《甘え上手な彼》♯38
*
文化祭當日、初日は一般公開では無いため、それほど人も來ない。
來るのは、先生や他のクラスの生徒だけだろうと、暇であろうと予想していた、高志のクラスは、まさかの行列に驚いていた。
「お、おい! 今日って初日だよな? なんでこんな忙しいんだ!!」
「多分、珍しさで最初にきた三年のお姉様方が広め回ったんだろうよ、彼氏の浮気の証拠を教えたら隨分機嫌良くしてたし」
「でも、多過ぎだろ! 提案した俺もびっくりだよ!!」
高志達の店の仕組みはこうだ。
まずは客を數名を教室と空き教室にれる。
一回にお客さん四人れ、一人に対して男二人づつが対応する。
グループのお客さんの場合は、その都度メンバーを増やし、容によってのメンバーチェンジも行う。
「お、おれ……好きな人が居なくて……出會いがしいんです」
「なるほど……えっとこういう場合わっと……」
「あの何を見てるんですか?」
「営業マニュアルだ、気にすんなって」
「おう、これだ。校ランキング決定版、この子とかどうだい? なんなら今から紹介出來るよ」
「え! 本當ですか!!」
「あぁ、こいつが知り合いなんだよ」
そう言って、依頼をけていた土井(卓球部)は、一緒に擔當していた子を指さす。
「あぁ、この子ね、いいわよ。今丁度フリーだし」
「ほ、本當ですか!!」
「あとは君が頑張って落とせよ、応援してる」
「あ、ありがとうございます!!」
「テンションはあがった?」
「メッチャ上がりました!!」
こんなじで、お客のテンションを上げる事が出來たら、報酬をいただくというシステムだった。
報酬は容によってまばらで、基本は500円がスタートだった。
そして、現在高志と紗彌が擔當しているお客さんは……。
「実は…私彼と別れようと思ってるんです。彼ったら、酷くて」
「俺が悪いみたいに言わないでくれないか? 僕は君のそう言うなんでもかんでも、僕を悪者にするその格が嫌いなんだよ」
カップルのテンションを上げると言うミッションをこなしていた。
この依頼に関しては、クラスで唯一のカップルである、高志と紗彌の二人が対応する事になり、二人は容を聞いて、どうするべきか考えていた。
「えっと、つまりテンション上げて、ラブラブになって、文化祭を楽しみたいと?」
「正直、上げれるもんなら上げてみろってじですね、俺は文化祭で新しい彼を見つける予定なので」
「私も文化祭で新しい彼を探すの、だからこれは最後の思い出ってこと」
完全に破局が決定しているカップルのテンションをどう上げたら良いかを考える、高志と紗彌。
「紗彌、どうする? ていうか、俺たちもこんな風になるのかな?」
「大丈夫、高志が私を嫌いになっても、私は高志の事をずっと好きだから」
「は、恥ずかしい事をお客さんの前で言わないでくれよ! そ、それに……俺も紗彌を嫌いになるなんて……考えられないし……」
「高志……」
「紗彌……」
「ちょいちょい! 何二人の世界にってるんだよ!」
話しに夢中で接客中だった事を忘れ、イチャつく紗彌と高志にカップルの彼氏の方が言う。
「あぁ、すいません、そっちと違って、こっちは上手くいってるもんで」
「「喧嘩売ってんのか!」」
「だって、貴方たちと違って、私たちは仲良いし」
「「黙れバカップル!!」」
「隨分息ぴったりですね」
「「そんなの偶然だ(よ)」」
「本當に?」
「「本當だ(よ)!!」」
そんな二人を見て、高志と紗彌は笑みを浮かべながら、言う。
「なんだ、仲良いじゃないですか? 息もぴったりで」
「そ、そんな事……」
「ぐ、偶然だ……」
「そうなんですか? まぁ、確かに彼さんは結構格キツそうですもんね」
「はぁ? アンタ喧嘩売ってるの?」
高志はカップルの彼の方を見てそう言う、すると彼氏の方が眉間にシワを寄せて続ける。
「何も知らねーくせにそんな事言うんじゃねーよ! こいつは意外と優しい格してるんだよ!」
「彼氏さんの方は、を大切扱わなそうですね」
「うるせぇな!!」
今度は紗彌が、カップルの彼氏の方にそう言う、そうすると今度は彼の方が、紗彌に向かって言う。
「はぁ?! 意外とこいつはめちゃくちゃ気が使えるいい男だし! あんたんとこのただの優男(やさお)とは違うし! 本當に私を思って々言ってくれたし!!」
そう彼が言い終えると、二人はハッと気がついた。
なんで嫌いなはハズなのに、こんなにムキになっているんだろう?
なんで嫌いな相手を擁護(ようご)したのだろう?
