《後輩は積極的》第18話
*
「石川さん! 荷持とうか?」
「あ、大丈夫。そんなに重たくないから」
男子達と合流し、私たちは夏祭りを楽しんでいた。
的に金魚すくい、お馴染みの屋臺がところ狹しと並んでいた。
「石川さんは夏休み何してたの?」
「えっと、バイトと勉強かな?」
鬱陶しい……。
正直そんな事を思ってしまうほど、先ほどから男子が代わる代わるに私に話し掛けてくる。
「バイト? どこでやってるの!?」
「えっと……」
「はいはい、男子。実が困ってるでしょ」
「てか、下心丸見えだし」
鬱陶しいと思っていたら、友人の子達が間にってくれた。
ありがたいが、元はといえばこの子達のせいなのだが……。
「私らにも構いなさいよ!」
「えぇ……俺らの目的は石川で……」
「あんたらごときが、実と釣り合う訳ないでしょ」
「なんだとぉ!?」
「大男なんてものはねぇ……」
なんだか良く分からないけど、言い爭いを始めてしまったクラスメイト達。
私は先ほど買ったリンゴ飴を舐めながら、早く終わらないかと様子を眺めていた。
確かに他にもの子が居るんだから、平等に扱うべきだと思う。
「はぁ……」
私はため息を吐きながら、スマホを取り出す。
すると、スマホSNSには一件の通知が來ていた。
確認してみると、通知の主は先輩だった。
ようやく返信が來た。
私は直ぐにアプリを開いて、メッセージを確認する。
【溫泉ナウ】
そのメッセージと一緒に、先輩が居るのであろう溫泉の寫真が送られて來た。
私はその寫真を見て、思わずニヤケてしまう。
私は直ぐに自分の浴姿を寫真に撮り先輩に送る。
【どうですか? 可いですか?】
寫真とともに、私はメッセージを送る。
すると、今度は直ぐに先輩からメッセージが返ってきた。
【良いと思うよ】
【可いかを聞いてるんですが?】
【可いよ】
【興します?】
【何でだよ】
思わず先輩とのやりとりに夢中になってしまう。
やっぱり先輩とのやりとりは楽しい。
友達と祭りに來ているのを忘れてしまう。
「実?」
「え、あぁごめん。終わった?」
「お待たせ! もう大丈夫よ! 実に近づいた男子は、二學期から子全員から無視される事にしたから!」
「酷すぎない?」
私はそんな事を話しつつ、先輩に返信を返す。
【水著姿を想像して、何回しました?】
【何もしてねーよ!!】
*
「まったく……」
俺は実ちゃんからのメッセージにため息を吐く。
「お、なんだ岬。彼か?」
「違いますよ」
桐谷さんからの言葉に俺はそう答えてスマホをポケットにしまう。
俺たちは現在、全員でお祭りに來ていた。
メンツがメンツなだけにかなり目立つ。
正直あまり目立ちたくない俺からすれば、正直離れて歩きたい。
「なかなか混んでいるね」
「そうっすね、出店も普通だけどなんかテンション上がるっすね」
地元の祭りにしては、結構規模が大きかった。
家族連れやカップルなど、いろいろな人たちが居る。
まぁ、異彩を放っているの俺らだろうけど……。
「蒼! さっきのでカップルは6組目だ! 発させて來て良いか!?」
「蒼、かき氷食べたい」
「岬君、私には綿飴買ってきて」
高部先輩はカップルを見つける度、鋭い視線をカップルに向け、伊島先輩は桐谷先輩にべったりとしがみつき、間宮先輩はいつものように俺にわがままを言ってくる。
「先輩自分で買ってきて下さい」
「いやよ、面倒だし」
「じゃあ食うなよ……」
そんな文句を言いながらも、俺は先輩の言うとおりに綿飴を買いに向かう。
綿飴屋には列が出來ており、並ばなければならなかった。
「先輩め……これを知ってて俺に行かせたな……」
俺は文句を言いながらも列に並び、綿飴を購する。
「はぁ……し並んだな……ってあれ?」
周りを見ると、いつの間にか皆の姿が消えていた。
綿飴を買っているうちに皆は先に行ってしまったらしい。
「はぁ……折角買ってきたのに……しは待ってろよ……」
不満を口にしながら、俺は綿飴にかじりつく。
どうせ、見つけた時には「もうお腹いっぱい」とか言うんだ。
だったら、もったいないので食べてしまおう。
俺は皆を探して歩き始める。
そう遠くには行って居ないと思うのだが、人が多いせいで先が良く見えない。
「はぁ……最悪電話するか」
そんな事を考えていると、突然俺は後ろから両目を塞がれた。
「だ〜れだ?」
この覚は最近経験した。
しかし、この聲の主が俺の予想通りだとしたら、彼はなぜここに居るのか気になった。
「えっと……もしかして実ちゃん?」
「ピンポーン正解でーす!」
その聲と共に俺の視界が明るくなり、目の前に浴姿の実ちゃんが現れる。
「ビックリしたな、友達と來てるの?」
「はい! 先輩こそ、今日はバイトを休んで一人で夏祭りですか? 寂しいですねぇ〜」
「違うわ! 今日はサークル活だ。この後は飲み會」
「へぇ〜、じゃ…じゃあ、他の人も一緒なんですか?」
「あぁ、でもはぐれちゃってね。皆を探してたところだよ。そう言う実ちゃんは? 一人だよね?」
「いやぁ〜私もはぐれちゃって」
「そういうことね……じゃあ、一緒に探すか」
「え!? 良いんですか!?」
「あぁ……々と心配だしね」
「? なんでですか?」
「気にしなくて良いよ」
だってさっきから実ちゃんを狙った男達が、ちらちら実ちゃんを見ているし、話しかけようとスタンバイしている。
実ちゃんはお世辭抜きで可い。
だから、悪い男に何かされないか心配だった。
夏だし、変な奴も多いだろう。
だから俺は、実ちゃんを守る為に、友達の元まで実ちゃんを送り屆けようと決めた。
「じゃあ、行こうか」
「はい! あ、それより先輩、私に言うことありません?」
「言うこと? 何かな?」
「いや、私浴ですよ?」
「知ってるよ?」
「どうですか?」
「あ、うん。可いよ」
「……なんか、社辭令が否めないんですけど」
「まぁ、半分社辭令だし……ってイテテテ!! お腹を抓るのはやめてよ!」
不機嫌そうに頬を膨らませる実ちゃんと、俺は並んで祭り會場を歩き始めた。
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