《草食系男子が食系子に食べられるまで TRUE END》食系の妹
 凜と慎が、リビングで話し合っている丁度その時間、雄介は風呂場の湯に浸かっていた。
「フゥ〜、良い気持ちだな〜」
 湯に浸りながら雄介は最近の出來事について考えていた。
「思えば、加山が俺に告白してきてから、ろくな事が無いな。」
 加山を探して町中を歩き回ったり、不良と喧嘩したり、スマホが壊れたり。そんな事を考えながら雄介は湯に浸かっていた。
「はぁ〜、最近良いこと無いよなぁ〜」
「そうなんですか?」
「そうだよ。加山がいるとろくな事が……って、え?」
 雄介が獨り言をつぶやいていると、返ってくるはずの無い返答が返ってきた。
「どうしたんですか?雄介さん?」
 雄介が聲のした方に向き直ると、そこにはバスタオルを巻いた凜が立っていた。
「凜ちゃん!!何してるの!!」
「え?雄介さんとりたいな〜って思って。ダメですか?」
 可らしく首を傾けながら雄介に聞く凜。
「いや!ダメでしょ!!男となんだから!それに慎だっているんだよ!!!」
「お兄ちゃんが良いって言ったよ?」
 「あいつ……何考えてんだよ…」
 凜と口論している間も雄介は凜の姿に目がいってしまう。中學生にしては中々膨らんだや細い手足など、がもう子供ではなくのになりつつあることを強調していた。
「なんでも良いけど、俺はもう上がるから……」
「え、いっしょにりましょうよ〜」
「うわっ!ちょっと!」
 雄介が湯船から上がろうとした瞬間、凜がそれを阻止しようと雄介の腕を摑んできた。
「まぁまぁ、良いじゃ無いですかたまには!」
「ちょ…ちょっと!凜ちゃん離して!いろいろとマズイでしょ!」
「大丈夫ですよ、そんな事より濡れたまんまだと風邪引きますよ!早く浴槽にってください!!」
 次第に凜の引っ張る力が強くなっていく、雄介は前をタオルで隠しながら必死に浴室の外に出ようとしている。
「風邪引く事心配してるんだったら離してくれないかな!」
「浴槽に浸かればあったかくなりますから、我儘言わないでください!!」
「なんで俺が聞き分け無いみたいな空気になってるの!!」
「良いじゃ無いですか!男の人だったら喜ぶところですよ!!」
「俺はそこらへんがしだけ特殊なのっ!!」
「あっ!!」
 雄介は凜の手を振りほどき、慌てて浴室を出てリビングに向かった。
「おい!慎!!」
「ん?なんだよ、そんな格好で。」
 慎はソファーでスマホをいじりながらくつろいでいた。
「なんだじゃねーよ!妹に何させてんだよ!」
「何って、あれはあいつの意思だよ。俺は別になんも言ってねーよ。」
「噓つけ!!兄弟揃って人をからかいやがって!!」
「噓じゃねーって、全く疑いやがって、大俺がお前に特になるような事するかよ。」
 慎はそう言うとスマホに目を戻す。
「俺にとってはなんの特にもなって無いんだが」
「凜のあられもない姿を見たじゃ無いか」
「べ…別に見てねーよ!!」
 慎の問いに雄介は浴室での先ほどの景を思い出し頬を赤くする。
「まぁ、そんな事は良いから服著ろ。風邪ひくぞ」
「あ……」
 雄介は自分の格好に気がつき、急いで前を隠した。
「お前早く言えよ!」
「気付かないお前が悪い、気悪いもん見せやがって」
 雄介は急いでパンツを履き、寢巻きに著替えた。
「はぁ〜、これじゃあ家にいるのと変わんねーよ……」
「それはそれは羨ましい限りで〜」
 雄介が著替えを終えてうなだれていると、慎がニヤニヤしながら雄介に言う。雄介は、こいつはまたからかって來た……そう思いながらため息を一つ吐いた。
「もー、雄介さん急に出て行っちゃうんだもん……」
 リビングのドアから、風呂から上がった凜が聲をかけてきた。
「凜ちゃん、からかうのはやめてくれ。びっくりしちゃうだろ、あんな姿で……」
「からかってませんよ〜。ただ一緒にお風呂にりたかっただけですよ〜」
 凜は話しながら雄介の隣に腰を下ろした。雄介は凜からし離れてソファーの端っこの方に移する。
