《草食系男子が食系子に食べられるまで》第12章 後編23 草食系とお嬢様
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「はぁ~、やっぱり倉前さんすごいです!」
「そんな事無いわ。誰だってし勉強すれば出來るわよ」
雄介が倒れていたのと丁度同じ頃。倉前ともう一人のメイドは、織姫の部屋に向かっていた。
「でも、三島さんもここに來てまだ一週間ですが、覚えが良くて、すごいと思いますよ」
「私なんて、全然ですよ!! 倉前さんは凄いです。私より年下なのに……」
三島咲は、以前やっていた攜帯ショップの店員をとある理由で退職し、今はこの星宮の家のメイドとして働いていた。元々、覚えは良い方だと自負していた三島だったが、そんな彼以上に、仕事が出來て覚えの良いメイドがいた。 今も、突然水道水が出なくなってしまったトラブルを、そのメイドさんがいとも簡単に直してしまったのだ。
「それよりも、なんで私までお嬢様のお部屋に?」
「三島さんには、今度から私と一緒に、お嬢様のお世話をしていただこうと思っていまして、今日は挨拶のようなものです。丁度、お嬢様の大切なお客様も來ているので、一緒に挨拶してしまいましょう」
「そうだったんですか、それにしてもお嬢様の大切なお客様って一どんな方なんですか? 最近度々來ていますが、なぜかその方が來ると、メイドは全員隠れていてくれ! って旦那様が言うので、見たことすらないんですよ」
「まぁ、その方もお嬢様と一緒で、し訳アリなんです……」
二人で話しながら廊下を歩いているうちに、織姫の自室についた。しかし、そこで二人は驚き、目を丸くする。部屋の主である織姫が居ないのだ。
「お嬢様?」
「あれ? 居ないですね。トイレでしょうか?」
倉前はそこで考える。先に雄介が部屋に向かったはずなのに、なぜ雄介も居ないのだろうかと。雄介が帰宅するときは、玄関の方で扉の音がするはずなのだが、鳴ってはいなかった。だとすれば、一二人は何処に行ってしまったんだろう? そう思っていると、眼鏡を掛けたメイドが倉前と三島の元にやってくる。
「あ、倉前さん、探しましたよ! お嬢様がお客様を追いかけて、部屋から飛び出したかと思ったら、今度はお客様が倒れて大変だったんですから!!」
「お嬢様が!! 今、お嬢様は?」
「客室です。そこにお客様と一緒に居ます」
倉前はその話を聞き、すぐさま客室に向かう。織姫が部屋を飛び出さなければならない何かが起こり、そのなにかのせいで雄介に何かがあったと考えるのが普通だろう。 倉前は駆け足気味に廊下を進む。後ろから咲も追いかけてくるが、倉前はそんなのお構いなしに客室に向かう。
「お嬢様!」
客室につき、倉前が見たのは笑顔で談笑する織姫と雄介だった。話に夢中でこちらに気が付いていないが、あの織姫が男と対面で話をしている事に、倉前は驚いた。
「とりあえず、もうしで學園祭だから、そん時し來てみろよ。なんだったら、俺が當日は案してやるし」
「學園祭ですか!! 私はアニメや漫畫の世界でしかそんな素敵イベントを知りません! 是非行ってみたいです!!」
「じゃあ、倉前さんと一緒に來いよ。俺のクラスはメイド喫茶やるから。まぁ、倉前さんからしたら、俺らのは遊びにしか見えないだろうけど」
楽しく話をする二人を見て倉前は自然と涙をこぼす。倉前は、メイドの中では最も織姫と親しく、そして長い付き合いだ。だからこそ、知っていた。本當は織姫が外に出て普通の子高生のように、遊んだり、學校に行きたがっている事を……。
「お嬢様……」
ドアのに隠れて、倉前は泣いた。あんなに楽しそうな織姫を見たのは凄く久しぶりで、目がキラキラ輝いて見えた。
「やっと、追いついた……って! なに泣いてんですか!?」
「お嬢様……織姫が……」
倉前は部屋の中を指さし、遅れてきた三島に見るように促す。三島は部屋の中の様子を見て、その想を倉前に言う。
「なんだか、楽しそうですね……じゃま、しちゃいけない気がします」
三島はそういって、倉前とは反対側のドアに隠れる。 普通の人からしたらどうって事のない事かもしれない、でも織姫からしたら大きな一歩であり、織姫の事を良く知る者からしたら、泣いて喜ぶほどの事なのだ。 倉前は涙を拭う。妹のように思ってきていた織姫の前で、泣き顔なんて見せたくなかった。だから、いつもの和らかな笑顔で倉前は部屋にる。
「お嬢様」
「あ! 倉前さん。私、學校に行ってみたいです!」
「そうですか、勇気をだしたのですね……」
「はい! これからも々大変かもしれません……でも、何もしないで閉じこもっているよりも、私は頑張る事にしました!」
「そう……ですか……」
「倉前さん? 何で泣いているんですか?」
倉前は決めていた。もう絶対に織姫の前では泣かないと、織姫の前では笑顔でいようと。でも、今日は駄目だった。織姫の嬉しそうな顔を見るたびに涙があふれてくる。
「うれしいんです……」
「え?」
「貴方から……笑顔を奪ったのは私だから……また……あなたの笑顔を見ることが出來て……」
倉前は涙を流し、笑顔でいう。 11年前、織姫が拐された時、傍には倉前がいた。助けなければと思ったが、怖くてがかず、倉前は見ている事しかできなかった。 あの時、自分がしっかりしていれば……。倉前はなんどもそう思った。元々責任の強かった倉前は、織姫の側にいるため、メイドになった。
「良かった……良かった……」
暗い部屋で一人、寂しそうにゲームをする織姫を見るのが、倉前は辛かった。でも、今はこんなにも楽しそうな顔を自分に向けてくれる。織姫を抱きしめ、涙を流す倉前。
「相當うれしかったみたいですね」
「えぇ、倉前さんでもあんな顔するのね……」
すっかり蚊帳の外になってしまった雄介と三島は、微笑ましい二人の姿を見ながら、自然と會話をわす。そして気が付く。
「あれ? よく見たら…あなたは……」
「あ! 彼氏に振られた攜帯ショップの店員さん」
「それをいうなぁぁぁぁぁぁ!!」
三島の悲しいび聲が屋敷中に響く。 もうすぐ學園祭、織姫の社會復帰の手助けになればと、雄介は考えていた。
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