《甘え上手な彼3 秋編》第2話

繁村祐樹(しげむら ゆうき)は高志のクラスの男子生徒で野球部に所屬している。

部活も勉強もまぁまぁの績であり、どこにでもいる普通の男子生徒なのだが、一つだけ悩みがあった。

「あぁ……彼しい」

「お前はそればっかりだな」

繁村のつぶやきに橫から口を出したのは、高志のクラスの赤西健輔(あかにし けんすけ)だ。

赤西はサッカー部の所屬しており、部活終わりが一緒なので、一緒に帰宅する事が多い。 たまに卓球部の土井も加わるのだが、最近はあまりない。

繁村と赤西はユニフォーム姿のまま、鞄を持って帰宅している。

「さっきさー、高志と宮岡が手繋いで一緒に帰ってるの見たんだよ……」

「俺も……良いよなぁー」

繁村の言葉に、赤西はため息じりに答える。

二人とも彼居ない歴が年齢と同じであり、彼というものに憧れがあった。

しかし、この二人……全くモテない。

「なぁ、高志にあって、俺に無いものってなに?」

「え、不細工だからじゃね?」

「赤西……それは言わない約束だろ……」

「じゃあ、エロいから?」

「そんなん男全員だろ」

「じゃあ……キモイから?」

「お前は心にぐさっとくる事を平気で言うな……」

しょうもない話しをしながら、繁村と赤西は道を歩く。

夏も結局人は出來ず、二人は寂しい夏休みを過ごした。

しかし、クリスマス前にはなんとか彼を……と思っている二人だが、そんな兆しも一切無い。

しかし、二人には希があった。

それは二週間後にあるクラスマッチである。

部の二人にとっては、これ以上ないイベントであり、得意分野を生かして子にアピール出來る絶好の機會なのである。

「二週間後のクラスマッチ……がんばらないとな!」

「あぁ! 子にアピールする絶好の機會だ……絶対に活躍するぞ!」

夕焼けの傾いてきた空の下で、繁村と赤西はやる気に満ちあふれていた。

流石は運部、育會系特有の論で気合いをれている。

しかし……。

「そう言えば、お前のとこの野球部は夏の大會どうだった?」

「初戦敗退! お前のサッカー部は?」

「初戦敗退!」

「「………」」

本當にこんな自分たちが活躍出來るのか、二人はし不安になってきた。

放課後、教室には數名の子生徒が殘っていた。

部活にっている訳では無く、子生徒はお喋りをするために、遅くまで教室に殘っていた。

その中の一人に朋香は居た。

短いスカートに、バッチリのメイク。

紗彌や由華に隠れてあまり目立たないが、と言って間違いのない顔立ちをしている。

「ねぇねぇ、朋香と赤西って小學校から一緒なの?」

「いきなり何よ?」

ショートカットのクラスメイトに尋ねられ、朋香は不思議そうな表で尋ねる。

「いや、なんか仲良いし。本當は付き合ってるのかなって」

「はぁ? なんで私があんな男と……」

「いや、喧嘩するほど仲が良いっていうし」

「そんなわけ無いでしょ、変な誤解しないでよ」

呆れた表でそう言う朋香。

朋香と赤西の関係は、クラス中が知っていた。

子の中心にはいつも朋香が、男子の中心には赤西が居た。

だから、クラス中が二人の中の悪さを知っていた。

「大、あんなモテない男のどこが良いっていうのよ」

朋香はそんな事を言いながら、スマホを作する。

「まぁ、朋香はモテるからね、赤西なんて眼中に無いわよね?」

「そうよ……あんな男」

そういう朋香のスマホの連絡先には「赤西健輔」の名前があった。

高志と紗彌が家に帰宅し、二人で高志の部屋に居た。

相変わらず仲の良い二人は今日も共に帰宅し、そのまま部屋二人の時間を過ごしていた。 そんな二人が何をやっているかと言うと……。

「チャコちゃ~ん、よしよ~し」

「次はこれを著せてみようぜ」

貓のチャコに服を著せて、記念撮影の真っ最中だった。

も段々大きくなってきたチャコ。

貓用の洋服があると知った高志と紗彌は、前の休みに二人で買ってきたチャコ用の服を代わる代わる著せて、スマホの寫真で撮影しまくっていた。

「にゃ………」

著せ替えされるチャコはし迷そうに短く鳴いた。

紗彌の膝の上に座りながら、チャコはなされるままに服を著る。

「そういえば、高志ってクラスマッチはソフトボールとバスケに出るの?」

「そうだけど、なんでだ?」

「ん、帰宅部なのに頑張るなーって思って」

「まぁ、これでも中學は運部だったから、しは頑張れるかと思ってさ」

「そっか、じゃあ応援に行くから、頑張ってね」

「お、おう……俺も紗彌の事応援に行くから」

「ありがと、優勝出來ると良いね」

「そうだな……ま、繁村達は別の理由で張り切っていたが……」

繁村達が張り切る理由を高志と紗彌も知っていた。

繁村のやる気の出しどころに呆れつつも、そういう時のクラスの男子の団結力の高さを知っている高志は、結構良いところまで行くのではないかと予想していた。

「でも、高志には関係ないもんね」

「あぁ、俺には紗彌が居るし……」

「そうだよ。私が居るのに浮気なんて許さないから」

「しないって、俺は紗彌が……一番……だからさ」

「高志……」

「紗彌……」

良い雰囲気になり見つめ合う高志と紗彌。

部屋には二人と一匹。

夏を経て更に仲の深まった二人のは更に強くなっており、自然と二人の距離が近くなって行く。

顔を赤らめながら、紗彌は目を閉じ、その意味を理解した高志がしづつ紗彌のに自分の口を近づける……そして……。

きぃ………。

「………」

「………」

「……親父」

「………すまん」

あと數センチと言うところで、部屋のドアが鳴り、ドアの隙間から部屋を覗いていた高志の父親と高志の視線が合う。

「覗いてんじゃねぇよ!! なんなんだ! うちの両親は!」

「ご、誤解をするな息子よ! 私は息子の息子が暴走して、息子が紗彌ちゃんを傷にしないか心配で……」

「余計なお世話だ! 出て行けぇ!!」

今日も八重家は平和であった……。

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