《甘え上手な彼3 秋編》第30話
*
風呂から上がった高志達は宴會場で食事を楽しんでいた。
「おぉ……これが生ゆばかぁ~」
「味しいね高志」
「そ、そうだな紗彌……」
高志は隣に座る紗彌を見て、頬を赤く染める。
その理由は紗彌が浴姿だったからだった。
いつもと違う紗彌の姿に、高志は思わずドキドキしてしまう。
「ねぇ、那須。アンタその顔どうしたの?」
「……風呂で転んだ」
優一は先ほどの風呂で、肩車に參加しており、頬に大きな絆創膏をしていた。
もちろん覗きをしようとしてこうなったとは言えず、お茶を濁した。
「馬鹿! 一人で食えるって言ってんだろ!」
「そ、その手じゃお椀持てないでしょ! い、良いから! ほ、ほら! あ、あーん……」
「いや、あーんしながら目を瞑っちゃ……ってアッツ!!」
朋華は腕を怪我した赤西の食事の手伝いをしていたが、上手くいっていない様子だった。
大広間中央のステージでは、順番に生徒の出しが行われており、高志達はそれを見ながら食事を楽しんでいた。
そんな中、赤西と朋華の様子を見た紗彌が高志の裾をつまんで引っ張ってきた。
「高志……」
「ん? どうした紗彌?」
「あーん、してあげるから口開けて」
「え!? こ、ここで?」
「うん、何食べたい?」
「い、いや……さ、流石に皆見てるし……」
「家ではお母さんが見てるからって、してくれないじゃん………」
「あ、いや……ふ、二人きりなら……」
「赤西君はやってたよ?」
「うっ……そ、それは……」
高志は思わず紗彌から視線を反らしてしまう。
紗彌はそんな高志に視線を送り続ける。
「さっさとやっちまえよ、どうせやるんだから」
「う、うるせぇよ!!」
橫から言ってくる優一に、高志は頬を赤く染めながら照れ隠しでそう言う。
紗彌は相変わらずジーッと高志を見ていた。
「はい、あーん」
「うっ……じゃ、じゃあ………あ、あーん」
「はい、あーん。味しい?」
「ん……う、うん、味しいよ……ありがとう」
「じゃあ、私にもしてくれる?」
「え!?」
紗彌は高志に自分にも食べさせてしい言ってくる。
高志はそんな紗彌を見て、またしても顔を赤く染める。
嫌だと言ってもきっとダメなのだろうと、高志は諦めて紗彌の口元に箸を持って行く。
「あ、あーん……」
「あーん……ん、ありがと」
「こ、これで十分か?」
「うん、十分。ありがと」
笑顔でそういう紗彌を見て、高志は思わずニヤける。
そんな紗彌と高志を見て、周囲の男達は恨めしそうに高志に視線を送る。
「修學旅行でまでイチャコラとぉ~」
「くっそ! 死ね!!」
「五満足で帰れると思うなよ……」
高志はそんな男子達からの罵倒にも馴れつつあり、何事も無かった様子で食事を進める。
「あぁ~食った食った」
「味しかったね」
宴會場での食事を終え、高志達は自分の部屋に戻っていた。
消燈は22時なので、今からは自由時間になる。
現在の時刻は21時。
高志はいつもなら、今の時間も紗彌と一緒に居るのになと思いながら部屋に戻る。
「さてと……じゃあ、今からどうする?」
「まぁ、流石に言われたとおり寢るのもちょっとな」
「近くにコンビニあったよな? じゃんけんして買い出し行こうぜ」
「それもそうだな」
高志達は同室の六人でじゃんけんを行い、コンビニに買い出しに行く人間を決め始めた。
じゃんけんに負けたのは、腕を怪我していた赤西だった。
「大丈夫か? 腕怪我してるし、赤西じゃなくても……」
「いいや、ダメだ!」
高志が赤西の腕を庇い、赤西以外に買い出しをさせようと言い出したが、その提案を繁村がバッサリ切り捨てる。
「いや、繁村……それは流石に」
「黙れ! 赤西も優一も高志も! みんな彼とイチャツキやがって!! 赤西は最近まで仲間だと思ってたに………いつの間にか西城と良いじになりやがって!!」
「いや、それただのお前の嫉妬だろ……」
「泉や土井だってそう思うよな!?」
「えっと……僕は流石に怪我人に行かせるのは……」
「俺は別に……なんか當分は良いかなってな」
「お、お前らまでぇ~!!」
ワーワーと騒ぐ繁村に赤西が反論を始める。
「さっきから何言ってんだよ……俺と西城が? 馬鹿も休み休み言えっての……」
「あぁ~出たよ。ラブコメ主人公特有の謎の鈍さ」
「めんどくせぇなぁ……あいつと俺の間に何かあるとでも? ないない、もし何かあったら次の日には地球が滅ぶね」
繁村の言葉に赤西が半分笑いながら答える。
そんな赤西を見て、高志と優一はため息を吐き、赤西に言う。
「繁村じゃないが、しは自分の周りを見てみろよ……」
「赤西、鈍過ぎるのもどうかと思うぜ?」
「は? 優一も高志も何を言ってんだ?」
「「なんでもねぇよ……良いからコンビニ行ってこい」」
「結局かよ!!」
結局買い出しが赤西が行くことになった。
*
「たく……なんで俺がこんな」
赤西は旅館から直ぐ近くのコンビニに來ていた。
腕を怪我しているため、飲み以外のスナック菓子だけで良いと言われはしたが、やっぱり片腕だけでは何かと不便だった。
「えーっと……何が良いかなぁ~」
「げっ……アンタ何やってんの?」
「ん? さ、西城!? お前も買い出しか?」
お菓子を選んでいた赤西の前に、浴姿の西城が現れた。
浴の上には寒くない用に羽織を來ていた。
「骨折してるのに良く來たわね……」
「うっせぇな……俺だって嫌だったよ。ん? そう言えばお前、髪型違うんだな」
「え? あぁ……お風呂上がりだから」
朋華はいつものウェーブがかったロングヘアーでは無く、ストレートのロングヘアーを下の方でシュシュでまとめていた。
「へぇ……」
「な、何よ……」
「いや、深くにも良いなと思ってしまった」
「は、はぁ!? 急に何言ってるのよ! 馬鹿!」
「イテッ! 叩くなよ! 褒めただろうが!!」
赤西は文句を言いながら、棚から商品を取り、地面に置いたカゴにれていく。
「お前も買い出しか?」
「そうよ、何か文句ある?」
「別にねーけど……はぁ……なんであんなこと言われた後に、お前と會っちまうかなぁ~」
「何よ一? なんか話してたの?」
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