《後輩は積極的》第30話
「な、なんで涼清に?」
「まぁ、家から近いですし、それにバイトも変えなくて済みますから」
「いやいや、普通は將來を考えて、行きたい學科のある大學とかに行くんじゃ……」
そう俺が言うと、実ちゃんはフフフと笑って上目遣いで言う。
「考えてますよ……就職よりももっと先の事を……」
意味深なじでそう話す実ちゃん、しかし俺にはなんで涼清を験するのか、全く分からなかった。
前に実ちゃんからテストの答案を見せてもらった事があったが、実ちゃんの績は本當に良い。
実ちゃんの績なら、もっと上の大學にも行けそうなのだが……。
*
「じゃあ、またバイトで」
「はい、今日はありがとうございました!」
私は先輩に家まで送ってもらい、自宅に帰ってきていた。
先輩とのデート、最初はあれだったが今回もすごく楽しかった。
私は部屋にると、直ぐに著替えを済ませて先輩にSNSでメッセージを送る。
【今日はありがとうございました! またデートしましょうね!】
メッセージを送信し、私は顔をにやにやさせながら早く返信が來ないかを待つ。
先輩は恐らくまだ帰宅途中だから、返信は遅いかもしれない、そう頭の中では分かっていてもやっぱり気になってしまう。
先輩の返信を今か今かと待っていると、十分ほどでようやく先輩からの返信が返ってきた。
【勉強しなさい】
そんな素っ気ないメッセージに私はしムッとしてしまう。
そんなはこと分かってるけど、もっと他に言い方は無いのだろうか?
そんなお父さんみたいな言葉を求めていた訳じゃ無いのに。
私は先輩とその後もメッセージを送りあい、気が付けば時間はもう夜の23時。
流石に夏休みとは言えど、あまり夜更かしは良くないので、私は寢る準備を始める。
『なんで涼清なの?』
私は布団にり目を瞑ると、帰り道で先輩に聞かれた質問を思い出す。
その質問に対して私は適當に家が近いから、なんて答えたがそれは噓だ。
「本當は先輩が居るからだもん……」
好きな人が居るから、それだけで私は大學を決めた。
これだけ言ってしまえば、そんな下らない理由でと怒られてしまいそうだが、別にそんな理由で進學してはいけないなんて理由は無い。
私は將來は先輩の所に永久就職を希しているから、先輩の居る大學に通う事が、一番の就職対策になるのだ。
「先輩……」
私はプールの時に先輩と一緒に撮った寫真を見て、思わずニヤケてしまう。
さっさと告白して付き合いたい。
しかし、振られた時の事を考えると怖い。
もう、こんなじで二人で遊びになんか行けない。
もうメッセージも気軽に送れない。
そう考えると、私は怖くて何も出來なかった。
しかし、このままで良いとも思っていない、だから決めていた。
今年のクリスマスに先輩に告白しようと……。
*
八月最後の週、高校生などは夏休み最後の一週間である。
しかし、大學生である俺の夏休みはまだまだこれからだ。
俺は今日も元気にバイトに勵んでいた。
「高校生は今週で夏休み終わりだって」
「そうみたいだな」
夏が終わろうというのに、相変わらず暑い日が続いている今日、俺はバイト先の廚房でハンバーガーを作っていた。
「大學生はあと一ヶ月休みなんだろ?」
「まぁな、おかげでバイト代が溜まる溜まる」
俺は小山と話をしながら、ハンバーガーの材をバンズに乗せていく。
「フリーターには関係無いからなぁ〜そういうの」
「やっぱり學校卒業すると、夏って言ってもテンションあがらないのか?」
「うーん、なんていうか……フリーターは結構休みを自由に出來るからね、お金にならないけど、頑張ればいつでも夏休み取れるし」
「そういうもんか……」
小山君とそんな話をしながら、俺は小山君からポテトのった袋をけ取り、テイクアウト用の紙袋にれる。
「そういえば、この前実ちゃんと映畫行ってきたんだって?」
「え? なんで小山君が知ってるの?」
「実ちゃんが嬉しそうに話てたよ? 『先輩とデートしてきました!』って」
「いや、デートじゃないし」
「二人でR15の映畫見てきたんだろ? それはデートだろ?」
「そんな事まで……ただ一緒に映畫見て買いして帰ってきただけだよ」
「いや、それを世間一般ではデートって言うんだよ」
「ただ遊びに行っただけだよ。いいからこの商品持っててくれ」
「へいへい」
俺は小山君にそう言い店を見渡す。
一時期はライバル店の出現でめっきり売り上げが落ちたが、今はもういつも通りだ。
やっぱり開店したときだけだったようで、徐々にお客さんがうちの店に戻ってきていた。
「古瀬のところも忙しいのかな?」
俺は大學の友人が働くライバル店の様子を考えながら、手を洗って野菜を切り始める。
最近、古瀬からもよく連絡が來る。
容は毎回どうでも良い容だ、今日はお晝にどこのお店で何を食べたとか、どこに遊びに行ったとか、雑談的なことがほとんどだ。
「暇……なのかな?」
なんで俺にそんな事を知らせて來るのか……。
ただ単にメル友がしかっただけなのだろうが、実ちゃんも結構な頻度でメッセージを送ってくるので、返信が地味に大変だったりする。
「そのうち、メッセージの送り間違いとか有りそうで怖いな……」
俺はそんな事を考えながら、野菜を切り終える。
今日のバイトは後數分で終わる、早く家に帰ってのんびりゲームでもしたいのだが、今日も間宮先輩がやってくるのだろうと考えると、俺はなんだか気が重たくなる。
「お疲れです」
「あ、岬君お疲れ〜」
シフトを終え、俺はパートのおばさんに挨拶をして休憩室に向かう。
「はぁ……疲れた……」
俺は自分のロッカーを開けて、スマホを取り出す。
新著メッセージが25件、差出人は間宮先輩と実ちゃん、そして古瀬だ。
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