《甘え上手な彼3 秋編》第46話
*
「おい! もっと離れて歩けよ!」
「そっちが離れなさいよ!」
「なんだとぉ!」
「何よ!」
「……」
赤西達は猿沢池に來ていた。
相変わらず仲の悪い赤西と朋香だが、今日の二人はし様子が違う。
そんな二人の様子を繁村は嫉妬に狂ったような走った目で見ており、土井はそんな繁村を押さえつけていた。
「なぁ土井……」
「どうした繁村?」
「あの二人……お互いに離れろとか言ってるくせに、がっつり手を握ってるよな……」
「それにツッコミたいのは多分繁村だけじゃないから安心して良いよ……って、待て待て」
「なんだ? 俺は今からあいつらの間にってみ通り離ればなれにしてやろうとしただけだが?」
「あのねぇ……繁村もわかってるだろ? アレはお互いに強がってるだけなんだよ」
「だとしても、ここに見ていて気分を害する人間が居るんだ……黙って居られる訳がない!」
「そんなんだからモテないんだよ……」
「あぁ!? なんか言ったかこの卓球部!」
「いや、それって悪口なの?」
赤西達からし離れて繁村と土井はそんな會話をしていた。
一方で同じ班の恵と利華はと言うと……。
「あの二人素直じゃないわねぇ~」
「表向きはいつもの二人だけど……アレは絶対お互いを意識しあってるわよぉ~」
楽しそうに赤西と朋香の様子を見ていた。
しかし、そんな二人を見ていると段々本人達はこんな事を思い始めてしまう。
「あぁ……なんで私達、他人の事なんて覗き見してるのかしら……」
「彼氏しい……」
楽しそうは朋香を見ていると、二人はふとそんなこことを思ってしまう。
そんな事など知らない赤西と朋香は、手を繋いで池の周りを歩いていた。
「たく……なんで俺がおまえなんかと」
「なんかって何よ! 彼になってってアンタが懇願するから、私が仕方なく……」
「あぁ!? 俺は懇願なんかしてねぇーっての! お前が泣くからだろ!」
「泣いてないし! アンタが私に土下座するから、私が仕方なく……」
「俺がいつ土下座なんてしたよ! 寢言は寢て言え!」
「なんですって!」
「なんだよ!」
言い合いをしていても、しっかりとお互いの手を握ったままの赤西と朋香。
「だ、大なぁ……な、なんで俺たち……て、手なんか握ってんだよ……」
「そ、それは……ほ、ほら! アンタの左腕が折れてるし……こ、転んだら大変でしょ?」
「こ、転ぶかよ!」
「じゃ、じゃぁ何よ! い、嫌なの!?」
「そ、そうは言ってねぇよ……お、お前の手握るのは……その……結構好きだし……」
「え……」
赤西は自分の言った言葉の恥ずかしさで、朋香から顔を反らす。
自分は一何を言っているんだと、先ほどの言葉を出來る事なら取り消したいと思いながら、朋香の返答を待つ。
そんな朋華はと言うと……。
「あ……な、なに言ってんのよ! き、気持ち悪い!」
突然の事で揺し、いつものように赤西を罵倒して照れ隠ししていた。
「き、気持ち悪いってなんだよ! 一応お前の彼氏だろ!」
「な、何が手を握るのがす、好きよ! お、の子の手なら誰でも言い癖に!!」
「あ、アホか! お……おま……お前の手だから好きなんだよ!」
そう言って赤西は激しく後悔し、顔を真っ赤に染める。
そんな言葉を言われた朋香も顔を真っ赤にして俯く。
「……な、何言ってるのよ……ばか……」
「う、うるせぇ!」
「そ、そんなに好きなら……に、握らせてあげるわよ……と、特別だからね!」
「しょ、しょうがねーから握っててやるよ! しょうがなくだからな!!」
なんやかんやで仲の良いこの二人。
その後ろでは、そんな様子を見ていた繁村が、鬼のような形相で赤西を殺そうとしており、土井はそんな繁村を必死に止めていたが、その事実を赤西は知らない。
*
「石崎先生」
「なんですか? 保永先生」
石崎は猿沢池の隣の三條通りでお土産を見ていたのだが、途中で奈に捕まってしまった。
「皆さんへのお土産を選んでいるんですか?」
「まぁ、そんなところですね……お袋達にも何かお土産をと思いまして……」
「じゃあ、私も一緒に選ばせて貰っても良いですか?」
「構いませんよ」
そう言うと、奈は石崎の近くに來てお土産を選び始めた。
「うーん……実家には何を買っていったらいいですかね?」
「普通にお菓子とかで良いんじゃないですか?」
「うーん……でも、石崎先生を紹介に行くんですよ? 菓子折だけだと味気ない気が……」
「待って下さい、今なんと?」
石崎は奈の言葉を聞き逃さなかった。
奈は確かに石崎を紹介に行くと言った。
その紹介とは、一なんの紹介だろうか?
石崎は不安をじながら、奈に尋ねる。
「だから、石崎先生をうちの両親に紹介するんですよ」
「紹介する意味がわからないのですが」
「いつもお世話になっている先輩先生を親に紹介して悪いんですか?」
「い、いや……悪いってことは無いですが……」
そのに何か奈の謀のようなものがありそうで、石崎は怖かった。
そのまま結婚の挨拶、見たいな流れになってしまうのでは無いかと、心そう思っていた石崎。
「俺なんかを紹介しなくても……」
「何を言ってるんですか! お世話になっている人を親に紹介する……人として當然ですよ!」
「そ、そうなん……ですかね?」
奈の気持ちを知っている石崎は、完全に奈の事を信用出來て居なかった。
事あるごとに石崎は、奈からアプローチを繰り返され、最近では既事実を作ろうと毎晩何か理由を付けて石崎の部屋に転がり込んでくる。
「で、でもご両親のご迷でしょうし、今回はやめましょう」
「大丈夫ですよ! うちの両親はそんなの気にしないんで!」
「俺が気にするんだが……」
「大丈夫ですって! 私のお父さんに『娘さんを下さい!』って言っていただければ、あとはなんとかなります」
「えっと……今何かとんでもない言葉が聞こえて來たんですが……気のせいですよね?」
「え? とんでもない言葉? というと?」
「いや、娘さんを下さいだのと言う……良く結婚の挨拶ありそうな……」
「何を言ってるんですか? 結婚の挨拶に行くんですよ? 私の石崎先生の」
「あれ? あれれ? 俺がおかしいの? それとも……あれ?」
奈の言葉に、石崎は揺を隠し切れなかった。
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