二人は互いに見つめ合い、互いに尋ねる。
「「な、なんで!!」」
「息ぴったりじゃないですか……互いの気持ちも」
高志のそのこと言葉で、二人は互いの気持ちを理解した。
まだ相手は自分を思ってくれている、思っているからこそ、別れることに抵抗して、相手に迷を掛けないようにしている事に……。
「もしかして……君は、俺が別れたいって言ったから……そんな態度に……」
「ち、違う! 私が貴方とはもうやっていけないって言ったから……気を使って、別れを切り出してくれたの?」
些細な食い違いが、互いに間違った方向に気を使っていた事に気がついた二人。
互いを思うあまり、このような結果になった事に気がつき始めた二人に、高志は言う。
「本當は、相手の事をそこまで考える位、お互いにまだ好きなんじゃないんですか?」
そんな高志の言葉で、二人のは発した。
「うわぁぁぁ!! ごめんよぉぉぉ本當は嫌だった! でも、君が僕といると不幸だって言うから!! 僕は……僕はぁぁ!!」
「うわぁぁ!! 私もごめんなさい!! 貴方みたいな良い人に、私は釣り合って居ないと思ったら……私は……私はぁぁぁ!!」
二人は涙を浮かべながら、互いに互いを抱きしめる。
そんな二人を見て、問題が解決して良かったと、紗彌と高志は顔を合わせて笑みを浮かべる。
「ありがとう、おかげで彼の本當の気持ちをすることが出來た」
「私も、彼がどれだけ私を大切にしているかを知ることが出來たわ」
二人は落ち著きを取り戻し、互いに手を握りながら、紗彌と高志に禮を言う。
「いえいえ、俺たちもお二人みたいなカップルになれたら良いなって、途中からそんな風に思ってました」
「そうね、私も甘えてるだけじゃなくて、高志の事をもっと考えてあげなくちゃって思っちゃったわ」
「紗彌……」
「高志……」
再び高志と紗彌は見つめ合い、自分の世界にって行く。
「あの、良い雰囲気のとこ悪いけど、まだ僕たち居るから」
「あ、すいません」
「つい……」
「噂通りのお店だったわ、これで私たち、文化祭を思いっきり楽しめそうよ」
「それは良かった、テンション上がりました?」
「「最高よ(だ)」」
「本當に息ぴったりですね」
そう言い終えると、二人はニコニコ腕を組んでお金を手渡し、去って行った。
お禮だと言って、提示した料金の1.5倍の料金を支払って行き、そのカップルは満足そうに教室を後にした。
「喜んでたな」
「そうね、良いわね……ああいうの」
「あぁ……俺たちも負けてないだろ?」
「ウフフ、そうね……」
カップルを見送った後、紗彌と高志はそんな話しをしながら互いに笑い合う。
「おいコラそこのバカップル!! イチャついてないで働け!!」
「次のお客さん來るわよ!!」
そんな二人に、クラスメイトは聲を上げる。
「仕事するか」
「そうね……休憩になったら、一緒に學校周りましょ?」
「あぁ、そうだな」
そうして二人は、また別なお客さんの対応を始めた。
*
「フッフッフッフ……勝ったな」
「金を數えながら、嬉しそうに言うな、犯罪臭がする」
一日目の営業が終了し、優一は売り上げを數えながら笑みを浮かべる。
かなりの客りだった為、収益も相當あり、クラス賞も夢では無くなってきた。
一日目は、最初から午前中だけの営業と決めて居たため、営業は午前で終了したが、それでもかなりの収益だった。
「最初は、なんだその案。なんて思ったけど、中々繁盛するな」
「俺をなめるなよ高志? 俺が全力を注いでいるんだ、この収益は當たり前だ」
皆は他のクラスの出しを見に行き、今は高志と優一の二人が教室に殘っていた。
紗彌も由華とお晝を買ってくると言って、今は居ない。
「これで、俺は秋村のクラスに余裕で勝てる! フフ……ハー八ッハ!!」
「そうかよ……俺としては、秋村さんを応援してるんだが……」
「なんだと!」
「まぁ、それは置いといて、俺もその収益に貢獻してやる」
「おい! 置いておくな!!」
「俺のテンション上げてくんね?」
「話しを聞けぇぇぇぇ!!」
話しが食い違う中、高志はとりあえず優一を落ち著かせて、改めて話しをする。
「それで、俺の頼みが……」
「なんで、敵かもしれない奴の頼みを聞かなきゃいけないんだよ」
「金は払うぞ?」
「う……なら、客として接してやろう……んで、お前はどうすればテンションが上がるんだ?」
「三竹輝の企みを知りたい」
「? なんだいきなり。あのイケメン君がどうかしたのか?」
高志はそこで、昨日とその前日の屋上での話しを優一にした。
「なるほどな……確かにあいつなら、そう言う事をしてもおかしくない。人気もあるし、ルックスも上の上、おまけに頭も良い」
「正直、紗彌が取られるとは思わないけど、俺は一応彼氏だからさ……」
「対抗したいと?」
「まぁな、紗彌には俺が居るって……わからせてやりたい」
「それで、三竹がどうやって宮岡に好きって気持ちを証明しようとしてるか、調べてしいと? んなもん、簡単だ。恐らくだが、二日目の野外イベント、學生のびを利用するんだろう」
「なんだそれ?」
「去年もあっただろ? 外のグランドに設置されたステージで、大聲で々な事をぶあれだよ。毎年一人は誰かへのをぶから、今年は三竹がぶんだろうぜ?」
「なるほどな……全校生徒の前での公開告白。しかも相手は彼氏が居る。にも関わらず全校生徒の前で告白するんだから、多くのギャラリーを味方に出來るって訳か……」
「そう言う事だよ……ほら、教えたんだから、金」
そう言って優一は高志に金を要求する。
「冷てー奴だな……対策とかも一緒に考えてくれないわけ?」
「秋村の味方をお前がするなら、お前は俺の敵だ」
「はいはい、まぁでも、これは俺も自分で考えようと思ってたし……」
高志はそう言いながら、優一に500円を手渡す。
「良い案は浮かびそうか?」
「あぁ、まぁな……」
高志はそう言って優一に笑いかける。
すると、それを見た優一も高志に笑みを浮かべて言う。
「負けんなよ」
「あぁ」
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