《この達俺の妻らしいけど記憶に無いんだが⋯⋯》四話 湊VSレイラ
「俺、シャガルト學園一年A組己龍 湊、同じくシャガルト學園一年A組レイラ・ユートラシスからの勝負を諾する。創造神よ、我ら気高きアムラトに神のご加護を」
そう唱えたと同時、雙方の右手に宿っていたが天に飛び、それら二つのが互いにわると瞬間二人を中心とする半徑約30メートル程に、ドーム狀のバリアの様なものが展開された。
これによりデュエルの幕が落とされたのだ。
「ルールは分かってますか? 神の見る勝負では魔印を押されたどんな武や能力も相手のに直接影響を與える事は出來ない、まぁあくまで外部的なダメージは無効という訳ですけど」
レイラは今一度確かめるかの様に説明をするが、それぐらい湊も知っている。
実際この都市に來る間に武の類は勿論、使い方次第で武になりそうな道類は全て一度沒収された。
數分後それは返されたのだがティア曰く、人間には絶対に組む事が出來ないほどの複雑な魔を練り込まれた印を押されたらしい。
この都市では先ほどの様な手順を踏めば模擬戦をする事が出來る、それによって怪我をしたりする事は無い、だが痛みがないわけでは無いという事だ。
『本當に優しい子じゃの、さすが湊坊の妻に選ばれた事だけあるわい」
「絶対それは間違えだ⋯⋯まぁそれが本當で、復讐の為ってなら仕方ないけど⋯⋯」
湊は相棒にそう呟きながら、二つある剣のうちティアマトではない方を抜き去ると、し低い姿勢で構える。
「何ぶつぶつ言ってるんですか? もう勝負は始まってるんですよ!」
「お前忠告って⋯⋯どんだけお人好し⋯⋯」
「そんなんじゃありません! 一撃でケリをつけます」
レイラは顔を赤くしそう宣言、次の瞬間彼の雰囲気が変わった。
まるで獲を狙う猛獣の様に神経を研ぎ澄ました様な鋭い殺気が溢れ出す。
だがレイラは左手に持った鞘に一度刀を納めた。
その景にその場にいた全ての人が唖然とし、そして引き込まれ、息を飲む。
湊も頬をピリつかせる殺気に神経を研ぎ澄ませる。
レイラは腰を落とし────
剎那、甲高い金屬音が鳴り響いた。
時が止まったかの様な沈黙が訪れる。
「あっぶねぇ⋯⋯太刀筋ほぼ見えなかったわ」
それを破ったのは湊の聲だった。
ギリギリの所で刀との間に剣をり込ませた湊は後ろに飛び距離を取る。
そこでようやく理解が追いついてきたギャラリーから歓聲が沸き起こった。
「今のをけ止めますか⋯⋯変態さん、貴方は一何者ですか。今のは七割ほどでしたがそれでも並大抵、いやほとんどの人はろくに反応することも出來なかったはずです」
「おいおい今ので七割かよ。笑えないな。何者か⋯⋯か、そうだな⋯⋯まぁ、ただのはみ出しものだよ」
湊が両手を広げて、首を振る。
後ろでエルが「師匠は最強のアムラトです!」とんでいて正直し恥ずかしい、いや凄く恥ずかしい。
「はみ出しもの⋯⋯ですか、まぁいいです。久しぶりにし本気を出させてもらいますね」
レイラは湊が濁したのを気付いてか気付かずか、特にそれ以上追求することも無く改めて剣を構えた。
湊はレイラの雰囲気が更に澄まされるのをじ、腰に差していたもう一本の剣を抜きさった。
『ほう、わしを抜くとはそれ程なのか』
(あぁ、正直あれで七割とか相當だ。もしかしてこの學園には、それ程のやつがうじゃうじゃ居るんじゃないだろうな)
『あぁ、あれは別格じゃ。おそらく一年でも五本の指には確実にっとるわい、恐らく中等部上がりだろうな。戦いに慣れておる」
(そら助かった)と、湊は再び神剣を構え──る事なくティアマトを一度鞘へ戻す。
その姿は先ほど見たレイラの居合いと瓜二つだった。
「じゃぁ次はこっちから行かせてもらうよ。刀明流とうめいりゅう剣、模倣凌駕もほうりょうが」 
そう靜かに呟き終わった直後、湊のはその場に無かった。
「っ!?」
レイラは驚愕に目を見開く。
それも當然、今レイラの元には剣先が向けられているのだ。
「俺の勝ちだな」
その言葉を合図とするかの様に再び二つのが天に飛び出す、そして周りを覆っていたバリアも消えた。
平然と湊は剣を鞘にしまい歩き出す。
その場にいた一人の例外を除いた全員が固まっていた、それはレイラも同じだ。
そして皆同じ事を思ったのだ「今何が起きた・・・・・のか」と。
まさに閃、エル以外誰にも捉えられなかったのだ。
「さすがです師匠! カッコいいです! やっぱり師匠が最強のアムラトです!」
はしゃぐエルの聲が妙に響く。
途端、湊が勝ったのだと理解してきた生徒が歓聲をあげた。
まるで誰かが偉業をし遂げたような騒ぎ様である。
凄まじい喝采の中、湊はエルを連れて寮への道を歩き出──そうとして背後から聲がかかる。
「ねぇ⋯⋯今何したの⋯⋯」
「ん? あぁ、ただの真似っこだよ真似っこ、ぱくりだよ」
「あれのどこが真似っこよ。変態、いや己龍さん⋯⋯本當に貴方はいったい⋯⋯」
レイラの聲は負けた事からの怒りからか震えて聞こえた。
「いや、変態よりかはマシだけど違和凄いからさん付けはやめてくれる? うーん⋯⋯敢えて言うなら忘れられたはみ出し者かな」
湊はそう言い殘すと、桜の吹きれる一本道を多くの生徒に見られながら歩いて行った。
「己龍⋯⋯湊⋯⋯⋯⋯」
レイラはその場に崩れる様にして座り込んだ。
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