「一緒にってところが問題なんだよ。ハァ〜、流石は兄弟ってじだな……」
「お〜い、どういう意味だ〜」
「そのまんまの意味だよ」
 慎はソファーに寢転がりながら目線だけを雄介に向けて話してくる。慎の手元にまだスマートフォンが握られていた。
「そう言えば、お兄ちゃんさっきから誰と連絡とってるの」
「ん?學校の先輩だけど」
「お前さっきからスマホいじってたけど、そう言う事か。先輩って誰だよ?」
「お前もよく知ってる人だよ、まぁ気にするな」
 慎はそう言うとスマートフォンを機の上に置き、軽くをばした。
「さて、暇だしなんかするか、雄介なにするよ?」
「俺に言われてもな…」
「この前の格ゲーの続きでもするか?」
 慎が雄介に尋ねるのとほぼ同じタイミングで、玄関の方からインターホンの鳴る音が聞こえた。
「こんな時間にお客さんか?」
「まさか……いや、まさかな……」
「おい、どうしたんだ慎?」
「ん?いやなんでもない、出てくる。」
 そう言うと慎はリビングを出て玄関先へと向かって行った。
「誰が來たんでしょうね?雄介さん」
 リビングに雄介と凜の二人きりになった瞬間に、凜は雄介の隣にピタッとくっ付き距離を詰める。
「凜ちゃん?……どうしたの?」
 雄介は若干戸うが、相手が凜という見知った相手と言う事もあり、そこまで過剰に反応すると言う事もなかった。
「雄介さん、変わりましたね」
「変わった?どこが?」
 凜はし不満げに雄介に言う。
「だって、昔は私が近付こうとすると意識して逃げて行ったのに、今こんなに近ずいても平然としていて……」
「それは昔の事でしょ、流石に慣れたよ」
 雄介がそう言うと、凜はし不服そうにジト目で雄介を見つめていた。
「じゃあ雄介さんは、私の事どう思ってるんですか?」
「え!いきなりなにを……」
 凜は更に雄介のに引っ付き、上目ずかいで聞く。雄介はその仕草にしドキッとしたが、相手が昔から知っている相手と言う事もあり、雄介は冷靜に対応する。
「私も聞きたいわね〜」
 リビングのドアの方から聲が聞こえてくる。雄介が聲のした方に振り返ると、ドアの前に加山が立っていた。制服から私服に著替えてあったところを見ると、どうやら一回自宅に帰った後のようだった。
「お前!なんでここに!!」
「雄介の事が心配になってきたのよ!それよりその狀況なに!!!」
 加山は雄介と凜が著している狀況を指差し、涙目になりながらぶ。その後ろでは慎がニヤニヤしながらその様子を見ていた。
「別になんでも無いだろ、普通に座ってるだけだ」
「著してるじゃない!その子は誰なのよ!!」
 加山は凜の方を指差しいう。凜はし加山の勢いに押され気味であったが、會話の方向が自分に向いた事によって表を変え、ムッとした表で加山の顔を見た。
「私は山本慎の妹で凜です。雄介さんとはもう長い付き合いなんです!」
「だからってそんなに引っ付いて言い訳ないでしょ!雄介は私のものなの!」
「おい、加山。誰が一誰のものだって?」
 凜と加山は言葉をわして早々に喧嘩を始めてしまった。雄介はそこに巻き込まれ、きが取れなくなってしまった。 慎はというと、先ほどからドアの後ろで笑いをこらえながらこの狀況を楽しんでいた。
「雄介さんはあなたが迷だからうちに來たんです!さっさと帰ってください!」
「そんなの雄介の照れ隠しに決まってるでしょ!本當は私にベタ惚れなんだから!」
「誰が誰にベタ惚れだって……」
 凜と加山の勢いは次第に勢いを増していき、ついには加山までも雄介の手を取り、凜と加山で奪い合いのような構図になってしまった。
「雄介!こんなところにいたら雄介の貞が危険だわ!私の家のベットの上まで避難しましょう!」
「そっちの方が怖いわ!!」
「そうですよ!雄介さん、あの人は危ないです!!私の部屋のベッドの上に逃げましょう!」
「それあんまり変わってないからね!」
