《後輩は積極的》第33話

「え? 買いに?」

「あぁ、実ちゃんも知ってるだろ? あの新しい店の古瀬ってやつなんだけどさ……」

夕方、俺はバイト先で実ちゃんに今日の話をしていた。

実ちゃんは夏休みが終わったため、いつも通りの夕方シフトに戻っていた。

「ふぅーん」

「な、なんだよその目」

「いやらしい」

「なんでだよ!」

実ちゃんが不機嫌そうに俺にそう言って來る。

別に一緒に買い行くだけで、なぜそこまで言われなければならないんだ?

間宮先輩もなぜか不機嫌だったが……。

いや、不機嫌になりたいのは俺なのだが……。

「どうせいやらしい事しか考えてない癖にぃー」

「あのなぁ……買いに行くだけで、何を考えるって言うんだよ……」

「大人のおもちゃ売り場に行くとか?」

「そんな売り場のある店には行かないよ!」

実ちゃんはシフトの時間が終わるまでずっと不機嫌だった。

もしかして、俺が先に人を作りそうだから、彼氏の居ない実ちゃんは羨ましいのだろうか?

シフトが終わり、俺は休憩室に戻り更室で著替えを済ませる。

「あ……」

「なんですか? 子高生の制服姿に興してるんですか?」

「ちげーよ!」

俺が更室から出たのと同じタイミングで、実ちゃんが子更室から出てきた。

學校から直接バイトに來ているので、今日の実ちゃんは制服姿だ。

「さ、早く帰りますよ」

「當たり前のように俺が送っていく流れに持って行くのやめて貰える?」

俺はそんな事を言いながらも、実ちゃんを律儀に家まで送っていく。

帰り道も実ちゃんはなぜか知らないが、不機嫌だった。

「で、明日はどこに行くんですか?」

「ほら、駅前のショッピングモールだよ。あそこなんであるし」

「へー、そうなんだー。ちなみに何時頃ですか?」

「えっと……晝過ぎからだから……何だかんだで午後の二時からかな……てか、なんでそんな事を聞くの?」

「いえ別に……楽しそうで何よりです」

「なんか嫌みっぽいなぁ……」

あからさまに不機嫌な実ちゃんを家に送り、俺は自分のアパートに帰った。

古瀬との約束の日、俺は駅前で古瀬を待っていた。

先輩や実ちゃん以外のと買いに行くのは始めてなので、なんだか張する。

「うーん……別に変じゃないよな?」

俺は駅前の大きな窓ガラスで自分の服裝を確認し、変なところは無いかを確かめる。

普通の格好をしてきたつもりだが、と一緒に買いをするとなると、いつも以上に気を遣ってしまう。

「お待たせ!」

「え? あぁ、古瀬か」

しして古瀬がやってきた。

私服姿の古瀬を見るのは、初めてではないがなんだか今日は雰囲気が違う気がした。

薄らと化粧をしているのがわかったし、髪型のいつもと違う。

遊びに行くとき、古瀬はいつもこんなじなのだろうか?

