《甘え上手な彼2》第21話

「良し、集まったな!」

「そうだな」

「いやいや、待て待て」

夏休みの最中、高志は學校に來ていた。

登校日というわけでもなく、高志と他の三人、赤西、土井、茂木、繁村、そして優一の五人は私服で校の教室に居た。

「なんだ高志、トイレか?」

「いや、いきなり朝から呼び出されて來てみれば……なんだこの大道の山は!!」

優一の背後には大きな段ボール箱は三個置いてあり、中から布やらガムテープやらが見え隠れしていた。

「ん? 言ってなかったか?」

「言ってねーよ……朝から急に『學校! 來い! 直ぐ!』の単語だけで言って電話切ったじゃねーか」

「そうだったか? まぁ、説明するとだな……肝試しだ」

「もっと詳しく言ってくれません?」

優一の話によると、今日はクラス全員に聲を掛けて、學校で肝試し大會をすることになったらしい。

朝から學校に來ていたのは、先生達との注意事項の話し合いと立ち會ってくれる先生と段取りを話し合うためだった。

「ま、そのついでに準備もあらかた終わして行こうと思ってな」

「それでお前らもいたのか……ってか、赤西や繁村は部活はどうした? 野球部とサッカー部は忙しいだろ、合宿とか」

「「安心しろ! さぼった!」」

「不真面目だな……」

親指をグッと立て、どや顔で高志にそう言い放つ赤西と茂木。

高志は溜息をつきながら、仕方なく準備を始める。

「しかし、俺はそんな話し聞いてなかったけど……人數は集まるのか?」

「安心しろ、お前以外には伝達済みだ」

「なんで俺だけ伝達されてねーんだよ……」

「「「「クラスで唯一の彼持ちなんて呼んでたまるか!!」」」」

「……結局呼んでるけどな………」

「仕方ねーだろ、そうしないと宮岡さんが來ない、そうしないと子が來ないんだから」

「俺は餌かよ……」

話しをしながら、高志達は段ボールから々と道を取り出し、今夜使うルートに仕掛けを作っていく。

「でも、なんで急に肝試しなんだ?」

「よくぞ聞いてくれた!!」

「ここからは、僕が説明しよう!」

「なんなんだよ……お前らのそのコンビネーションは……」

土井が高志の方を指さして言い放った後、後ろから茂木が出て來て高志に説明を始める。

「高二の夏……みんな騒ぎたいけど、イベントがない、彼しい! それなら、騒げて彼が出來るイベントを僕たちが用意すればいい! そんな発想からこの肝試しが企畫されたんだよ!」

「そ、そうなのか……」

確かに折角の夏休みで、みんなと遊べるのは楽しい。

しかし、子側はともかく男子側には下心がありそうだった。

「フフフ……暗闇……二人っきり……」

「おい待て、なんだその危ない単語は」

「高志君、君は知らないのかい?」

「何をだよ、茂木」

「肝試しと言えばそう! 男二組でペア!!」

「あぁ……そういう……でも、子が納得するかどうか……」

高志がそう思うのも無理はなかった。

高志のクラスの男子と子の仲はあまりよろしくない。

お互いにお互いを貶し合っている。

「てか、優一がクラスの男全員に人候補を紹介するんじゃ……」

「あぁ、結局全員ダメだった」

「早いな! 男子はわかるが子もか!?」

「おい高志、どういう意味だ!」

男子は何となく全員上手くいかない気がした。

その理由は、全員が下心丸出しだからだ。

しかし、子に至ってはそうでもない。

容姿も全員整っており、可い子が多い。

他の高校の男子に紹介すれば、全員にぴったりの相手が見つかりそうなのだが。

子は子で要求が高すぎなんだよ……なんだ、の無い男って」

「男子高校生なんて、の塊だっつの!」

「わかってるじゃねーか、流石野球部繁村」

「サッカー部はモテそうなイメージだが、どうなんだ赤西?」

「アレは漫畫の中の話しだ、現実は違う」

「そんな事言ったら、うちの卓球部なんて皆無だぞ」

子卓球部との接點は?」

「全くない」

「「「悲しいな……」」」

赤西、繁村、土井の三人は自分で言って、自分で落ち込む。

「ま、そうい訳でな急遽企畫したわけだ」

「企畫してもうちのクラスの子が俺たち男子を相手にすると思うか?」

「そこはイベントの乗りと夜のテンションでどうとでもなる」

「適當だな……ま、俺は紗彌と肝試し出來れば……」

「あぁ、言い忘れてたけど肝試しのペアはクジだから」

「は?」

「いや、普通だろ」

「まってくれ優一、俺と紗彌だけ別とかに……」

「特別扱いは不公平だろ」

「まてまて! 紗彌が俺以外の男と?! しかもうちのクラスの!? ふざけるな! 心配でペアになった男を撲殺しかけないぞ!」

「お前、そんなキャラだっけ?」

高志の態度の変化に、優一は若干引き気味だった。

しかし、高志はそれどころでは無かった。

紗彌が他の男子と一緒に、暗闇の中にって行くなんて、想像すらしたく無かった。

「こうなったら、ペアになった相手からクジを買い取るしか……」

「どんだけ好きなんだよ……」

話しをしながら、作業は進み二時間ほどで準備は整った。

丁度作業が終わった頃、高志達のクラス擔任である大石幸輔(おおいし こうすけ)が、高志達の元にやってきた。

「おう、おまえら終わったかー?」

「あ、先生、どうかしたんすか?」

高志達の擔任の大石は、基本いつも欠をしている若手の先生だ。

今年で31歳で、クラス男子と同様彼無し。

「今日の付き添いは擔任の俺がすることになってな……たく、休みの日までお前らの顔見なきゃいけないのかよ」

「まぁまぁ、どうせ彼も居なくて暇でしょ?」

「そうですよ、街コン行くくらいでしょ?」

「土井に赤西、お前らの二學期の績、楽しみにしておけよ」

「「先生ごめんなさい」」

大石先生は數學教師でもある。

「ま、おまえらの言うことも間違ってはいないんだがな……俺もお前らと一緒で彼くらいつくらねーと、結婚出來なくなっちまうかもだしな」

「自覚はあるんすね」

「この年になれば誰だっておもうさ、それより今日は何時から何時までなんだ?」

「あ、それはですね……」

高志達は大石先生と夜の打ち合わせを始めた。

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