《後輩は積極的》第16話
*
実ちゃんとプールに行った翌日。
俺はバイトの休憩中に、小山君に昨日のプールについて質問責めにあっていた。
「んで? どうだった?」
「どうって?」
「楽しかったとかあるだろ? 水著が可かったとか」
「あぁ……プールのスタッフがうざかった」
「いやいや、実ちゃんの水著とか! 何かあるだろ!?」
「え? 別に……無いけど?」
「おまっ! はぁ……実ちゃん可そうだな」
「そう言ってもなぁ……」
「はぁ……もしかして岬君って年下より年上派?」
「え? うーん……どっちかって言うと、優しいお姉さんタイプが好きだな!」
「あぁ……ダメだこりゃ……」
「何がだよ! 失禮だな」
二人で晝飯を食べながらそんな話しをする。
ちなみに、実ちゃんは今日は休みだ。
だから、休憩室でこんな話しが出來る。
「そういえば、次郎君は明日休みだっけ?」
「あぁ、サークルの飲み會なんだ」
「溫泉サークルだっけ? 風呂でもりにいくの?」
「まぁ、そんなじ。正直気は進まないんだよなぁ」
そう、明日は俺が所屬する溫泉サークルの活日。
溫泉宿を経営している先輩の家に行くのだが、同じサークルに間宮先輩が居るため、あまり行きたくない。
夏休みにって、顔を合わせる回數も減るかと思ったのだが、ほとんど毎日家にやってくる。
「はぁ………」
「そんなに嫌なら行かなきゃ良いのに」
「俺だって、行かなくて良いなら行かないよ。でも、強制參加みたいなとこがあってさ……」
「そうなんだ、々大変だね」
「あぁ、先輩の家だからあんまり金が掛からないのは良いけど……」
俺は小山君にそんなグチを言いながら、食事を終えた。
*
「え? 夏祭り?」
「そう! クラスのみんなで行こうって話しになってるんだけど、実も來ない?」
「うーん」
私は先輩とプールに行った日の翌日、友達と一緒に買いをして、喫茶店で話しをしていた。
高校最後の夏休み、勉強も大切だが、皆最後の高校生活を満喫したいらしく、こんなイベントを企畫してってくる。
しかし、私は昨日息抜きと言う名目で先輩とプールに行ってしまったし、なんだか気が進まない。
先輩と行ったプールが楽しすぎたからだろうか?
「私は遠慮しておく、それに明日バイトもあるし」
午前中だけだけど……。
あ、でも明日は先輩……居ないんだ。
私がそんな事を考えていると、一人の友人が私の肩を摑んで懇願してきた。
「お願いだよぉ〜、行こうよぉ〜、実が來るから行くって男子もいっぱい居るんだから〜」
「私を餌に使ってるわけ……なら絶対行かない!」
「なんでだよぉ〜行こうよぉ〜、実だって高校三年間彼氏無しはきついでしょ?」
「別に! きつくないし」
それに私にはもう好きな人が居る。
今更同級生になんてしないと思う。
「頼むよぉ〜、一緒に高校生活最後の夏の思いで作ろうよぉ〜」
「だからバイトが……」
「祭りは夜からだし、実はそんな遅い時間までバイトしてないでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「良いじゃん! し顔出して帰っても良いし!」
「本當に私は餌なのね……」
その後もしつこくわれ、私は結局行くことになってしまった。
「ありがとう〜じゃあ、明日の18時に集合で!」
「かき氷の約束、忘れないでね」
「わかってるって!」
*
次の日、俺はため息を吐きながら、先輩の溫泉宿に向かっていた。
「はぁ……」
「ねぇ、まだなの? 私疲れた」
「もうしですよ……」
ため息の元兇である先輩は、俺の気持ちなどおかまい無しに不満を俺にぶつけてくる。
先輩の荷も持っている俺の方が不満が溜まっているのだが……。
「あ、先輩あれですよ」
俺は目的の溫泉宿を指さす。
距離にして後一キロほどだろうか?