 加山と凜の爭いは次第に激しさを増していった。それを傍目で見ていた慎は、そろそろ助けてやるかと思い、三人の中に割ってっいった。
「まぁまぁ、三人共落ち著けって」
「慎!なんで加山をれたんだよ!」
「雄介!それどういう意味!?」
「追い返すのも悪いだろ?それに呼んだの俺だし」
「お前、俺がなんで泊まりに來たのか覚えてるよな!」
「まぁまぁ、落ち著けって」
 慎は興した雄介をなだめる。雄介はとりあえず話を聞こうと思い、落ち著いてソファーに座りなおす。
「んで、この狀況をどうしてくれんだよ……」
 雄介の右隣には凜が左隣には加山が、それぞれ雄介の腕をガッチリ摑んで離さない。
「うーん予想通りこうなったか……」
「予想してたなら、なんで加山を呼んだんだよ!」
「まぁ、俺にも考えがあってな」
「考えってなんなんだよ!お前に助けを求めたのに、逆に悪くなってるじゃないか!」
 雄介は不服そうな顔をしながら慎に文句をいう。
「それは悪かったと思うが、俺にも々とあるんだよ」
「々ってなんだよ」
「まぁ、敵を見せてやる気を出させようと思ってな……」
 慎は目線を凜に向ける。雄介はなにを言っているのかよくわからない様子で慎の話を聞く。
「なんでも良いけど、この人帰らせようよ」
「生意気な中學生ね〜、さっさと雄介から離れなさい」
「おあばさんこそ雄介さんから離れて下さいよ。雄介さん困ってるじゃないですか」
「おばさん?私は雄介と同い年なんだけど?」
 凜と加山が火花を散らしながら爭っている間に、雄介は二人の拘束から逃れ、反対側のソファーへ移する。
「なぁ、雄介」
「なんだよ、俺を見捨てといて」
「見捨てたわけじゃねーよ。お前さ、なんで出會って間もないあいつらがあんなに言い爭ってると思う?」
「そんなの加山が凜ちゃんに喧嘩を吹っかけたからだろう?」
「そう言うことじゃねーよ。はぁ〜、あの二人はお前を取り合ってる訳だろ?」
「それは加山に凜ちゃんが対抗しているだけで、そう見えるだけだよ。ハァ〜、なんでこうなんだよ」
「この様子じゃ、凜も大変そうだな……」
 雄介は雄介で、慎は慎で、それぞれため息を吐きながら肩を落としてソファーにを預けてゆったりする。それぞれの思いが錯するなか、凜と加山の言い爭いは一時間続いた。
「んで、二人とも落ち著いたか?」
「まぁ……今日は……このくらい…で…勘弁してあげる……」
「ハァ…ハァ…なんなんですか、この人」
 凜と加山も疲れ果ててしまい、ソファーにもたれかかっている。しかし、それでも小聲でお互いの悪口を言っている様子を見ると、お互いまだ元気はある様子だった。
「まぁ、もうこんな時間だし加山泊まって行けよ」
「慎!お前なに言って……」
「ありがとう!山本くん。お世話になるわね!」
 加山の聲によって雄介の聲は途中で遮られてしまった。
「え〜、お兄ちゃんこの人泊めるの〜?」
 凜が不満たっぷりに慎に言う。雄介は凜の言葉に同意するように慎の橫で頷いていた。
「だってもうこんな時間だぜ、の子一人返すのは危ないだろ?」
「まぁ、確かにもうこんな時間か……」
 雄介がリビング時計に目をやると、時刻はすでに夜中の11時を過ぎていた。凜も時計を見て納得したのか、大きくため息をついていた。
「そんな訳で、加山はとりあえず風呂って來いよ。俺と雄介で寢床の準備するから」「そういえば、雄介さんとこの人はどこに寢てもらうの?」
「雄介は俺の部屋で、加山はお前の部屋で良いだろ?」
「えー!私この人と寢るの〜?」
「隨分失禮な良いようね、妹ちゃん?」
 凜は自分の部屋で加山が一緒に寢ることに、かなり不満がある様子で、加山の方を見て嫌そうな表を浮かべていた。その表を見た加山は、嫌味っけたっぷりに言い返す。 またしても喧嘩が始まってしまいそうな空気に、雄介は「この二人を一緒に寢かせて大丈夫だろうか?」そう考えてしまう。
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