《草食系男子が食系子に食べられるまで》第12章 後編20 草食系とお嬢様
時間が経ち、教室の方では異様な雰囲気が漂っていた。
「な…なぁ…今村?」
「ん? なんだよ渡辺? それよりそっちしっかり支えてくれ、釘が打ちづらい」
「あぁ、すまん」
渡辺は看板の端の方を持ち直し、しっかり固定されたところで、雄介が釘を打って行く。そんな姿を見つめてなぜか赤くなる渡辺。
(いやいや! 待て! 待ってくれ! なんで今村の顔を見ただけでこんなにドキドキする! あほか!!)
看板の事を雄介に謝られてからというもの、渡辺は雄介に対してドキドキするのをじていた。そんな気持ちを否定しようと、渡辺は自分の中で自分に言い聞かせる。 そんな事など雄介は何も知らず、作業を進める。
「良し、完だな」
「そ、そうだな……いった通り、あの一言は消して正解だった」
(落ち著くんだ俺! たかが一回絵を褒められただけじゃないか! 俺には一つ下の次元に嫁たちがたくさんいるんだ!)
心の中で自分の大好きなアニメのキャラクター達を思い浮かべる渡辺。   渡辺は否定したかった。まさかあのキャラと同じ気持ちをクラスの男子生徒に抱いてしまったという事実を……
「な……なぁ、今村?」
「ん? どうした?」
「いや、お前って…いつも帰ったら何してんの?」
「は? 急になんだよ……そうだな、帰ったら飯作って……」
(家庭的なんだな……)
言いかけている雄介にそんな印象をける渡辺。自然とほほが熱くなるのをじ、ブンブンと顔を橫に振る。
「あぁ、最近は良くゲームするんだわ」
「おぉ、マジか! 俺はゲームにはちょっと詳しいぜ! 何してるんだよ?」
得意なジャンルの話に渡辺は調子を取り戻し、いつものお気楽口調で雄介に尋ねる。
「あぁ、パソコンのゲームでバトルファイターオンラインってやつなんだが…」
「おお! バトファか、俺もやってるが、最近は他のゲームが面白くて最近はやってねーな……今は何のイベントやってんだ?」
「あぁ、確か……」
雄介と渡辺はゲームの話をし始める。共通の話題という事もあり、話は盛り上がる。あまりクラスの男子と関わらなかった雄介にとっては、慎以外との會話は新鮮だった。
「なるほどぉ~、まさかインしてなかった間に、そんなシステムが……」
「俺も一年以上やってなかったんだが、あんなにゲームって変わるんだなぁ…」
「しかし、今村がゲームなんて想像つかなかったぜ」
「そうか? まぁ、たまにやるくらいだが、普通に好きだぜ」
段々と距離のまっていく雄介と渡辺。
(って! なんで楽しく雑談なんてしてんだよ! 俺は今村から聞き出さなきゃいけない話が!!)
今更ながらに、當初の目的を思い出す。
「今村!!」
「おぉ、また質問か?」
「お……お前って…」
なんと言えば良いのか、何も考えていなかった渡辺は、頭の中で必死に考える。
「ど…どんなのが……好みなんだ?」
「はぁ?」
(ちがぁぁぁぁぁう!! 俺はなんで好みのタイプ聞こうとしてんだ! 加山さんとの関係をもっと追及したかったんだろうがよぉ!!)
咄嗟に口に出した言葉に渡辺は後悔し、頭を抱えてブンブンと頭を振り回す。雄介はそんな渡辺を若干変な奴だと思いながら、見ていた。
「えっと……好みってか?」
「っえ! ま…まぁ、そうだな。お前も男だったら何かあんだろ?」
「その質問、俺は答えられねーよ。を好きになった事ねーんだわ」
「はぁ?! 初もまだなのか??」
「あぁ、々と理由わけがあってな……」
雄介の発言に驚く渡辺。16年間も生きていれば、気になる子が居ても不思議ではない。しかし、雄介の場合は過去の事が原因で、に恐怖心を抱いたことはあっても的な、好きというを抱いた事は無かった。 渡辺は、なぜかを好きになった事が無い、という雄介の発言にうれしさをじていた。
「お前、本當に男か? 普通は可い子とか見かけたら、しは好みだとか思うだろ?」
「いや……ちょっとな、俺は特殊なんだと思う」
「え!!」
雄介の特殊という言葉に、渡辺はホモなのではないのかと疑うが、そうだと良いなとも同時に思う自分が居ることに、渡辺は気が付き頭を壁にガンガンぶつけ始める。
(あぁぁぁぁあ!!! 違う! 俺は違う!! ホモじゃない!!)
「お、おい。大丈夫か?」
「え?! あぁ! 大丈夫だ! こうやって頭をぶつけまくって、二次元の世界に転生すれば!!」
「行けねーから!! そんな事をしても畫面の向こう側には行けねーから!!」
雄介は壁に頭をぶつけ続ける渡辺を雄介は力ずくで止めにる。そんな事をしている間に、教室のドアが開いた。
「ほら、男子! 子のメイドだぞ~」
「ありがたく拝めよ~男子~」
廊下から、先ほど著替えに向かったクラスの子が著替えを済ませて帰って來た。
「おぉ!! 待ってました!!」
「加山さん! 加山さんは何処だ!!」
「待て! 最近俺は太刀川さんの魅力に気づき始めている!!」
「バカ者!! 一番は加山さんだろ!」
他の子には目もくれず、男子達は優子と沙月を探し始める。そんな男子達に陣は冷たい目線を向ける。
「おいコラ男子! 私達にもなんか無いのか!!」
「そりゃあ、あの二人には敵わないわよ!! でも、なんか一言あるでしょが!!」
不満をまき散らすクラスの陣。そんな様子をし離れたところで、雄介と渡辺は傍観していた。
「子帰って來たんだな。渡辺は行かないのか?」
「え? あ、あぁ…行く行く」
渡辺は妙の違和をじていた。子のコスプレ、しかもメイド服。コスプレイヤーが大好きな渡辺にとっては、真っ先に喜び、攜帯のカメラを片手に子の前に飛び出してもおかしくないはずだった。しかし、なぜか渡辺はそんな気分になれなかった。
(なんでなんだ!! 子! しかもメイド! 真っ先に特攻したいのに、そんな気分にならない……やっぱり、俺は……)
隣で一緒に様子を見る雄介の橫顔を見る渡辺。正直考えたくはなかった。認めたくはなかったが、自分が雄介を気にしだしている事に気が付き始める。
(違う……俺は、男なんだ!!)
そう自分に言い聞かせる渡辺。雄介はそんな渡辺にこう続ける。
「なんだか、慎意外の男子とこんなに話したのは久しぶりだな……」
「そ、そうなのか?」
「あぁ、俺は弁慶っていうか、若干人見知りっぽいとこがあってな……自分から他人に話し掛けるのが苦手なんだ」
「そ、そうか? 俺とは普通に會話してたと思うぞ?」
「あぁ、なんだか渡辺は話やすかった。親しみがあるっていうか、壁をじないっていうか、とにかく接しやすかったよ」
「お、おう! 俺は誰にでも親しまれる男だからな!」
いつもの調子を取り戻そうと、お気楽口調になる渡辺。そんな渡辺に、雄介は照れながら言う。
「これからも仲良くしてもらえると、助かる。俺って、友達ないから」
恥ずかしがりながら言う雄介の言葉に、渡辺は男なのにも関わらず、がキュンっとするのをじた。
(そうか……これがか……)
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