……んで、帰り際に聞いてみたんだよ。俺の何処が好きなの? ってな」
「そしたら、なんて答えたんだよ?」
「強いところって言われた……」
「あぁ……」
高志は優一の言葉で、なぜ優一が告白を斷る事にしたかがわかった。
しかし、紗彌と由華は「それがどうかしたの?」と言うじで、きょとんとしている。
そんな二人の為に、高志は優一の許可を取り、説明を始める。
「こいつ、元々は結構強い不良だったんだよ」
「「え?! 絶対噓」」
「そこでハモるなよ! 本當だわ!」
よほど想像が付かなかったのだろう、紗彌も由華もかなり驚いていた。
「一匹狼っていうか、結構強くて有名で、まぁ々あって今はこんなんだけどな」
「おい高志、こんなんってなんだ、こんなんって!」
文句を言う優一を放っておいて、高志は説明を続ける。
「要するに、こいつはそんな昔の自分が大っ嫌いなんだよ」
「そういうことだ……強いところって言うのは、俺が喧嘩してた時の面影……今の俺を
好きになってくれた訳じゃない……」
何かを思い出すかのように、優一は斷る理由を話す。
優一の昔の強さと今の強さは意味が違う。
それをわかってくれる人で無ければ、優一は彼にする気がなかった。
「そうなんだ……ん? でもまって、じゃあなんで八重君も元不良?」
「俺はそんな悪い子じゃないよ、こいつとは……まぁ、いろいろ合ってな……」
「あったなぁ……々」
「ほうほう、男の友的な?」
「「いや、そんなは一ミリも無い」」
「そんなハモら無くても……仲良いの? 悪いの?」
質問してきた由華に、高志と優一は真顔で聲をそろえて答える。
「ま、中學時代にこいつと一緒に居ることが多かったってだけだよ。気がついたら進學先までいっしょだった」
「腐れ縁っていうか、気がついたら一緒にいる関係だな」
互いの顔をみながら、優一と高志は互に答える。
その様子を見て、由華と紗彌も顔を見合わせて笑う。
「なにか可笑しな事言ったか?」
「ウフフ、なんでもないわ」
「? 紗彌?」
由華と紗彌の表の意味が理解できず、高志は首をかしげる。
*
放課後、高志は紗彌と由華に連れられて、育館の裏に來ていた。
目的はもちろん、優一の告白の返事を見守る為である。
「またここかよ……」
「芹那ちゃんはまだ見たいね」
「そうみたい、約束の時間まで、あと數分あるし…」
三人は育館裏の倉庫の裏に隠れながら、優一の様子を見ていた。
優一は壁に寄りかかりながら、スマホを弄り、芹那を待っていた。
「あ、來たわよ」
「ほんとね! 可そう……今から振られるのにあんなニコニコして…」
「可そうと思うなら、二人きりにしてあげるべきなのでは?」
振られるところを覗き見られる。
當人だったら、そんなの絶対に嫌だろう。
高志はなんだか罪悪をじながら、優一と芹那の様子を見る。
「あ、あの……返事を……聞かせて下さい!」
「………俺は、君が思ってるほど、やさいくない……だから……」
「知ってます! でも、本當は優しいこともしってます!」
「そんな事ないよ……悪いけど、俺は君とは付き合えない。ごめん」
優一は言い切った。
しっかりと頭を下げて、芹那に告白の返事をした。
「な、なんでですか!」
芹那は、必死にそう尋ねる。
優一は真剣な表で芹那を見ながら、ハッキリと言う。
「君は俺の強いところが好きだって言った……正直、俺は喧嘩が強い自分が嫌いなんだ……悪いけど、自分の嫌いな部分を好きな人とは付き合えない。ごめん」
優一にしては、いつにも増して真剣だった。
本當に真剣に彼の事を考えて、答えを出したのだろう、表もどこか悲しげだった。
そんな優一に芹那は何と言うか、覗き見をしている高志達三人が張した面持ちで見ていると、芹那は優一の顔を見て言った。
「喧嘩? いえいえ、私は力強い貴方が好きだって言ったんですよ?」
「え?」
(((え????)))
當人である、優一はもちろん、隠れていた高志達三人も首を傾げる。
それは一どう言う意味なのだろうか?
芹那以外のその場に居る四人が、説明を求めていると、芹那は話し始めた。
「わ、わたし……じ、じつは結構なM質で……められのとか、痛いのとか……大好きななんです~」
「え…っと……あの?」
をくねらせながら、芹那は頬を赤らめて吐息をらす。
何やら要すがおかしいと、高志達も見ていた。
「駅前で、那須さんの力強い蹴りを見て……一目惚れしたんです……この人に蹴られたいって……」
「まて! なに? どう言う事?! 俺すごい恐怖を今じてるんだけど!?」
「はぁ……はぁ……那須さん……私のご主人様に……是非」
「変態だぁぁぁぁ! しかも俺の苦手なタイプの!!」
優一はそうびながら、芹那から距離を置き始めていた。
倉庫の裏で聞いていた三人も開いた口が塞がらない狀態だった。
「まて! 俺にその趣味は無い! それにの子をめるなんて出來ない! それこそ俺以外の趣味の合う男と……」
「那須さん以外には居ません! 私は那須さんを本気で好きですし! ほ、本気で……めてしいと……」
「高志ぃぃぃ!! そこに居るんだろ!? 頼むから助けてくれ!! 俺この子苦手だぁぁぁ!!」
助けを求める友人の聲を高志はあえてスルーした。
倉庫の裏で話しを聞いていた高志達三人は、気まずそうな顔をしながら、互いに顔を合わせていた。
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