「なんか、今日の古瀬可いな」

「え!? な、なに? きゅ、急に!」

「あぁ、いやすまん! なんかいつも、テニスウエアだったり、バイト先の制服姿しか見てないから、し驚いてな」

いかんいかん、うっかり思った事を口に出してしまった。

気を付けよう。

「そ、そっか……が、頑張ったかいあったなぁ……」

「頑張ったのか?」

「う、うん……だって、一応……で、デートだし……」

あぁ、やっぱり男が二人で出かけるのは、デートなのか……。

実ちゃんもそんな事を言っていたなと思いながら、俺は頬の赤い古瀬を連れてショッピングモールに向かう。

「なんなのよぉ……あのぁ~」

私、間宮子は駅前でとある二人の男凝視していた。

「あんたねぇ……」

そう言って隣でため息を吐くのは、私の馴染みの伊島生だ。

なぜ私がこんな事をしているのか、それは昨日の大學での出來事に遡る。

無事に際を迫ってきた男を振り、気分良く家に帰ろうと思った瞬間、その景は私の目に映り込んできた。

私の一個下で後輩の男の子が、結構可いテニスウエアの子と何やら楽しそうに話しをしていたのだ。

何を話していたのかと問い詰めると、後輩はその子に買いに一緒に行かないかとわれたらしい。

「いくらヤキモチ焼いたからって、付いてくる事ないでしょ?」

「や、ヤキモチなんて焼いてないわよ! た、ただ……な、なんかムカつくのよ! 岬君の癖に!!」

「それをヤキモチって言うのよ……」

ため息を吐く生を他所に私は二人の様子を見る。

「うわっ、あの子絶対容院行ってるわよ……服も流行の奴だし……気合いれすぎでしょ」

「毎日気合いれてるアンタが言ってもねぇ……」

「私はだから良いのよ! 綺麗にしてなきゃ」

「自分で自分をって言う人始めて見たわ……しかも本當だから結構イラっとくるわね」

「あぁもう! 何よ! 毎日私が一緒に居てあげてるのに! 私には可いなんて言った事も無いのよ!」

「知らないわよ……そんなに嫌ならさっさと告白しなさいよ……」

「は、はぁ? な、なんでこの私が! み、岬君なんかに!」

「あの子も大変ね……」

いつも私に何も言わないくせに!

何よ! 絶対あの子より、私の方が可いじゃない!

おっぱいは……って結構大きいわね、あの子……。

そんな事を私が思っていると、二人は移を始めた。 もちろん私たちも後を付いて行く。

「これって、完全にストーカーじゃない……」

「違うわよ! ただの監視よ!」

「犯罪者じゃないんだから」

「先輩めぇ……鼻の下びきってるし!」

私、石川実は學校を終わりに、駅前で先輩を発見し遠目からこっそり見ていた。

休み明けの試験で、學校は午前中で終了。

気になって、試験にもあまり集中出來なかった。

「うぅ……先輩にっ気なんて無いと思ったのに……」

もしかして結構先輩ってモテる?

いやいや、顔だって普通だし、鈍だし、モテる要素なんてどこにも無い。

……ん? じゃあなんで私は先輩の事好きなんだろ?

先輩と居ると楽しいし……なんだかんだで気を遣ってくれるし……。

「も、もしかして先輩って……」

結構モテる?

なんて事を思いながら、先輩の方に視線を向けていると、反対側の柱のに何やら怪しい二人組を発見した。

その二人も何やら先輩の方に視線を向けて、コソコソ話しをしている。

「え? なに? 誰あの人たち?」

見るからに怪しい……もしかして先輩のストーカー?

