《甘え上手な彼3 秋編》第53話
玄関先で落ち込む高志を優一が蹴飛ばす。
「優一! お前どこに行ってたんだよ!」
「悪い、便所行ってた」
「悪いで済むか! お前が居なかったせいで俺は……俺は……」
高志は地面に這いつくばり、ため息を吐く。
そんな高志の肩に優一は手を置く。
「まぁ……なんだ……今回は俺も悪かったよ……」
「なんでそんな優しいんだよ!」
「いや……流石にアレを見たらな……」
「若干引いてるよな!」
「あ、やめろ! るな! このホモ野郎!!」
「ちげーよ馬鹿!!」
高志は距離を置く優一に摑み掛かっていく。
優一はもの凄く嫌そうな顔をしながら、高志の手を振りほどこうとする。
「やめろ! 俺にそんな趣味は無い!」
「俺にだってねーよ!! 見てたなら助けろよ!」
「どうせ同意の上だったんだろ!」
「んな訳あるか!!」
言い爭いながら、高志と優一はお互いの浴を摑み、取っ組み合いを始める。
するとそこに、騒ぎを聞きつけたのか、足音が二つ近づいてきていた。
そして、その足音は高志が気がつく前に鳴り止む。
「高志………」
「え……さ、紗彌?」
高志達に近づいて來た足音の正、それは先ほどまで高志と倉島の一部始終を目撃していた、紗彌と由華だった。
「高志……やっぱり……」
「え? な、何?」
「の私より……男の方が良いの……」
「な、何を言ってるんだ?」
紗彌は涙目でそう言いながら、高志から一歩、また一歩と下がって行く。
「だから……私に何もしてこないの……」
「さ、紗彌どうした? 落ち著け、俺は何も……」
「高志の馬鹿ぁぁぁぁ!!」
「え、え? えぇぇぇぇ!!」
紗彌はそうぶと、走って行ってしまった。
殘された由華はなぜか凄く優しい表で高志に言う。
「八重君……あの……私は良いと思うよ……男同士……」
「はっ! ま、まさか!! 見て……た?」
「うん……でも、紗彌が居るのにアレは……ダメだよね?」
「いや、違うんだ! アレは!」
「良いの! 私もそうだから、気持ちは良くわかるよ……それに……まさか那須君ともそんな関係だったなんて……」
「「は?」」
言われて高志と優一は、お互いの狀況を確かめる。
お互いに浴ははだけ、上半はほぼ。
高志が優一に覆い被さるような形になっており、誤解をけても仕方の無い勢だった。
「待て! 俺とこの変態を一緒にするな!」
「俺は変態じゃねー!!」
「う、うん……大丈夫……わ、わかってるから……」
「「わかってねーだろ!!」」
頬を赤く染めながら言う由華に、高志と優一は説明を始める。
そして數分後……。
「なるほど……じゃあ、無理矢理されたと」
「そうだ」
「八重君の意思では無かったと?」
「そうだ」
「でも、那須君とはそういう関係と?」
「そうだ……ん? いやちげーよ!」
「まったく……人が紗彌にの相談をしているときに……」
「いや、聞いて下さい門さん! 俺だって野郎とキスなんて……」
「同姓を馬鹿にしないで!!」
「なんで怒るんだよ!」
「なんでも良いけどよ……高志は宮岡の事を追いかけなくて良いのか?」
「追いかけたいよ! でも子の部屋には行けないし……」
紗彌が走り去って行ったのは、子のへやが固まっている廊下で、見回りの先生も多い。
それにソロソロ消燈時間なので部屋に戻らないと見回りの先生が來てしまう。
「部屋に戻って電話で説明するよ……」
「わかって貰えると良いけどね」
「門からも言ってくれよ……アレは誤解なんだって」
「これは八重君と紗彌の問題でしょ? なら自分で解決しなさい! 私だって々と大変何だから」
「あぁ……泉のことか」
「酷いだ、こっぴどく振ったらしい」
「泉……泣いてないと良いけどな……」
「し、仕方無かったのよ!!」
言われてばかりも嫌なので、高志は由華に言い返す。
由華は顔を真っ赤にして、高志と優一に言い返す。
「大二人だって彼大切にしてないじゃん!」
「馬鹿を言うな! 優一はともかく、俺は紗彌を大切にしている!!」
「大切にしてる人は、彼を何度も泣かせません!」
「うっ……痛いところを付いて來やがる……」
「馬鹿な事してるからだ……」
「那須君も! 芹那ちゃんと手も繋いで無いらしいじゃない!」
「俺は良いんだよ。俺らはそういう付き合い方をしてるんだ。他人にとやかく言われる筋合いは無いね」
「へー、そうんなんだー」
「そうだ」
「その割には、彼の寫真を寫真部から毎月買ってるんだねー」
「おい、待て。なんでそのことを知っている」
「芹那ちゃんが嬉しそうに電話で言ってた」
「あの野郎……絶対他言するなと言ったのに……」
優一は眉間にシワを寄せながら、ため息を吐く。
そんな事をしていると、玄関の方に石崎先生が欠をしながらやってきた。
「ふわぁ~わ……おまえら、早く部屋に戻れよー、消燈時間だぞー」
「あ、はい」
「へいへい」
「紗彌ぁ……」
各自はそれぞれの部屋に戻っていった。
高志と優一は自分の部屋に戻り、疲れ果てて布団に倒れ込んだ。
「おかえり、どうだった?」
「最悪だった……」
「マジで? 呼び出し相手が男で毆られたとか?」
「いや……まだ毆られた方がマシだった……」
「は? じゃあ何が……」
「聞かないで……」
「本當に何があったの?」
部屋で待っていた土井は、高志の様子を見て首を傾げる。
「あれ? そう言えば赤西は?」
「まだ帰って來てないよ。どうせ西城とイチャついてるんだろ?」
「あぁ、そう言うことか……繁村は……寢たのか」
「泣き疲れてな」
「本當に酔っ払いみたいだな」
繁村はコーラのペットボトルを抱きかかえながら、自分の布団で寢ていた。
そして泉も……。
「泉も寢たのか」
「あぁ、なんか疲れたって言って……」
「そうか……」
事を知っている高志と優一は、それ以上何もお言わなかった。
高志も直ぐにでも布団にって眠りたかったが、そういう訳にもいかなくなってしまった。
「紗彌……」
高志は自分の布団を頭から被りながら、スマホの連絡先の『宮岡紗彌』の名前を見ながら頭を抱える。
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