「えぇ〜、遠いわよぉ〜」
「わがまま言わないで歩いて下さい」
「もぉ……こんな事なら岬君の家でゲームしてた方が良かったわ」
「俺が迷ですよ」
いつも通り先輩のわがままを聞きながら、俺は溫泉宿に向かっていた。
「ん? なんか騒がしいな」
「あぁ、なんか今夜近くでお祭りがあるらしいわよ?」
溫泉宿に向かう道すがら、公園の近くで出店の準備や櫓(やぐら)を組んでいる人たちを見かける。
「私、祭りってあんまり好きじゃないのよね……」
「え? どうしてですか?」
「ナンパされるから、困っちゃうのよ」
「へーソレハタイヘン」
「なんか馬鹿にしてる?」
「イエイエ、ゼンゼン」
自慢かよ、なんて思いながら、俺は溫泉宿へ再び歩き始める。
「……で、でも……岬君が行きたいって言うなら……一緒にお祭りに行ってあげても…」
「あ、大丈夫です。俺も先輩とお祭りに行くのはちょっと……」
周りから彼氏だと誤解されて、恨みの視線を向けられるのは嫌だし、男除けにされるのも俺はごめんだ。
「フン!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!! 痛いです!! 先輩痛いです!!」
「私だって岬君なんかとお祭りなんかごめんよ!」
「なら最初から言わなきゃ良いのに……」
何が気にらなかったのか、先輩は俺の足を踏みつける。
一俺が何をしたというんだ……。
「ほら! さっさと行くわよ!」
「はいはい」
*
溫泉宿に到著した俺と先輩を待っていたのは、サークルの皆だった。
「よう、間宮先輩と次郎が最後か」
「よっ、博男(ひろお)」
聲を掛けてきたのは、同じ大學二年の安岡博男(やすおか ひろお)だった。
イケメンでしかも彼持ち、いわゆるリア充だ。
隣には彼の村田さんが居る。
「間宮先輩と岬君って仲良いよね」
「博男、お前の彼目が悪いようだ、眼科に連れてった方が良いぞ?」
「おまえ、人の彼に対して失禮だな」
「うるせぇ!! 俺と先輩のどこが仲が良いんだよ!」
「いや……多分サークルの皆がそう思ってるぞ?」
「じゃあ全員目が悪いんだな、俺が良い眼科を紹介してやろう」
「いい加減気がつけよ……」
博男が肩を落として俺にそう言う。
俺が博男と村田と話しをしていると、またしても間宮先輩が俺のところにやってくる。
「岬君、早く行くわよ」
「えぇ……部屋の中にくらい自分で持っていて下さいよ……」
「良いから行くわよ! 先輩命令よ!」
「嫌な先輩だ……」
俺は先輩の荷を再び持って、溫泉宿の中にっていく。
*
「むぅ……先輩……返信遅い!」
私は勉強の息抜きで、ベッドに寢転がりながら先輩にSNSでメッセージを送っていた。
先輩からの返信がもう一時間も無い。
私は早く返信が來ないかとソワソワしながら、ベッドの上でゴロゴロする。
「はぁ……祭りかぁ……先輩と行きたかったなぁ……」
本當はお祭りも先輩と一緒に行きたかった。
しかし、先輩にはプールに付き合ってもらったし、それに今度一緒に溫泉に一泊する約束もしてくれた。
「ウフ……ウフフフフ」
二人で一泊旅行。
その事を考えてしまうと、ニヤニヤが止まらない。
二人で旅行……。
一緒にご飯食べて、一緒にお風呂って、一緒に布団で……ウフフフ。
そんな事を私が考えていると、私のスマホに通知が屆いた。
「先輩!」
私は思わず聲に出し、スマホの畫面を見る。
しかし、通知の正は先輩からの返信では無く、友人からのメッセージだった。
【今日、出來れば浴で來てね】
そのメッセージを見た私は、別にその子が悪い訳では無いのだが、なぜか腹が立ち、返信をしないでスマホを枕に向かって投げつけた。
「もぉ! ややこしい!!」
先輩からの返信は相変わらず無い。
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