いや無いか……。

「先輩だし……」

そんな事を考えながら、私は先輩達を追って後を付けて行った。

「な、なんか……視線をじるなぁ」

「ん? どうしたの?」

「あ、いや何でも無いよ」

俺は先ほどから、人の視線を背中にじていた。

先輩と大學で一緒のせいで結構視線をじる事の多い日々をおくってはいたが、今回の視線はまたそういうのとは違う。

「まぁ、気のせいか……」

ただの勘違いだろうと思い、俺は古瀬と共にショッピングモールに向かう。

ショッピングモールまではバスに乗れば、直ぐに到著する。

俺たちはバス停でバスに乗りショッピングモールに向かう。

「今日は何を買いに來たんだ?」

「えっと、洋服とか……あとはCDとか」

「なるほどな、しかし洋服だったら友達との方が良くないか? 俺に想を聞かれてもよくわからんぞ?」

「大丈夫、男の人の目線での意見も聞いて見たいし……それに……み、岬君の好みなんかも……知りたいなって……」

頬を赤らめながらそう言う彼に、俺は不覚にもドキッときてしまった。

普通の仕草をする普通の

最近の俺の周りにあまり居ないタイプのだからか、久しぶりにと一緒だと自覚してしまい、ドキドキしてきてしまった。

それにしても……古瀬可いなぁ……。

なんかスッゲー良い匂いするし……もデカい……。 なんて事を俺が考えて古瀬を見ていると、それに気がついた古瀬と目があった。

「ん? どうかした?」

「あ、いや……古瀬はらしくて可いなと……」

「ふぇ!? な、なんで今日はそんなに褒めるのぉ……」

「俺の周りには、古瀬みたいな普通のが居ないからな……」

遠くを見つめながら俺は古瀬にそう答える。

古瀬はリンゴのように頬を真っ赤に染めて、顔を隠す。

これだよなぁ……っていうのは。

決して足を踏んできたり、抓ってきたり、わがまま言ったり、人を代わりにするようなのじゃないもんなぁ……。

そんな事を考えている間にバスは目的地に到著した。 俺と古瀬はバスから降りて、ショッピングモールに向かって歩き始めた。

「さて、最初はどこに行く?」

「うーん……まずは洋服みたいな」

「了解、じゃあ行くか」

「うん」

俺と古瀬はまず、アパレルショップを見て回る事にした。

俺は古瀬の行きたい店に付いて行き、一緒に店を回る。

「これどうかな?」

「良いんじゃないか?」

「本當にぃ~? どこら辺が?」

「えっと……ちょっとけてるところかな?」

俺は古瀬にたびたび服の事を聞かれる。

これが先輩だったら……。

『似合ってるわよね?』

『似合ってますよ』

『そうよね、私だものね!』

ってなじで、自分に著こなさない服は無いみたいなじで。

俺に確認するだけ無駄みたいなじだし……。

実ちゃんは……。

『先輩、先輩! なんで選んでくれないんですか?』

『え、選べる訳ないだろ!』

『なんでですか! 折角一緒に來たのに!』

『いや、下著なんか選べるかぁぁぁ!!』

そんなじで俺をからかってくるし……。

なんか本當に普通にと買いしているじがして、新鮮で良いなぁ……。

いや、普通はこうなのか……異常なのは俺の周りか……。

「ん? どうかした?」

「いや、何でもない。それ買うのか?」

「うん……だって、岬君が似合ってるって言ってくれたし」

「そ、そうか……」

「うん」

あれ? なんだこれ?

子との買いってこんなに楽しかったっけ?

もっと子との買いって疲れるものだったはずなのだが……。

「じゃあ、今度は岬君の選ぶ?」

「え? 俺は良いよ、古瀬が見たいの見れば良いじゃん」

「それじゃあ悪いよ、人の買いだけ見ててもつまらないでしょ?」

「ま、まぁ……そうだけど……」

「じゃあ、メンズコーナー行こ」

「あ、おい!」

俺は古瀬に手を引かれ、メンズ服の売っているコーナーに向かった。

なんだか、先ほどから背中に刺さるような視線をじるのだが……本當にあの視線は気のせいなのだろうか?

「何よ! 服くらい自分で買いなさいよ!」

「落ち著きなさいよ」

「落ち著いてるわよ!!」

何よ!

あんなに楽しそうにしちゃって!

私が買いっても、嫌な顔する癖に!!

「ちょっと生! ライフルかショットガン無い!? 岬君にヘッドショットを……」

「無いし、ゲームのやり過ぎ。良いからじっとして見てなさい」

生はそう言って私の頭を抑える。

私にではない、あのに対する岬君の笑顔を見ると、私はなんだかがズキズキと痛くなった。

「あぁもう!! デレデレして!!」

私と買いに來た時は、あんな事言わないのに!

私はアパレルショップの壁から、先輩を見てそんな事を考えていた。

「先輩の馬鹿……」

私の気持ちも知らないで……。

私に向いていない先輩の笑顔を見るのは辛い。

自分がどれほど先輩の事が好きなのかを自覚してしまう。

って……辛いなぁ……」

そんな事を私が考えていると、またしても私の反対側の壁際に、駅に居た二人組が居た。

「えぇ……あの二人また居る……なんか怪しいぃ……」

まさか本

私は先輩を見張るのと同時に、反対側の二人にも注意を向ける事にした。

「良いの買えたか?」

「うん、ありがとね」

「いいよ、俺もなんか楽しかったし」

「それなら良かった、なんか付き合わせるから申し訳なくて……」

「全然! 先輩と比べたら……」

「え? 何?」

「ううん! なんでも! じゃあ次はどうする?」

俺と古瀬は歩きながら、これから何をするかを相談する。

し疲れたか?」

「大丈夫だよ、気を使ってくれてありがとう」

「いや……今までは聞く前に言われてたから……」

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