《甘え上手な彼3 秋編》第47話
*
高志達は鹿公園を後にし、現在は春日荷茶屋でぜんざいを食べていた。
「はい、高志あーん」
「あーん」
「味しい?」
「味しいよ」
最早周囲の目などまったく気にならない様子の高志と紗彌。
由華と泉は相変わらずな二人の様子に最早何も言わず、話しをしながらぜんざいを食べていた。
優一は電話をしに店の外に行っていた。
「優一の奴、電話って誰にだろうな?」
「そんなの芹那ちゃんでしょ?」
「あいつが? 俺は違うと思うけどな……」
「そうかな? 意外と那須君は彼大事にしそうなじあるけど」
そんな紗彌の予想通り、優一は芹那に電話を掛けていた。
「もしもし」
『せんぱぁ~い』
「……なんだよ」
『寂しくて死んじゃいますぅ~早く帰って來てぇ~』
「あのなぁ……明日の夕方には帰るって言っただろ」
『でも! でも、でも! 早く先輩にもう一回ぎゅーってしてしいんです!』
「やるとは言ってないからな」
『なんでですか!? 彼のお願いですよ!』
「知らん」
『ぶぅー! 先輩の意地悪!』
「何とでも言えよ……今は晝休みか?」
『はい! 優一さんはお晝は何食べました?』
「ぜんざい。結構味かったぞ」
『今日は奈良でしたっけ? 鹿公園には行きましたか?』
「あぁ、後で寫真送ってやるよ、それじゃあ切るぞ」
『あ! 待って下さい!』
「ん? どうした?」
『あ、あの……えっと……明日の夜……また優一さんの家に行っても良いですか?』
「はぁ? 勘弁してくれよ……」
『お願いしますぅ! 行く前の日みたいに一緒に寢たいです!』
「あ、あの日は特別だ! それに、明日はお袋が家に居るんだよ!」
『じゃあ、ご挨拶しなきゃですね!』
「アホか!! とにかく明日はダメだ! じゃあな!」
優一はそう言って、電話を切った。
ため息を吐き、芹那に先ほど送ると言った寫真を送信して店の中に戻って行く。
「はぁ……」
「ん? どうした優一?」
「いや……なんでもねぇよ」
帰って來た優一はそう言って自分の席に座る。
優一も來たところで、高志達は次に行く場所の確認を始めた。
*
高志達は修學旅行四日目の予定を終えて、宿に戻ってきていた。
「あぁー疲れたぁ~」
「風呂行こうぜ~」
部屋に戻った高志達は荷を置いて、晩飯の前に風呂にりに行く話しを始める。
「なぁ、土井……」
「ん? なんだよ優一」
「繁村が鬼の形相なんだが……」
優一の言うとおり、繁村が鬼のような形相で赤西を見ていた。
対する赤西は、なぜか真っ赤な顔でスマホを弄っていた。
「おい、あの二人に一何があったんだ?」
「あぁ……まぁ、勝ち組と負け組の差だな……」
「はぁ?」
「良いから、風呂に行こう……ほら繁村も!」
「ウゥ……アカニシ……コロス……」
「はいはい、わかったわかった」
「なんか化けみたいになってるぞ……」
*
「ね、ねぇ……紗彌……」
「どうしたの? 朋香?」
浴中の紗彌に話し掛けてきたのは、頬を赤くさせた朋香だった。
紗彌の隣に座り、恥ずかしそうに話し始める。
「あ、あのさ……か、彼氏っていうか……その……男子って……何をしてあげたら喜ぶのかしら?」
「え? うーん……高志が喜ぶことなら……」
「な、なに?」
「私がぎゅーってすると、高志は凄く喜ぶわよ」
「ぎゅ、ぎゅーって……その……ハグ的な?」
「他に何があるのよ」
「首じゃなくて?」
「殺すつもり?」
様子のおかしい朋香に気がつく紗彌。
紗彌は小さな聲で朋香に尋ねる。
「赤西君と何かあったの?」
「う、うん……まぁ……その……なんて言うか……」
「うん」
「わ、私……あいつに助けられてばっかで……なんか何もしてあげられてないから……な、何かして上げたいっていうか……」
「朋香って結構可いとこあるんだね」
「どういう意味よ!」
顔を真っ赤にしながらそんな事を言われては、なんとか協力したい紗彌。
「それならさ……」
「何?」
「ちゅーでもすれば? 絶対喜ぶよ」
「ば、バッカじゃないの!! そ、そういうのは、もっと先の事でしょ! さ、紗彌と八重とは違うのよ!
」
「でも、男子は凄く喜ぶわよ? 好きなの子からのちゅー」
「は、ハードルが高すぎるわよ! もっとハードルを下げて!」
「じゃあ、おっぱいでもませてあげたら?」
「雑!? 今度は急にアドバイスが雑!」
「でも、多分喜ぶよ?」
「ま、まさか……紗彌は……」
「でも、私もんでもらったこと無いからなぁ……」
「そ、そうよね……な、なんか安心したわ……」
中々良い案が出ないで二人で悩んでいると、ふと隣の男湯の方から聲が聞こえてきた。
『赤西! なんで邪魔をするんだ!』
『俺たちの夢を! お前だってこの前は協力してたじゃないか!』
『そこをどけ! 腕以外にもやられたいか!』
どうやら、この前同様に覗きをしようと、男子達が々頑張っているらしい。
今日は修學旅行での最後の夜。
これを逃したら、もうチャンスは無いと思ったのだろう、男子も必死だ。
「まったく! 男子ってバカなんだから!」
「こんな高い壁があるのにねぇ……」
「バカなのよ」
子は男湯と湯を隔てている、大きな壁に安心してあまり気にはしていない。
しかし、聲は聞こえてくる。
『赤西! お前そう言えば西城と付き合ったって言ってたな!』
『な、なんだとぉ!?』
『くそぉ! 時間の問題だとは思っていたが……こんな不細工に……』
『う、うるせぇ! 良いだろ別に! あいつがどうしてもって言うから……仕方なくだな……』
そう言った赤西の聲は湯にも屆いており、朋香は顔を真っ赤にする。
「おやおや朋香さ~ん、旦那様が何かいってますよぉ~」
「実際はどうなんでちゅかぁ~?」
「う、うるさいわね!」
湯では、男子達の話しを聞いた子達が朋香を弄り始めていた。
もうこれ以上変な事を言ってしくない朋香だったが、赤西の聲は止まらない。
『だ、大なぁ! 覗きは立派な犯罪なんだぞ! それに! あいつのなんて見ても面白くねーから!』
『黙れ! この裏切り者が!!』
『自分はいつでも見放題だからってぇ~』
『だ、誰が見放題だ!』
『彼氏なんだらか見放題だろ! 興味が無いとは言わせないぞ!』
『そうだ! そうだ! お前だって早く西城のが見たいだろ?』
『さ、西城の……?』
『お、揺したな』
『このまま説得するんだ!』
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